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私の視線を受けて杜若様は「失礼した。つい美髪に惹かれてしまった」と、三つ編みを解放してくれた。
そして軽やかな言葉から、真面目な口調と顔付きになった。
私の元に戻ってきた三つ編みを手元に手繰り寄せて、杜若様に耳を傾ける。
「二人の言う通りだ。雪華家が見栄を張って、能力の誇張をしているだけならば失笑だけで済む。しかし、証拠の土地が今でも残っている。言い換えれば十年前に力を振るった者が存在していると言うことだ。だから見合いの話が浮上した機会に、一度ちゃんと調べてみようと内偵調査を入れていた。そして出会ったのが環だ」
「そ、そうなのですね」
心まで見透かされそうな、紫紺の瞳と杜若様の美貌が相まってドギマギした。
あぁ。なんだか罠に捕まった気分になる。また鼓動が加速する。
今度は私が自分の三つ編みを触って、なんとか気持ちを落ち着けようとした。
「十年前、金髪の少女が振るった力は白百合家当主以上の強力な力に違いない。妖祓いをしている杜若家としては、喉から手が出るほどに欲しい存在だ」
「……えっーと、雪華家はともかく。杜若様がその白百合家の方とお見合いすれば、色々と杜若家に都合が良かったのではありませんか……」
おずおずと「私じゃなくても良かったのでは?」的な雰囲気を言葉に纏わせ、ゆっくり杜若様へ視線を向けると、杜若様は首を横に振った。
しかも、私の言葉を否定するように石蕗様が追い討ちをかける。
「環様。白百合家はなぜか、男性だけに浄化の能力が現れるのです。しかも皆様方、筋骨隆々。素手で暴れ牛を倒せるのは白百合家ぐらいでしょう」
「素手で、暴れ牛をですかっ!?」
白百合って女性みたいな名前なのにっ!
「環。俺は自分の妻をいい加減な気持ちで、選んではいない」
私のびっくりをよそに杜若様は淡々と喋る。
「雪華家は血統を重んじる家。環の力はそんな雪華家から見たら異端でしかない。だから理解せず、環を忌避したのにもかかわらず、その手柄だけを横取りにしだと言うことだ」
身内の良くないことを言われて、どう返していいか分からなかった。
でも、杜若様はちゃんと私のことを理解してくれようとしているのは分かった。
「そのことを外にバレるのを避ける為に、環を『忌み子』などと蔑称して閉じ込めていたと思われる」
杜若様は最後に、雪華家が私に炎を使わせなかったのは見た目が違うから。
私を容認すると今までのことを否定することになるから、力を使わせなかったのだろう。
実にくだらないと、硬い口調で言い捨てた。
「そう、……ですね。両親の真意は分かりませんが、私は力を使うことを禁じられていました」
「俺は環の力を探していて、それが目的の一つであり──結婚を決めたことは否定しない。しかし、俺は環のことを気に入った。妻として迎えたのだから、能力関係なしに大事にする。そこは信用して欲しい」
「気に入った……!?」
私が上擦った声を出すと、石蕗様達がくすりと笑うので顔が熱くなる。
だって、男の人にそんなことを言われたことがなくて、頭が混乱する。
気に入るというのは──す、好きと言うことなのかな。それとも違うのかな。なんで気に入ってくれたのだろうか。
全部よく分からない。まだ妻になったと言う自覚も湧かないのにと思うと、杜若様の澄んだ声が部屋に響く。
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