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【イツキ】「ライちゃん…元気にしてるかな…。今…どんな世界を旅して…どんな人と話してるんだろ…。」
僕の名前は『風神 樹』。またの名を『ブレイヴリーフ』。
僕は最近とある友達と別れを告げた。とても仲良しで、とても大切で、いつまでも一緒にいたいって思えた友達の1人だった。
だけどその友達は「やることができた」といい、長い長い旅に出た。いろんな世界を旅し、いろんな人を救うのだと話していた。他の人からしたら「無理」って答えるんだろうけど、あの子は「やってやるよ」といいながら、数ヶ月後どこかへ行ってしまった。
【イツキ】「ライちゃん…俺は今でも…ライちゃんが愛したこの世界を守ってるよ…。だからまたいつか戻ってきたら…一緒に何かしようね…。」
僕は部屋の窓から入ってくるそよ風に包まれながら、自分らが写っている写真を眺めていた。
あの子がいなくなっても、俺らはまだそんなに大きくは変わってないけれど、ちょっと寂しいと思うことが多くなった気がした。
その寂しさは、みんなにもやっぱりあるらしく、時々寂しそうな顔をしているメンバーもいた。
【レッカ】「イツキ…また写真眺めてんのか?」
【イツキ】「あっ…レッカ…もう部活から帰ってきてたんだ…。」
【レッカ】「おう…。それより…やっぱり…なんか寂しいよな…。アイツがいないってだけで…。」
【イツキ】「そうだね…。」
昔はやりたいこともないとか言って、ずっと1人でいたあの子が、やりたいことができて旅だってしまうなんて…。こんなことになるなんて、想像もしてなかったな…。
-過去-
【イツキ】「ライちゃん…タスけて…。」
ライちゃんというのは『切崎 雷雨』という男の子のことで、普段は人見知りでマイペースなのだが、やる時はやるという感じの優しい男の子だった。
だけど俺はブレイヴとしてライちゃんと戦っていたときに、かつて仲間の1人だった『ベータ』という男性に裏切られ、俺は無理やりブラック化させられてしまった。
ブラック化というのは、能力の使いすぎや魂の欠片が破壊されてしまったりなどで発生する。そういうブレイヴ特有の覚醒状態の一種のことだ。自我がなくなり、最悪の場合は死に至る危険な状態だ。
俺の場合は魂の欠片が原因で、ブラック化してしまったのだ。
【イツキ】「ウゥ…ライちゃん…イやだ…ライちゃん…。」
自我が薄れてゆく中、俺はずっと助けを求めていた。このままでは大好きなみんなを傷つけてしまう…それが嫌で仕方がなかった。
そんな時…ライちゃんが…
【ライウ】「うぅ…結構痛てぇな…オマエの攻撃…。安心しろ…今…助けてやるからな…。」
既に傷だらけになっていたライちゃんが立ち上がり、俺に向かってきた。初めてブレイヴになった頃よりも、さらに強くなったライちゃんと本気で戦った。
ほぼ互角でライちゃんが負けそうになってたときに、ライちゃんが最後の力を振り絞って『ライトニングキングロード』という技を放ってきた。
前から使っている『ライトニングライン』の進化バージョンだったのもあって、それが直撃した俺はライちゃんに負けた。
そして俺は目が覚めると病院のベッドの上だった。無事に生きて帰ってくることができたのだった。
しかしライちゃんは違った。ライちゃんも一応目を覚ましたが、能力の使いすぎたことによる影響もあって、体調を崩しっぱなしだった。このままだと命も危ないと言われており、俺たち全員が心配していた。
だけどライちゃんは数日後…
【ライウ】「イツキ…もう治ったよ。」
【イツキ】「えっ……………えぇっ!?」
ライちゃんは体の傷も体調も全部治っていた。俺は一瞬ビックリしたあと安心した。俺も体調が治ってきていて、一緒に退院できると思って喜んでいた。
しかしライちゃんの傷が治ったのは、とある契約を交わしていたからということが数時間後に判明した。
契約した人は仲間のリーパーさん。
そしてその契約の内容は…
『完全な不老不死の体になる』という契約だった。
俺たちも不老不死みたいなものだが、ちゃんと死ぬこともある体だ。だけどこの場合は、完全に不老不死の体になるということは、その分いろんな人との別れがあり、いろんな人の一生を看取らなければいけないということだ。つまり『永遠に絶対に死ぬことができない』のだ。
そんなツラい契約をライちゃんは結んでしまったのである。しかし結ばなければ、助からないような状態だったのだという。
俺はそれを聞いた瞬間、謝りながら泣き崩れた。
【イツキ】「ライちゃん…ごめん…。ライウ…ごめんなさい…俺が…俺が…。」
俺は顔がクシャクシャになるほど泣いた。そして「ごめんなさい」と言い続けた。だけどライちゃんは優しく寄り添ってくれた。
そして彼はこう言った…
【ライウ】「いっくん…俺…やりたいことができたんだ。」
【ライウ】「リーパーさんから聞いた話によると…今の俺の力なら…他の世界線にも行けるんだって…だからこれからは…」
「いろんな世界に行って…いろんな世界を救う英雄になるよ。」
始めは「本当に大丈夫なのかな…。」と心配した。始めは引き止めようと思った。だけどあの子の目を見た瞬間、本気でやろうとしているんだと思った。
【イツキ】「誰かを救う…?ホントに大丈夫なの…?その子を救って…その後どうするんだよ…!誰かを救ったって意味がないって言われたらどうするんだよ…!そんな批判にオマエは耐えられるのかよ!」
【ライウ】「誰かを救ったって意味がない?意味がないって決めつけるな。そもそも俺は誰でも救うつもりはねえよ。救ったって意味がないって思ったら…救えないって思ったら…さっさと諦めるつもりだ。」
【イツキ】「何が言いたいの…?」
【ライウ】「俺はソイツらを変えるんじゃなくて…ソイツらにアドバイスをするだけだ。変われるかどうかは相手次第だからな。」
あくまでもライちゃんはダークヒーローならぬ『ダークブレイヴ』。誰でも救われるような手は出すわけでもない。本気で変わりたいっていうやつだけに手を出す。そういう優しさの裏にある厳格さが、その時にも滲み出ていた気がした。
彼には恐れるものがない。皆が彼を恐れ、そして尊敬されるようになった。
こういうふうになってしまってから、彼はみんなから『鬼神』と呼ばれるようになった。
それからライちゃんは病院を退院した後、荷物をまとめて出ていってしまった。