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【お願い】
こちらはirxsのnmmn作品(青桃)となります
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ご本人様方とは一切関係ありません
かなり前に配信か何かで「壊れたエンジン」と評されていた桃さんのお話。
毎日忙しく稼働し続ける桃さんが、少し疲れてしまったら…の話です。
「壊れたエンジン」
「壊れたエンジン」…言い得て妙なそんな通称をつけたのは誰だったか。
俺だったかもしれないし、他のメンバーだったかもしれない。
制御能力もなく、止められるまではただひたすら走り続ける存在。
だけどじゃあ、そんな「壊れた」エンジンが本当に壊れたらどうなる?
「……」
自宅に帰った瞬間、ぼすっとベッドに倒れこんだ。
鉛のように体は重く、指先一つ動かすのが困難だ。
唯一動く目は、それでも蓄積された疲れのせいで瞼が重い。
こんな時、いつもなら頭を撫でてくれるあの大きな手は今ここにない。
別れてからどれくらい経っただろう…1か月くらい?
隣にあいつの姿がなくなってから、まだほんのその程度の時間。
それでも体感では数年に匹敵するように思う。
あの時、別れを選んだのも告げたのも俺の方だった。
稼働し続けるエンジンの如く突っ走る中、仕事以外のものを振り返る余裕がなかった。
ブレーキ役としてずっと傍にいてくれたことは分かっていたし、感謝の気持ちを忘れたことはない。
だけどそれよりも、狭くなった視野と疲れには抗えなかった。
仕事以外に時間を割く余裕がなくて、一番大事なはずの存在を遠ざけた。
その事実が今頃になって、ようやく後悔と共に全身に重くのしかかる。
自業自得だと分かっているから、涙は出ない。
代わりに痛みに耐えるようにぐっと目を閉じる。
するとその時、リビングに備え付けられたインターホンのモニターが軽快な音を鳴らした。
…誰だよ、と内心で毒づく。
宅配か何か頼んでいただろうか。
いや、頼んでいたにしたってこんな夜遅く配達されるわけがない。
重い体を起こすこともできず、ベッドにうつ伏せになったまま俺は無視を決め込んだ。
そうしてそのまま数分が経過する。
再び室内に下りた静寂。
訪問客がいたことなんて忘れかけた頃、今度は玄関のインターホンが鳴った。
さっきはマンションのエントランス。
明らかに近づいたその音にビクリと肩が揺れた。
目を見開くけれどやっぱり体は動かない。
目線だけを動かしてリビングの方を見やっても、インターホンのモニターまではさすがに確認できなかった。
外の相手に聞こえるわけもないのに、息を潜める。
ぐっと空気を呑み込んだ次の瞬間、ガチャっと玄関のドアが開く音がした。
…鍵は、かけたはずなのに。
「……!」
さすがにベッドの上にガバッと上体を起こした。
振り返った視界に、やがて一つの影が映る。
この自分の家で久々に見るその「影」に、俺は思わずもう一度息を呑んだ。
「弱りまくっとるやん」
降り注いだからかうような声は、それでもこちらを馬鹿にするような響きはなかった。
眉を下げて苦笑いを浮かべたまろ。
信じられないものを見るように焦点の合わない目で見上げると、ゆっくりと近寄ってきたあいつの手が不意にこちらに伸びてくる。
染めすぎて軋んだ髪を、そっと撫でられた。
あぁこの瞬間がずっと好きだった。
髪を梳くように、指の間を滑らせて撫でる。
ベッドの上に座った態勢のまま、思わずその目を閉じてしまいそうだった。
だけどほんの1か月前、自分がまろの手を拒んだはずだったことが脳裏をよぎる。
本能や欲のままにまた甘えるのは違う気がして、ぱしっとまろの手を振り払った。
「別れるって言ったじゃん」
後悔しているはずの言葉をもう一度口にする。
なかったことにしたかったはずなのにもう一度自分で傷つきにいってしまう。
そんな言葉を受けて、まろは「ふふ」と小さく笑んだ。
断りもなくベッドの脇に腰かけながら。
「別れたつもりなんてなかったよ、俺は。どうせまた疲れてなんか拗らせて拗ねただけやろ?」
顔を覗き込んでくるまろの前髪が、さらりと揺れた。
「そろそろかなて思っとった。仕事中も疲れとるように見えたし、限界かなって」
「…っ別に、拗らせたとか拗ねたとかじゃないし。俺は本気で別れたって思っ…」
「じゃあ何でその時、俺からこれ取り上げんかったん?」
さっき使ったばかりのこの部屋の鍵をひらひらと振って見せて、まろは俺をじっと見つめてくる。
「……っ」
答えられず目を逸らしてしまった。
そんな俺に、まろはもう一度苦笑を漏らしたようだった。
「ん、ないこ。おいで」
大きく腕を広げ、俺を呼ぶ。
前からと寸分も違わないその優しい声に誘われる。
「……っ」
反論する言葉も抗議する声も無くし、目頭がきゅっと熱くなった。
眉間に力を入れてそれをこらえた後、俺は目の前のその胸に体当たりをするように飛び込んだ。
コメント
2件
もしもエンジンが本当に壊れたら…想像をこんなにも膨らませて書けるのか尊敬でしかないです……😭😭💕 拗らせただけと思う青さんの桃さんを分かりきっているところがもう熟年夫婦すぎて大好きです!!🫶🏻💗 ̖́- 読んでいて優しさに心が暖かくなりました😖💘 投稿ありがとうございます!!元気になれました…!!
今回もすごくいいお話でした!桃くんが弱ってるのみてるこっちまで辛くなってしまう…あんまり、無理しないようにと声をかけてあげたい…青くんナイスタイミングで部屋に入ってきた!優しすぎて…こっちまで感動しちゃいました…これからも更新頑張ってください!