テラーノベル
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歩くん、もう一度話をしよう。階段を上がったものの、歩くんの部屋がどこかわからない。とりあえず、失礼を承知の上で手前のドアから開けていく。
三つ目のドアを開けたとき、ベッドに座る歩くんが視界に入った。
「歩くん……」
ウィッグが床に転がっていて、服装も着替えていた。いつもの歩くんだ。
「なんで……くるんだよ」
消えそうなほど掠れた声だった。
「歩くんを放っておけないから」
「……帰れって言ったのに」
一歩、また一歩と歩くんに近づいていく。
「俺のことなんか放っとけよ! 近づくなよ!! 」
声を荒げて、私を睨みつけてくる歩くん。
そんなこと言われても、睨まれても、たとえ嫌われても私は絶対に引かない。
「私、歩くんにいつも助けられてばかりだっただよね。髪切られた時も、家から逃げ出した時も、私が辛いときいつも歩くんは駆けつけてくれて支えてくれてたでしょ」
困惑した様子で歩くんは私のことを見ている。
きっと彼は気付いていない。
私がどれだけ感謝しているか、歩くんの存在がどれだけ支えだったのか。
「今度は私が支えたいの」
歩くんを独りぼっちで置き去りになんてしたくない。
「ま、しろ……」
揺れ動く歩くんの大きな瞳。
私はもう一歩前に進み、歩くんの目の前に立った。
「私は歩くんの味方だよ」
歩くんの手を掴んで、微笑む。
一人で苦しんでいるのなら、傍で支えたい。
一人ぼっちで苦しい思いなんてさせたくない。
「……俺……っ、 俺は人形じゃない」
苦しそうに言いながら、歩くんは私の手を強く握った。
「ましろ」
必死に何かと葛藤しているようで、壊れてしまいそうなほど脆く見える。
「……助けて」
彼の弱音を聞いたのは、これが初めてだった。
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#ファンタジー
#ざまあ
設楽理沙