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それから数日――涼ちゃんは、言葉こそ相変わらず少なく、家族ともほとんど喋らない。
けれど、𓏸𓏸への気持ちは少しずつ形を変えて現れはじめていた。
𓏸𓏸が咳き込んで目を覚ませば、
涼ちゃんは何も言わずにコップに水を汲んで持っていく。
そっと枕元に置き、「飲んで」とは言わないけど、
必ず𓏸𓏸の手に届くところに置いていた。
夜、𓏸𓏸が眠るときには、
涼ちゃんは静かに立ち上がり、ずれた布団を肩までふわりとかけてあげる。
それでも、すぐに自分のベッドに小さく戻り、𓏸𓏸もその成長を遠慮気味に感じるだけ。
言葉や表情には出せなくても――
以前よりもずっと、「𓏸𓏸のために」何かをしようとする気持ちが、
涼ちゃんの日々の小さな動きの中に、確かに宿っていた。
ふたりきりの夜がまた訪れる。
今も依然、涼ちゃんは窓の外をじっと見つめることが多い。
けれどどこか、心のこわばりが少しずつほぐれていく日々――
𓏸𓏸は、その静かでゆっくりとした変化を、目を細めて見守っていた。
涼ちゃんもまた、はっきりとはしないけど、
自分が誰かの役に立てたこと、そしてその誰かが𓏸𓏸であることに、
小さな誇りと温かさを感じ始めていた。