テラーノベル
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ナッキの素直な告白にサニーは多少挙動を不信な物に変えて言う。
「え? ぼ、僕?」
「うん、サニーの理由も教えてよ! 何でオスを選んだのさ?」
「あ、えっとぉ、実は僕ってメスのマンマなんだよ…… オスっぽかったかなナッキ?」
「えっ! メスなの? 確かにオスっぽくは無いけどぉ…… んじゃあ、何で『僕』って言うの? 変じゃないかなぁ? アタシとかワタシとかって言えば良いのにぃ、折角可愛いんだからさぁ!」
「あ、ご、ゴメン、ね………… か、可愛い? かっ…… てへっ♪」
ほお~、サニー君、もとい、サニーさんは僕っ娘だったらしい。
ナッキの言う通り、オーリのイメージ『綺麗』とは違うが、小さくて活発な印象を与えるサニーは、オスだと思っていたこれ迄でも、言われてみれば『可愛らしい』そう言って良い物だった筈だ。
少なからず度肝を抜かれてしまったナッキは、その後、大きな石を無言でしゃぶり続け、サニーも又、コケをモグモグし続けて、食事の時間を静かなまま過ごしたのである。
「ね、ねえナッキ、そろそろ出発しない? ぼ、アタシお腹いっぱいになっちゃったぁ」
「あ、アタシ? い、いや、そ、そうだね…… じゃあ、中洲に向かおうか! はいサニーっ! アーン」
「お、お邪魔します」
そんな会話を交わすと、ここまでの道程と同じ様にナッキの大きな口へ入っていくサニー。
口の中で器用に小さな鰭を動かして、その身をナッキの舌の中に収めると、ウオノエみたいに口の中心から顔を覗かせて言ったのだった。
「オケイ、ナッキ! ぶっとばせぇ!」
「りょっ! フンスっ!」
こうして合体移動を再開したナッキとサニーはグングン河口の中洲へと近付いて行くのであった。
|暫《しばら》く泳ぎ下ると景色は一変した。
川幅は土手ギリギリまで目一杯に広がり、反して水流は緩やかになって行ったのである。
泳ぐ勢いを変えないナッキに対して口の中に収まっていたサニーが声を掛ける。
「ナッキ! 水が大分塩辛くなって来たんじゃない? そろそろだからさ、一旦止まってくれるぅ?」
ナッキは口の中に居るサニーに影響が及ばないように注意しながら水の味を確かめると、喉を焼くような塩味を確認して泳ぎを止めた。
そうして大きく口を開け、サニーを外に出してから、改めて周囲の様子を確認したのであった。
暫(しば)しの間、周囲を見回しているナッキに対してサニーが言う。
「どうしたのナッキ? 何か気になる事でもあるの?」
「ん? いいや大丈夫だよ、只さ、ここって体が変に浮き上がるよね? 腰の辺りが浮き易いみたいだからさぁ、尾鰭の前の筋肉で押さえ付けておかないと思い通りに泳げないな、って思ってねぇ」
なるほどね、腰の辺りって事は浮き袋の事だと思われる。
塩水が混じった事で軽くない浮力に影響を受けているのだろう。
サニーは感心し捲った表情を浮かべて答える。
「えー! ナッキってやっぱり凄いねぇ! 前にみんなでここに避難した時はてんで自由に泳げなかったんだよぉ? でも、そっか! 尾鰭の前を締めるんだね? どれどれぇ、おっ! 良いじゃん! ナッキこれ、泳ぎやすいよ? 凄いよ、流石はナッキだよぉ!」
「そ、そう? えへへ♪ それでここからどうしようか、サニー?」
「う~ん、そうだねぇ~」
言いながら周囲を確認したサニーは直後に迷い無い感じで答える。
「うんっ! これより先に行くと河口の外側、海に出ちゃうからさ! やっぱり前に中洲の澱みに向かった時使った水路に向かってみよ? 海ってさ、馬鹿みたいに大きな魚や、肉食の凶暴な生物ばかりだって言ってたからぁ、念の為に回避しようよナッキ!」
「そうなんだね…… 因みに誰が言っていたんだい?」
「オーリだね、彼女って色んな事に詳しいじゃない? 確かお父さんやお母さんから聞いた、とか言っていたよ?」
「ああオーリね、はいはい、なるほどね~」
ナッキは思った、例のヤツだと……
んまあ、オーリの聞き齧りの知識もここまでは大きな間違いが無かった訳だし別に良いか、そう思ったナッキはサニーに答える。
「じゃあ水路に向かおうか? 案内を頼んで良いかな? サニー?」
「勿論だよ、ぼ、アタシに付いて来てね、ナッキ♪ こっちこっちぃ!」
尾鰭の手前をしっかりと締めた二匹は、塩水の中を上手に泳いで水路の入り口へと向かうのであった。
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