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星葬り0̸のヴィオラ

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星葬り0̸のヴィオラ

1 - 【第三章】 古の覇王

2026年01月01日

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【第三章】開幕

-古の覇王-

𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃𓂃

_柔らかな陽光が窓から差し込み,爽やかな風がカーテンを揺らす。


雲一つない蒼穹が広がる,穏やかな朝であった。


しかし,フローレンス公爵邸の空気は,どこか張り詰めている。今日は,人類の希望たる「勇者」との会談が控えているのだ。


鏡の前に座す,ヴィオラ・フローレンス。

彼女は静かに,これから訪れる未知なる邂逅(かいこう)へと思いを馳せていた。


クララ. ┊︎ 「…ヴィオラ様。貴女様の髪は,いつ拝見しても吸い込まれるような美しさです。私,心からお慕いしております!」

_背後に控える侍女のクララが,感嘆の吐息を漏らしながら,絹糸のようなヴィオラの髪にそっとブラシを通した。


V. ┊︎「あら,そうかしら? 毎日見ているものですから,自分では気づかないものね。…ありがとう。でも,私はあなたの髪も素敵だと思うわよ,クララ」

クララ. ┊︎「まあ……!私の髪は遺伝で,このように扱いにくい癖がございますから。(パーマのような感じ)ヴィオラ様のしなやかな髪質には,到底及びません」

V. ┊︎「ふふ,それがあなたの良さではなくて?その柔らかな曲線は,とても個性的で愛らしいわ。誰の目をも惹きつける,あなただけの宝物よ」

クララ. ┊︎「ヴィオラ様……。もったいないお言葉にございます!」 

_主からの慈愛に満ちた言葉に,クララは瞳を潤ませながら,いっそう心を込めて身支度を整えていく。


クララ. ┊︎「……さあ,ヴィオラ様。準備が整いました!我ながら,お嬢様の美しさを最高に引き出せたかと存じます。いかがでしょうか……?」

V. ┊︎「ええ,完璧だわ。さすがは私の自慢の侍女ね」

クララ. ┊︎「お褒めに預かり,光栄の至りに存じます!」

コン,コン_。


_控えめなノックの音が二度,静寂を叩いた。

扉が音もなく開き,一人の少年が姿を現す。


ヴィク. ┊︎「お嬢様。勇者アルカイド様が,当邸の門前に到着されました。……ご準備は,よろしいでしょうか」

V. ┊︎「ええ,ヴィク。ちょうど終わったところよ。アルカイド様を客間へご案内して差し上げて。私もすぐに向かうわ」 

ヴィク. ┊︎「……承知いたしました。ご案内申し上げます」

_少年執事は音を立てず深く一礼し,踵(きびす)を返した。その所作には,一切の無駄がない。


V. ┊︎「ありがとう。……さて,行きましょうか,クララ」

クララ. ┊︎「はい,ヴィオラ様。お供いたします」

(……今日も,忙しい一日になりそうだわ)

_胸の内で小さく溜息をつき,ヴィオラは凛とした足取りで,勇者が待つ客間へと向かった。


コツ,コツ,と――。


_静まり返った廊下に,ヴィオラの履くヒールの音が心地よいリズムで響き渡る。


かつての栄華を誇ったフローレンス家は,聖女であった母を亡くして以来,没落の影に覆われて久しい。


しかし,主を支える執事ヴィクトールと侍女クララを従え,背筋を伸ばして歩む彼女の姿は,没落貴族という悲運を微塵も感じさせないほどに凛としていた。


_やがて,その音は重厚な彫刻が施された大きな扉の前で止まる。


ヴィクトールが音もなく歩み寄り,その白手袋をはめた手でゆっくりと扉を押し開いた。


失礼いたします,アルカイド様


ヴィクトールの冷ややかな声が客室に響くと同時に,扉が左右へと開け放たれる。


そこには,先ほどまでの静寂とは対照的な,快活な笑い声が溢れていた。


勇者アルカイドと,その供であるバルトロが,まるで我が家にいるかのように打ち解けた様子で語らっていたのである。


バルトロ. ┊︎「……遅かったな,ヴィオラ」

(父の声は低く,苛立ちを隠そうともしない。母を亡くしてから,彼にとって私は八つ当たりの対象でしかなかった。)

V. ┊︎「申し訳ありません,お父様。侍女との話が長引いてしまいましたわ」


私は,淑女の笑みを貼り付け,深く頭を垂れる。今はここに「勇者」がいる。粗相は許されない


バルトロ. ┊︎「……フン,次はないと思え。…失礼いたしました,アルカイド様。見苦しいものをお見せしてしまい,申し訳ございません」


アルカイド. ┊︎「いえいえ,お気になさらず。…そちらがバルトロ公爵のご令嬢,ヴィオラ・フローレンスさんですね?」

V. ┊︎「はい。ご挨拶が遅れましたわ。フローレンスが娘,ヴィオラと申します。以後お見知りおきを,勇者様」

アルカイド. ┊︎「丁寧なご挨拶,恐縮です。私はアルカイド・ノヴァ。…さて,バルトロ閣下。さっそく本題に入らせていただいても?」

バルトロ. ┊︎「もちろんでございます,アルカイド様。……ヴィオラ,お前も座れ。粗相のないようにな」

V. ┊︎「……はい」

アルカイド. ┊︎「今回,フローレンス家との会談を申し込んだのは,昨日から始まった「銀杯の月」についてお伝えしたいことがあったからです」

(ああ,やはりその話。この一ケ月,魔物は際限なく狂暴化する……。聖女の力には,魔物を鎮める力も備わっているのですわ。なのに,聖女だったお母様がいない今,魔法で食い止めるのは至難の業だわ)

バルトロ. ┊︎「銀杯の月,ですか。既に各地の魔道士たちが奮闘していると聞き及んでおりますが…」

アルカイド. ┊︎「ええ。ですが,今回の「銀杯」は少し様子が違うようです。…閣下,南方に位置するシュバルツ家の「暗影城」をご存知ですね?」

バルトロ. ┊︎「ええ,かつて四大魔道名家の一角を担いながらも,今は没落し,空城となっているはずですが。それが何か?」

アルカイド. ┊︎「あそこが……魔物のボスに襲撃され,崩壊しました」

バルトロ. ┊︎「なんと……!?誰が,あの堅牢な城を…!」

(…!?あの暗影城が?相手が並の魔物なら,城の防御結界を抜けるはずがない。となれば,高位魔導師でも手に負えない,あの……)

アルカイド・ヴィオラ ┊︎

「_【絶望の象徴】ゼノ・ハデスです(ね)」

(やっぱり…。最悪の相手が出てきたわね)

【絶望の象徴】虚無を喰らう者

-ゼノ・ハデス-

圧倒的な魔力と「無」を司る存在。

普段は漆黒の霧のような姿をしていて,人型に変えることもできるそう。

触れた対象の魔力だけでなく「存在そのもの(記憶や魂)」を消滅させ,彼に殺された者は,誰からも思い出されることがありません。

人間時の不気味さも兼ね揃えており,とても恐怖を感じる魔物。


バルトロ. ┊︎「な,なんということだ……あの巨介な化 け物が…。 アルカイド様,我々はどう対処すれば…」

アルカイド. ┊︎「そこで,四大魔道名家の知恵をお借りしたいのです」

(西の暗影城って,ヴィクトールの家よね…?)

_ヴィオラが恐る恐る隣をうかがうと,ヴィクトールは今にも怒鳴り出しそうなほど顔をしかめていた。


(…ヴィクのこんな表情,初めて見た……。あ,それより,私がまだ「無才(ギフトレス)」の状態だってことを伝えなきゃ)

V. ┊︎「 そのお申し出,大変光栄なのですが。聖女であった母が亡くなった今,フローレンス家に流れる「慈愛」の灯火は潰(つい)えてしまったのです」

バルトロ. ┊︎「…っ!? ヴィオラ,貴様!その話は,他言無用と…!」 

アルカイド. ┊︎「…ええ,存じておりますよ」

バルトロ. ┊︎「……なっ!?何故それを…」

アルカイド. ┊︎「貴家がかつての栄光を失い,没落の淵にあることも。…情報の入手経路は,お聞きにならないでいただきたい」

V. ┊︎「…すべて,ご存知の上だったのですね」

アルカイド. ┊︎「ですが,血脈が途絶えても,その魔力の「種」はヴィオラさんに継承されているはずだ」

V. ┊︎「はい。ですが,私はまだ,能力 覚醒の端緒(たんしょ)すら掴めていないのです」

アルカイド. ┊︎「覚醒,ですか。……ならば「七星エレメンタリア魔導極院」へ入学されてはいかがです?実は私も,あの学び舎に籍を置く身でしてね」

バルトロ.┊︎「…滅相もございません!このような出来損ないの娘が,選ばれし英傑の集う「極院」の門を潜るなど…アルカイド様,正気とは思えませんぞ!」

(…なんてことを。お母様は,この国でも指折りの高位魔導師だった。その血を引く私を,お父様はそこまで否定するの……?そのようなこと,黙って聞き流すわけにはまいりませんわ)

V. ┊︎「いいえ,お父様。そのようなことはございませんわ。私はやってみせます。この国をお守りできるのであれば,どのようなことでもいたしますよ」

アルカイド. ┊︎「ふふ,その意気ですよ、ヴィオラさん。七星魔導極院は,十歳から既に入学が可能です」

V. ┊︎「では,入学する方針で参りますわ。お父様,私は早速,入学の手続きをいたします」

アルカイド. ┊︎「では,そのように皇帝陛下へ奏上いたしましょう。「極院」は最高峰の魔法学校。皇帝陛下の認可なくしては入学叶わぬ場所ですから」

V. ┊︎「そうですわね……。確か,「魔力測定」と「魔力査定」もございますよね?私,本当に魔法を操ることができませんの」

バルトロ.┊︎「ふん,所詮はその程度なのだ。…諦めろ,ヴィオラ」

アルカイド. ┊︎「いえいえ,諦めるなどという言葉は似合いませんよ,バルトロ閣下。私が手ほどきをいたしましょうか?」

V. ┊︎「…よろしいのですか!?ですが,一体どのように?」

アルカイド. ┊︎「私の城で学びましょう。なんなら,城に住んでいただいても構いませんよ」

(…それは絶好の機会だわ。アルカイド様のお城へ移れば,もうお父様のいるこの屋敷に留まらなくて済むということよね)

V. ┊︎「アルカイド様がよろしいのであれば,ぜひそのようにお願いしたく存じます」

アルカイド. ┊︎「…それでは決まりですね!では,明日からでも」

V. ┊︎「承知いたしました。すぐに準備を整えますわ」

(あ,クララとヴィクトールもご一緒させていただけるか伺わなくては)

V. ┊︎「あの,アルカイド様。わたくしの執事と侍女を連れて行くことは可能でしょうか…?」 

アルカイド. ┊︎「全然よろしいですよ!ヴィオラさんが同行させたい方がいらっしゃったら来ていただいて構いません」 

V. ┊︎「左様でございますか。本当にありがとうございます」

バルトロ. ┊︎「…ヴィオラ。後で話がある。…執務室へ来なさい」

V. ┊︎「……それでは,失礼いたします。行くわよ,ヴィクトール,クララ」


_そう言い残し,客間を優雅な所作で辞そうとした時,ふとヴィオラは気になることがあった。


(あら,アルカイド様…今,随分とヴィクトールを注視していらしたような…。気のせいかしら?それより,、アルカイド・ノヴァ。不思議な方だわ。何故これほどまでに,私を気にかけてくださるのかしら

アルカイド様のことは,いずれ時が経てば分かること。今わたくしが案ずるべきは,入学までに魔力数値を高め,魔法を扱えるよう努力することね。

次回の入学式までは,まだ一年あるわ。

それまでに必ず,能力を開花させてみせる!

_この時,ヴィオラはまだ知る由もなかった。

古の覇王―ゼノ・ハデス

という存在が,どれほど強大な魔物であるかということを。

【第三章】閉幕

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コメント

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今回も長いですが...!!古の覇王は主要人物なので,これからの展開も楽しんでいただけたらと思います🥹

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