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鬼の姿が変わった。静寂の中で、爆発するようなエネルギーが渦を巻き始める。彼の体が膨張し、血潮が沸き上がるかのように波打つ。その目には、かつて感じた痛みと恐怖だけでなく、今、まさにその中で渦巻く何か新しい感情が浮かび上がっている。
「般若…」
鬼の声は震えている。命令に従うだけの冷徹な声ではない。そこには、これまでの無数の戦いの中で、彼が感じたことのない、深い想いが込められている。恋愛、あるいはそれ以上の何かだ。
「彼女を…」
鬼の言葉が重い。目に宿るのは、冷徹な戦士ではなく、かつて人だった男の苦悩と欲望だ。彼は、般若に対して何かを抱えていた。その感情は、支配と従属を超えた、もっと深いものだった。
「俺は…」
鬼の目が、般若の姿を捉える。その瞳の中には、彼女を求める強い意志が見え隠れしていた。だが、その心の中で渦巻いているのは、恐ろしい矛盾だ。彼が彼女を求める気持ちが、支配と同時に深い愛情を含んでいる。
「彼女が好きだ。」
その告白が、自分に対する呪いとして響く。鬼はその感情に飲み込まれているのだ。従順に仕えることを運命と感じながらも、その先にある愛情が、彼をさらに迷わせている。
だが、僕はその感情に関心を持っている場合ではない。鬼が本気を出すとき、すべてが変わる。その力は、ただの力ではない。彼がその心の中で抑え続けた感情が解放されるとき、戦いの流れが完全に変わることは分かっていた。
鬼は、般若に対してただの使い魔としての存在ではなく、彼女を「主」として崇拝し、さらには恋愛的な感情を抱いている。それが彼をさらに危険な存在にしている。彼が本気を出せば、僕ですらその力に飲み込まれるだろう。
「般若を…愛している。」
鬼は再びその言葉を繰り返す。僕の心の中に、その言葉が何度も響く。彼は、ただ従うだけの存在でいたくなかったのだ。彼の心の中で、その愛情が暴走し、彼をさらに破滅的な方向へと導いている。
そして、鬼の姿が完全に変わる。彼の体は、もはや人間のものではない。力が全身に満ち、目は赤く光り、彼の力が暴走する。その圧倒的な存在感が、空気を震わせる。
「般若を手に入れるために、全てを捧げる。」
鬼の言葉が決意に変わる。彼は、これまでの戦いで感じた恐怖や苦しみをすべて払拭し、全力で般若を求める。その力が、まさに今、解き放たれる瞬間だった。
僕はその力に対抗しなければならない。しかし、鬼の心の中で彼が感じているものを理解できれば、戦いの結果は分かるかもしれない。彼はもう、ただの使い魔ではない。彼の心の中で暴走する感情が、今の彼を作り上げている。
「般若を奪うことはできない。」
僕は鬼に向かって叫んだ。その言葉が、鬼の心に届くことを願って。だが、彼の目には、もう何も届かない。彼は、ただ自分の欲望を満たすために、全てをかけて戦うつもりだ。
そして、鬼はその力を僕に向けて放った。