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side未緒
とても静かだな・・・
鳥が楽しそうにさえずっている。 暖かな日差しが、優しい風がいたずらに髪をいじってくる。
・・・ゆっくりと目を開けた。
寝っ転がったまま辺りを見渡す。
10畳より少し大きいかと思われる全体的に白い部屋。 右側には高さはあまりなく、横に長い白色の本棚。 本棚の上には小さな鏡とちょっとした植物の植えてある鉢がある。 左側にはクローゼット。 なめらかな木の色がどこからか安心感を持ってくる。
自分はベットに寝かされていた。
清潔で真っ白なシーツ。 ふかふかのマット。 この季節にあった少し薄めのタオルケット。
服も違うものになっていて、 下半分が白で上半分が黒のぶかぶかのパーカーになっていた。 前まで着ていたざらざらであちらこちらに穴がある服よりはるかにいいものだ。 頭の方にある二つの窓は少し空いていて隙間から入ってくる風にカーテンが穏やかになびいている。 カーテンに映った木漏れ日が春風に揺れた。
ガチャっと音がして足元の方にあるブラウン色の扉が開く。
そこから部屋に入ってきたのは、 あの少女と見知らぬ長身の青年だった。
「おはよう。よく眠れた?」
少女はベッドの横にある椅子に腰をかけた。
静かに頷くと 「よかった」と微笑まれる。
「・・・えっと・・・あなたは・・・だれ?」
流石にまだ名前も知らないのはよくないと思ってたずねると、 青年の眉がピクっと動く。
「・・・え。まだ名乗ってなかったの??」
青年は少女に「本当に??」みたいな目を向ける。
少女はと言うと、罰が悪そうに片方の眉尻を落としていた。
「え〜と。改めましてこんにちわ!のんです!」
「ここは人外の国《キアノース》。この国の国民殆どが人外。そして今いるのが国の中心にある城だよ!」
キアノース・・・
一応基礎知識としてお姉ちゃんから聞いたことがある。
確か数少ない人外の国の中でも1番大きく発展していてニンゲンの国と争えるくらいの力を持った国だ。
何十年も前。
ここにはあるニンゲンの大きな国があった。 しかし、その大きな国は一晩で消えてなくなってしまったのだ。 そしてそこに新しく人外達の国が作られた。 当然近隣のニンゲンの国は反発し、戦争を持ちかけた。 国々は団結し、新しくできた国を滅ぼそうとしたが、、、
たった8人の人外たちの手によってその戦争は終結させられてしまう。
ニンゲンの国々の死傷者は1万人にも及んだが、人外の国の死傷者は脅威の十数人。
この時の人外の国の人口は1万人にも満たなかったが、戦争に事実上勝利したこの国は急激な発展を遂げた。
8人で1万人を圧倒してしまうほどの力に怯えた国々は、この新しい国を認め、ほとんど攻撃をしなくなったらしい。
そんな国の中心の城? 偉い人が住むところじゃないの?
ちらっとのんの方を見た。
「まぁ色々省くとこんな感じかな〜」
「・・・それ大事なところが全て抜けてるんよ」
今まで壁に背中を預けて腕を組んでいた青年が喋った。
「全ては抜けてないじゃん!取捨選択をしたのよ。取捨選択を」
「じゃあ後は俺から説明するね」
のんの抗議を「はいはい」と受け流し、青年はのんが座っている横の椅子に腰をかけた。
少し茶色寄りの黒の髪に 所々に傷が入っているかのようなデザインのパーカー。 少し切れ目の目から水色の瞳と緑色の瞳がのぞいている。 とても綺麗なオッドアイだ。 落ち着いた雰囲気を漂わせていてのんやお姉ちゃんよりも年上だろう。 声は低くゆったりとしている。
「さっきのんが言ってたけどここはキアノース。そして俺はこの国の総統をしている”狼冥 瓢“。のんは自分で言ってなかったけど、ここの外交官長をしてる。」
そこから、狼冥さんはいろいろ説明してくれたが難しくてよくわからなかった。
「・・・のん。取捨選択っていうのはこう言うふうにするんだ。大事なところが抜けてたらそれは取捨選択じゃない。相手によりわかりやすく説明するために大事な情報だけを選んで話すことが取捨選択だ。」
「いやいや、未緒よくわかってないって顔してるじゃん!やっぱり自分が説明した方がわかりやすいかな✨」
狼冥さんはやれやれと肩をすくめている。
のんはと言うと 「ロゥは真面目だなぁ〜」 と楽しげに目を細めている。
・・・なんかこの人たち見てると調子が狂いそう
そう思っていると、のんが「そうだ!」と何か思い出したのかこちらに向き直った。
「未緒のお姉さんの名前を教えて欲しかったんだ」
「・・・お姉ちゃんの名前は・・・未雨」
ピリッと空気が冷たくなった。
どことなく狼冥さんの表情が固くなったように見える。
のんの表情は読めなかった。 なぜか全身が硬直する。
「・・・・・・未雨さんね。ありがと〜」
のんが優しくほほえみながら口を開けた。
一瞬にして冷たい空気が元に戻り、時間がまた進み始めた。
「聞きたいことは全部聞けたからロゥいくぞー!」
そうすると狼冥さんは「はいはい」と席を立った。
「少ししたらご飯持ってくるから、それまでゆっくり休んでね〜」
と、のんが言い残しブラウン色のドアが閉まった。
部屋にまた静寂が訪れる。なんだかよくわからないが今は休むべきなんだろう。そう思いまた夢の中へと落ちていった。