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1 影の兆し
雨が降る夜の東京都心。
神城 蓮は、霧のかかった路地で再び事件現場を確認していた。雨に濡れたアスファルトは街の灯りを反射し、静かに光っている。しかし、その静けさこそが、彼の直感を研ぎ澄ませる。
「……何かがおかしい」
神城は低く呟いた。手掛かりは小さく、目立たないものばかりだ。だが、現場の“空気”が彼に告げていた。以前なら考えられない、計算された痕跡――それは、内部からの介入を示していた。
警視庁ゼロディヴィジョンの部屋に戻ると、氷室 悠真がコンピュータ画面に向かって黙々と解析していた。
「神城、これ見てくれ」
氷室の声は冷静だが、どこか張り詰めたものがある。画面には、過去の監視カメラ映像と通信ログの比較結果が並んでいた。
「このアクセス履歴……内部の誰かが、俺たちの動きを監視している」
神城は画面を食い入るように見つめる。息を潜める街の闇の中、彼の直感は「警戒せよ」と告げていた。
一方、黒瀬 鷹真はいつものように無言で武器と装備を確認している。
「内通者か……」
その言葉に含まれる緊張は、無口な彼なりの警告だった。言葉少なでも、仲間を守る覚悟は伝わる。
三人は互いの目を見交わした。疑心暗鬼が芽生えつつも、行動は冷静で迅速だ。神城は心の中で過去の相棒の顔を思い浮かべる――失った命を二度と無駄にしないために。
「まずは現場とデータ、両方を洗い直す。小さな異変も見逃すな」
神城の指示で、チームは再び夜の東京へと分かれ、闇に潜む“影”を探し始めた。
雨音に混じって、足音だけが響く。だが、その静けさの中に、内通者の存在は確かに漂っていた。