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「凄いな」
武器の評価は高かったようだ。
「だが、あれだけだと突破は難しい筈だ。後は何がある?」
やはりAランクパーティに在籍していた人は誤魔化せない。
誤魔化すつもりもないけど。
「じゃあ、セイくんに見せてもらおっか!」
「セイ?アイツは剣士だろ?もちろんAランク級なのもわかるが…」
剣の腕は道中見せていた。
剣の腕はどうか分からないが、動きだけは他のAランクと遜色無いようで安心する。
疑問を浮かべるガッシュさんだったが、どうやら思い出してくれたみたいだ。
「そう言えば、転移魔法を使っていたな…」
「そうだよ。セイくんは剣も魔法も銃も使う器用貧乏さんだよ!」
うん。言わないで。自覚してるから。
『アイスブロック』
「何も起きないよ?」
マリンが聖奈さんに聞くが、その答えが返ってくるよりも早く、ガッシュさんから声が上がった。
「な、何だありゃ!?」
遥か上空から、氷の塊が落ちて来ているのを見つけたようだ。
ドガーーーンッ
遠くの森の上空に、轟音と共に砂塵が舞う。
「あれを…セイが?」
「セイくん。なんで新魔法じゃなかったの?」
エリーの奴…あれだけ口止めしたのに。
まぁ相手が悪かったか。
「危険だからだ。あの魔法はヤバい…」
「えぇ…見たいなぁ…」
「さっきの魔法より凄いのか?」
聖奈さんは駄々っ子に、ガッシュさんは当たり前の疑問を伝えてきた。
「さっきの魔法はある程度離れた位置に撃てて安全だけど、聖奈が言っている魔法は効果範囲が広すぎて無理なんだ」
「じゃあ私達はここにいるね!」
おいっ!
「小さな核兵器くらいの威力があるが、いいのか?」
慄け!!
「うん!見せてね!」
えっ…そこは危ないからやめようの流れじゃ……
「セイさん、気をつけてくださいね」
「安心しろ。俺は一度経験しているから大丈夫だ」
うん。マリンの手前カッコつけるしかなくなったな。
俺はみんなをその場に残し、1キロくらい離れた。
ふぅ。緊張するな……
『トルネード・フレアボム』
トルネードが木々を薙ぎ倒しながら離れていく、それを後発のフレアボムが追いかけていく。
俺はフレアボムを発動した瞬間に身体強化をかけて、即座に反対方向へ走っていく。
トルネードの木々を薙ぎ倒す音が聞こえなくなった。
どうやらフレアボムに吸収されたようだ。
そして……
ズドーーーーーンッ!!
『トルネード!』
あまり効果は無いだろうが、少しくらい相殺してくれ!と願い、魔法を放ち身構えた。
「ぐぅぅぅうう!!」
暴風…いや、衝撃が俺を襲った。
「何とか耐えたな…やはり直ぐに距離を取ったのが功を奏したな」
俺は離れた四人と合流する為に森を走った。
「何が起こったんだ!?」
キノコ雲とは呼べないが、それに近いものがこちらからでも見えたようだ。
「爆心地に行きたいからよろしくね!」ガシッ
聖奈さんはそう伝えると、俺の腕に抱きついてきた。
転移しろってことだな……
転移でみんなを連れて行ったそこは、凄い事になっていた。
「ひゃー!ホントに凄いね!クレーターが出来てるよ」
「こんなのを使わないと倒せない敵が居たのか?」
「いないけど…偶々使えたんだ」
アホな子を見る目でガッシュさんが見てきた気がするが、気のせいだろう。うん。
「ガッシュさんも20階層に行ったんだろ?
その時に15階層のデカい亀はどうやって倒したんだ?」
「ああ。あれは水攻めしたな」
どういうことか聞くと、仲間の魔法使いが2人がかりで亀の顔があるところに水を魔法で張り、それを熱湯にして倒したようだ。
その時の亀の攻撃は、他の仲間達と共に盾を持ち、魔法使い達を守ったとのこと。
色んな倒し方があって面白いな。
銃の取り扱いについては説明が済んだので、マリンの家に帰った俺達は、明日からダンジョン探索を再開することに決めた。
もちろん離れている二人の承諾ありきだが、そこは問題ないだろう。
ちなみにマリンの誕生月は9月だった。
翌朝。準備を終えた俺達は20階層のボスゴーレムを視界に捉えていた。
「あれが20階層のボス…」
「そうだよ。まぁ見てて」
聖奈さんはそういうと、RPGを構えた。
構えたが、撃つ気はない。
「じゃあガッシュさんに聞いて組み立てた作戦で行こう」
「はい!任せるです!」
俺の言葉に同意したのはエリーのみ。今回は二人で倒す。
詠唱を終えた俺は、最後の言葉を紡いだ。
『アイスバーン』
金属鎧のゴーレムの下半身が凍ったのを確認したエリーが・・・
『フレアボム』
ドーーンッ
パラパラッ
吹き飛ばされたゴーレムの下半身が、辺りに降り注いだ。
「消滅を確認。周りに変化はありません」
ミランの言葉を聞いて、マリンが賞賛の声を漏らす。
「す、凄い…アッサリと…」
「原理は知らんが、こんな感じで氷系の魔法が有効みたいなんだ」
ガッシュさんから齎された情報を聞いたら、地球の高校生以上ならすぐに思い浮かぶだろう。
低温脆性破壊。
言葉は知らなくとも、金属を急激に冷やせば脆くなるのは何となく理解している。
「だが、一人でコイツを凍らせた奴を俺は知らんな」
「セイくんのはズルみたいなものだから気にしたら負けだよ!」
うん。俺でもチートだと思うよ。
初めは聖奈さんにチートなんてないって言ってたのに…今では大変お世話になっております。
「それより行こうぜ。毎回倒さなきゃいけないんだ。すぐ慣れるだろ」
「そうだな。本番はこれからだ。二人とも頼んだぞ」
ゴーレムの後ろの今となっては荘厳なゲートをくぐる。
何故今回も20階層からスタートしたかと言うと、マリンの昇級も関係しているが、このゴーレムの魔石の納品が推奨されているからだ。
それだけならお金に困っていないから無視してもいいんだけど、20階層以上を潜る冒険者でコイツの魔石を納品しない奴はいないからだ。
組合からも出来るだけ持って帰るように言われていることから、貢献度も高くそれなりに需要がある魔石なんだろう。
一度や二度ならいいかもしれないが、毎回ここの魔石がないと怪しすぎるから、俺達も出来る限り持って帰ることに決めたんだ。
「洞窟だね…」
マリンは初めてだもんな。
「親父さんから聞いてた通りだろ?罠の知識はあるようだが、実践はまた別だ。
俺の横を歩け」
「うん!」
隊列は先頭にガッシュさんとマリン。次に俺とミラン。三列目に聖奈とエリー。最後尾にライルだ。
この階層の広さはそこそこある。
片側一車線のトンネルより少し狭いくらいだ。高さは4メートルくらいある。
足元は少し凸凹しているが、歩くのに問題はない。
「いいか?」
「ああ。行こう」
ガッシュさんが、名ばかりのリーダーでしかない俺に態々確認を取ってくれた…ありがてぇ……
言ってて悲しくなるからやめよ……
「待て。反応がある」
暫く進むと、魔力波に反応があった。
「…便利だな。本当に俺達は罠だけに気をつけていればいいようだ」
「どれくらい離れていますか?」
洞窟はまっすぐではない。
道幅も一定ではなく、少し広くなっているところもあった。
ガッシュさんの説明では別れ道もたくさんあるらしく、見た目があまり変わらないので、最早迷路だ。
「200mは離れている。初めての敵だからここで迎え撃とう。
隊列を戦闘隊形に移し待機だ」
「はいっ!」「わかった」
みんなは返事をして隊列を変えた。
今回の隊列だが、先頭は聖奈とライルに俺。2列目にエリーとミラン。最後尾に二人だ。
「敵を捕捉。いつでも撃てるよ」
50mくらい先に何かが蠢いている。
「撃て」
バァンッバァンッバァンッ
『ギィ!?』
「止め!」
俺の声に聖奈さんは撃ち方をやめて、様子見に入る。
「まだ消滅していません」
「あれが21階層の敵か…」
敵は俺達が見慣れた姿をしていた。
「ホントにゴブリンかよ」
「ゴキブリよりも見飽きたね…」
「ガッシュさんの説明通り、今までのとは違い、遥かに強いようだが…イメージがな」
もうゴブリンは沢山だ……
話によると、この階層では他にもウルフなどが出てくるようだ。
「行ってくる」
俺はそう残し、重症を負っているであろうゴブリンに走り寄り、剣を一閃した。
〓〓〓〓〓〓〓〓小話〓〓〓〓〓〓〓〓
ミラン「セイさん。なぜ金属を急激に冷やすと脆くなるのですか?」
聖「ぶ、分子や鉄を構成するものが…」
ミラン「分子とはなんですか?」
聖「………。なぁ。ミランは俺のことが好きか?」
ミラン「//も、もちろんです//」
聖「それに理由って必要か?」
ミラン「い、いえ…」
聖「そういう事だ」(いや、どういう事だよ!)
ミラン「ロマンという事ですね!わかりました!」
聖 (わかっちゃったよ…)
聖の誤魔化しは続く。