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小説 : rd

3 - ri × rd ①

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2025年06月22日

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この気持ちの名前は / 伊波 ライ×らっだぁ





警察署の屋上は、夏の陽射しに焼かれ、アスファルトが熱気を吐き出している。

ヘリコプターのプロペラが空気を切り裂く轟音が耳を劈く中、俺は汗で滑る手で操縦桿を握り締めていた。




助手席に座るらっだぁさんが、静かな声で話しかけてくる。




らっだぁ ) ライくん、深呼吸。機体の動きに身を預けて、大丈夫だから




その声は、騒音をかき消すように柔らかく響き、まるで心の奥に染み込むようだ。


らっだぁさんの手が俺の手にそっと重なり、操縦桿を握る指先に微かな力を添えてくれる。

時折、視線を合わせると、らっだぁさんの口元に浮かぶ小さな笑みが、俺の胸をざわつかせる。


なんでこんな気分になるのか、自分でも分からない。






何度か機体が揺れ、俺の心臓が跳ね上がるたび、らっだぁさんの声が冷静に導いてくれる。やがて、ヘリはふわりと安定し、空に浮かんだ。




らっだぁ ) いいぞ、ライくん! やっぱセンスあるな!




らっだぁさんが笑いながら、俺の頭をわしゃわしゃと撫でる。その手が触れる一瞬、胸の奥が熱く疼いた。


褒められた嬉しさと、別の何か__名前のつけられない感情が混ざり合う。俺はただ、ぎこちなく笑って「ありがとう」と呟くことしか出来なかった。






訓練を終え、本署前の駐車場に降り立つ。


少し離れた場所で、らっだぁさんがなるせさんやぺいんとさんと談笑しているのが目に入った。


らっだぁさんがなるせさんの冗談に笑い、ぺいんとさんに軽く肩を叩かれる姿。仲間同士の他愛ないやり取りなのに、なぜか胸がズキンと締め付けられる。




この痛みはなんだ? 嫉妬? いや、違う。こんな気持ち、初めてだ。


らっだぁさんが他の誰かと笑い合うたび、心のどこかが軋む。自分でもその理由が掴めず、ただモヤモヤが膨らむばかりだった。






その夜、警察署の休憩室。蛍光灯の白い光が、狭い部屋を無機質に照らす。ソファに腰掛けた俺は、目の前でコーヒーを啜るりりむさんに、昼間のことを思い切って話した。




ライ ) …で、なんか、らっだぁさんが他の人と話してるの見て、胸が、こう…変な感じになって…




りりむさんがカップを置く音がカチンと響く。次の瞬間、彼女の目がキラキラと輝き、身を乗り出してきた。




りりむ ) ライくん、それ、恋だよ! 恋! らっだぁさんのこと、めっちゃ好きじゃん!


ライ ) 恋…?




その言葉に、頭が真っ白になる。

俺が、らっだぁさんに? そんなこと、考えたこともなかった。


でも、りりむさんの言葉をきっかけに、記憶がせきを切ったように溢れ出す。


らっだぁさんの穏やかな声、操縦桿を握る手、頭を撫でる仕草、仲間と笑う顔__その一つ一つが、俺の心に深く刻まれていた。




ライ ) …マジで、そう、なのかな…




呟く声は自分でも頼りなく聞こえた。りりむさんはニヤニヤしながら「間違いないって!」と追い打ちをかけるけど、俺の頭はまだ整理しきれずにいた。






次の休日、俺は意を決して、らっだぁさんが副業で働いている猫カフェへ向かった。



入口のベルが「カランカラン」と軽やかに鳴り、ドアを開けると、子猫の気配とコーヒーの香りがふわりと鼻をくすぐる。


店内は柔らかな陽光に満ち、木のテーブルに猫たちがのんびりと寝そべっている。



カウンターに立つらっだぁさんが、俺に気づいて目を丸くする。




らっだぁ ) ライくん? 珍しいね。訓練で疲れちゃった?




少しからかうような笑みを浮かべながら、らっだぁさんが言う。


その笑顔は、いつもより近くて、いつもより鮮やかで、俺の心を強く揺さぶる。


カウンター越しに、らっだぁさんの指先がコーヒーカップを軽く叩く音が、妙に耳に残る。




ライ ) いや、なんか…来てみたくなって…




言葉はぎこちなく、喉に引っかかる。らっだぁさんは「ふふ、そっか」と笑って、子猫を抱き上げながら俺を席に案内してくれる。


その背中に、俺は小さく息を吐いた。




まだ、この気持ちに名前をつける勇気はない。でも、らっだぁさんのそばにいるたび、胸が温かくなる。


この距離を、もっと縮めたい。




いつか、ちゃんと伝えたい__そう、心の奥で誓った。






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