「どう? 行けそう? サニー?」
「うう~ん、無理、かなぁ~」
水路の入り口に辿り着いた二匹は、巨大なナッキを何とか水路の中、更にはその先にある浅瀬の澱みに侵入させられないか、その試行錯誤を続けていたのであった。
具体的には、尖った鼻先を水路に突っ込んだナッキが強引に進もうとしているのを、脇で見守るサニーが頑張れ頑張れと応援し続けていたのだ。
もう、何十回目かの無理そうなチャレンジに漸(ようや)く道理を悟った感じでナッキが言った。
「これさ、やっぱり僕じゃ入れないよね? どうしようか……」
「……確認するけどさ、鳥を連れて来さえすればナッキは会話出来るんだよね?」
「うん、お互い短い言葉だけだけどね」
「オケイ! じゃあぼ、アタシの出番だ!」
「サニー? 何か名案でもあるの?」
サニーは表情を引き締めつつも、さも自信有り気な声音で答える。
「まあね、ぼ、アタシが水路に入って鳥たちをここまで連れてくるよ、あいつ等って基本飢えてるからさ、目立つ様に跳ねてやればきっと追いかけて来る筈、ナッキは待っていて奴等が来たら話し掛けてよ」
ナッキは不安そうに返す。
「えー大丈夫なの? 万が一捕まったら食べられちゃうんでしょ、危ないじゃない」
対してサニーは余裕の風情を崩さずに笑顔まで浮かべて言う。
「大丈夫だよ、あいつ等狩りの時って、てんでばらばらだからね、一番近くに居るヤツだけを誘(おび)き寄せるから一対一なら不覚は取らないさ! 一応安全マージンも充分以上に取るから心配要らないよ」
「そう? でも無理しないでよ? 気を付けてね……」
「あいあいさー♪」
気楽な感じで答えたサニーは、胸鰭を背後のナッキに向けてヒラヒラと振りながら、鼻歌混じりで水路の中に姿を消すのであった。
数分後。
「そろそろ澱みに到着したのかなぁ、心配だけど、サニーが戻って来た時に抜かり無く動く為にも集中、集中っと!」
その時だった。
「ギエェェーッ! お、オタスケェェーッェェ!」
絹を引き裂くような甲高い悲鳴、いいや断末魔と形容した方がしっくり来る声が、集中力を高めたナッキの内耳(ないじ)に届けられたのである。
「っ! い、今の声はサニー? い、一体何がっ! ええいっ! こうしちゃ居られんっ! とうっ!」
次の瞬間、ナッキは久々に全身の力を振り絞って、水面から跳躍し、水路の先に視線を向けたのである。
決して良くはない視力を駆使して見つめた光景は、三羽の白い水鳥が、鋭く長い嘴(くちばし)を剣戟(けんげき)のようにぶつけ合い、何かを奪い合うように競い合っている姿であった。
三羽の水鳥が争う原因、”何か”は宙空を舞う弱々しい存在、そう、絶命寸前のサニーだったのである。
「な、ナッキいぃぃー! ひいぃっ! し、死むぅぅっーぅ!」
「さ、サニーイイィィッ!」
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