コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「グオオオオオオォォォォ!!!!!!!!!!!」
猛吹雪の中、やっとの思いで辿り着いた山頂。
そこにいたのは背丈が5m以上にもなる巨大な魔物であった。
吹雪のせいでぼんやりとしたシルエットしかまだ見えていないが、その特徴的な形からこいつの正体についてはおおよその見当はすでについていた。そう、ファンタジーと言えば誰しも頭に思い浮かべるであろうあの生物。
「これが、ドラゴンか…」
近づくにつれ徐々に姿が見えるようになってきたドラゴンはワイバーンとは比べ物にならないくらいの巨大な体であった。背中から生えている大きな両翼、そして大きな体を支えるための巨木のような四本の脚、明らかに普通ならほとんどの生物が太刀打ちできるはずがない生物だ。
それに話に聞いていた通り体全体から黒い靄のようなものがにじみ出ている。
これはゴブリン・イクシードの時とあの誘拐事件の時の水晶と同じ雰囲気を感じる。
そういえばもしかしてこれが村の人が言っていた伝説の古龍なのだろうか。とりあえず俺は嫌な予感を感じながらも鑑定を使って目の前の生物のステータスを確認する。
=========================
種族:ドラゴン・超越種(イクシード) Lv.145
状態:狂乱の支配下
HP:104620 / 104620
MP:51620 / 51620
攻撃力:38760
防御力:30150
俊敏性:6460
知力:73(-50)
運:15
称号:
種を超えし者 暴虐を尽くせし者 同胞を滅せし者
スキル:
火属性魔法Lv.7 風属性魔法Lv.6 雷魔法Lv.5 物理攻撃耐性Lv.8 魔法攻撃耐性Lv.7 魔力操作Lv.7 急所特攻Lv.6 威圧Lv.8 超再生Lv.5 狂乱魔 魔毒
=========================
「なっ、超越種…!?」
鑑定で見ることが出来たこのドラゴンの種族名には確かに『ドラゴン・超越種』と書かれていた。ちなみにドラゴンの上位種が古龍らしく、ドラゴンの中でも長い時間を経て進化を遂げた種が古龍と呼ばれるのだそうだ。
まさか本当にドラゴンの超越種だったとは。
まあ古龍の超越種ではないだけマシだと思うべきだろうか…?何故こうも俺は数十年に一匹生まれるかどうかの超越種と縁があるのだろうかと嫌気が差す。
それにステータスにいくつか気になる部分もある。
それは『状態:狂乱の支配下』という部分と知力の下降補正である。
状態の方はたしか以前にゴブリン・イクシードと戦った時にもなっていたような気がする。これは超越種になると必ず付与される状態、という訳ではなさそうだし一体何なのだろうか。
それと知力の下降補正は一体なぜなのだろうか。
状態の影響なのだろうか。
「…グルルゥ、グアアァァァァ!!!!!!!!」
すると突然、目の前のドラゴンが唸り出したと思いきやいきなり炎のブレスで攻撃を仕掛けてきた。俺はすぐさま横へと大きく飛んで回避する。
先ほどまで猛吹雪でかなり寒かったのに火山にいるみたいな熱風がブレスが通ったところから吹き付けてくる。ブレスで抉られた地面は所々溶解しており、その威力の高さを物語っていた。
「これは当たったら一撃で塵も残らず死ぬだろうな…」
俺は溶けて蒸気が発生している地面を見ながら思わず息をのむ。
というかこのドラゴン明らかに様子がおかしい。
少なくとも理性があるとは思えないような気が狂っているのではという具合である。
「セラピィ!絶対に俺から離れないで!!!」
「うん、分かった!」
俺がそう言うとセラピィはふわっと飛んで俺の服の中に隠れていった。こいつは明らかに討伐しておかないとこの周辺の生態系を狂わせ、少し離れたところに住む人たちにも悪影響を及ぼしかねないだろう。
俺はこの超越種を討伐することを決意する。
もちろん勝てないと分かれば全力で逃げるという選択も取るつもりだ。さすがに確実に討伐できるという自信はないが、逃げるまでの足止めと撹乱は出来る自信はある。
俺は背中の魔剣を取り出してドラゴン・イクシードに向けて構える。
俺は一呼吸おいてから勢いよく地面を蹴り出してドラゴン・イクシードの前足めがけて斬りかかる。雪の影響で足元が悪いために思ったほど素早くは動けなかったが、それでも常人が認識できるレベルを超えたスピードで攻撃を仕掛ける。
「はああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
俺の斬撃は見事に直撃するが予想以上にドラゴンの鱗が硬すぎるため、表面に軽い傷をつけた程度に終わってしまった。やはり無強化状態ではこの程度か。
するとドラゴンはその巨体に似合わないかなりのスピードで傷をつけた前足を俺めがけて振り抜いてきた。その威力は風圧だけで近くにあった巨大な岩をも粉砕するほどであったが、間一髪で距離を取って回避することが出来た。
やはり戦うにはこの天候はかなり不利すぎるな…
周囲の雪を火属性魔法で一瞬で溶かすことは可能ではあるが、猛吹雪が今もなお降り続けているからすぐに積もってしまうだろう。天候を操作できる魔法があれば話は別だが、そんな大規模な魔法なんて使えない。今はないものねだりはしてる場合じゃない。
俺は先ほどドラゴン・イクシードを攻撃した際の感覚を頼りにあの強靭な鱗でさえも切り裂くために魔力で魔剣を強化する。効くかどうか分からない現状で必要以上の魔力は消耗したくないから慎重に行動する。
もう一度俺は地面を蹴り出して今度はやつの死角へと回りこんで後ろ脚を攻撃する。幸いにも奴は俺のスピードには完全には追い付けてないようで上手く死角に入り込むことが出来た。
「グオォォォォォォォ!!!」
すると先ほどよりも深く鱗に傷をつけることに成功した。
これなら大丈夫そうだ。
「…グオオオ、グルルルルアアアァァァァ!!!!!!」
するとその咆哮と共にドラゴン・イクシードから禍々しい魔力が周囲に放出される。その魔力放出はまるで隕石でも落下したかのような衝撃波を伴い、やつを中心に円心状に広範囲で地形が変形するほどの威力であった。
ドラゴン・イクシードの近くにいた俺はその衝撃波が直撃してしまった。回避するにも広範囲で、しかも上空の雲さえも引き裂くほどの攻撃で逃げる場所が全くなかったのだ。
ほんの数秒は防御姿勢で耐えていたのだが、地面から抉り出た岩石の飛来や地形変化の影響で耐えきることが出来ずはるか後方へと吹き飛ばされてしまった。
何とそれに加えてその魔力波によって複数のデバフを一瞬で付与されてしまっていた。健康体スキルのおかげですぐに抵抗および解除されたのだが、解除されるたびに付きまとう禍々しい魔力によってデバフが付与され続ける。
徐々に抵抗が成功していき、最後には完全に抵抗することに成功した。しかしそれまでの間で能力値を大幅に減らされたことによって衝撃波によるダメージを受けてしまっていた。
そんな中、俺はどれだけ吹き飛ばされたのか気が付けば足元には深い峡谷が広がっていた。そしてその勢いのまま谷底へと落下してしまった。なんとか飛行魔法を発動しようとしてみたがドラゴン・イクシードの衝撃波の影響で気流の乱れが激しく、今の練度では上手く安定させることが出来なかった。
「くっ!!!」
禍々しい魔力が吹き荒れる山頂がどんどん離れていく。
俺はすぐさま落下地点の確認と体勢を安定させることだけに集中することにしたのだった。