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──────────…
母さんの手元にあったトランプと、地面にあったトランプは全く一緒のものだった。
…いや!そもそもトランプであんな攻撃が出来るのか、なにか仕込んでいるのか
そう考えていると今度は先程よりも強い爆発音と風が私を襲った。吹き飛ばされてしまえば、鉄の硬い壁へとぶつかった。
ゆっくりと体を起こし、先程の爆発地を見るとやはりトランプが落ちてあった。母さんは先程の場所から1歩たりとも動くことはなかった。
「私の異能よ♪まだ5までしか使っていないのに、これ程吹き飛んでしまうだなんて…もう少し基礎が出来てからの方が良かったかしら…」
母さんはそういい顎に手を当てていた。
アクーラはこちらへ駆け寄って来ようとしたが、母さんのトランプがアクーラの方へ飛び、爆風で倒れてしまった。
母さんに急になんでこんなことをするのか、と聞いた。母さんはニコニコと笑った。
「ごめんねぇ、クラーケ…愛しの娘にこんなことしたくないのだけれど貴方のためなのよ。」
次の瞬間、トランプがこちらへ飛んできた。書かれているのは…ダイアの3?掴んでしまえばこちらのものだ、そう思い掴んだ。
手に激痛が走った。手には深い切り傷のようなものがあった。血が止まることなく、流れ続ける。
掴んでもダメなのか…それに、カードによって攻撃が違うと分かった。避けるしか選択肢がない。ならば、避けるまで。
─────────…
母さんと試合を始めてから約30分が経過した。
全く母さんに攻撃が当たる気がしない。私は既に満身創痍だった。母さんはそれでも容赦なく攻撃を続けてくる。たまにアクーラの方を確認する。怪我は無い…というより、母さんがそちらへ攻撃がいかないようにしていると言った方が正しい。
母さんは突然攻撃を止めた。何かまた考える素振りをとっては、こう口を開いた。
「今から、10秒後に8のダイアをアクーラに投げるわ。」
私は一瞬頭が真っ白になった。3でさえ、あれほどの攻撃力があるのだ、8なんて食らったら…
ダメだ。体が持つわけが無い。
私は自然に体が動き、アクーラの方へと近寄り抱きしめていた。今までにないほどに強く。
ああ、あそこから1歩たりとも動かずに居る母さんに腹が立って仕方がない。悠々とした顔でこちらを見ている母さんが。
クソ。私のためなら、何故アクーラに被害を与える。
許さない。 そんなの。
許して溜まるものか。
私達に近付くな。
最後にそう思い、母さんを睨み付けた瞬間だった。
…
母さんは何かに思いっきり押されたように体制を崩した。母さんが投げたトランプは路線を変え、私達の横の壁へ深い傷を付けた。
母さんは、最初は困惑した表情をしていたが、すぐに、頬を緩ませいつもの様に笑っていた。
「まぁ~♪面白い異能ねぇ~♪」
私は理解が出来なかった。異能?何を言ってるんだこの人は。そんな事を考えているのを見抜いたかのように母さんは話を続けた。
「クラーケとアクーラ…ごめんなさいね…実はクラーケの異能を発揮させるためにこんなことしてしまったの…」
ごめんねぇ…ともう一度謝罪の言葉を述べた。母さんは手には︎ハートの9のカードを2枚取りだした。それを私達に1枚ずつ当てると、体の傷が嘘だったように治り、アクーラも目を覚ました。
「あれ…姉さん…なんで俺の事ぎゅうしてるの?…それに、俺母さんのトランプで…」
母さんはアクーラに先程と同じ説明をした。
だが、アクーラもよく分からないと言うような顔をしていた。それを見て、母さん少し笑った後にこう説明していた。
母は元々私に異能があることを分かっていた。時々何か押される感覚があったが、それが私の異能なのかが良くはっきりとしていなかった。
異能があるのであれば、もっと発揮させてあげたかった。だから、今回ちゃんと確認するためにこのようなことをした……と。
だからってやり過ぎ!?と私とアクーラは声を揃えて、母さんに向かって言った。母さんは申し訳なさそうに眉を下げた。
本当はもっと言いたい事はあるが、これ以上この人を悲しませてもいい事はない…
2人で話し合った結果、もしアクーラにも異能があるかもしれない、となった時には先に相談して欲しい、と。
母さんはええ!もちろん!と笑っていた。
全く…この人本当に分かっているのだろうか…そう思ったが、心の中にとめておいた。
そして、この数ヵ月後にアクーラにも異能があるかもしれないという事が分かり、…まあ、母さんによる試験が行われた。結果的にアクーラにも異能があると分かった。
それからは、稽古には異能力の使い方とそれを応用した攻撃方法など…様々な事が追加された。
大変と言えば大変だが、意外と楽しい生活を送っていた。
私もまだまだ上手く異能を操る事は出来ないが、いつか母さんみたいになれたらと思う事がある。
これは、母さんには内緒だが。