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時間がゆっくりと流れ、𓏸𓏸の体調もようやく落ち着いてきた。朝、目を覚ましてもすぐに台所に立つことはせず、
薄明かりの部屋で、涼ちゃんと向かい合って座ることが増えた。
「おはよう、涼ちゃん」
𓏸𓏸がやさしく声をかけると、
涼ちゃんは少し下を向いたまま「……うん」と小さく返事をする。
それでも、その言葉には前よりもずっと、安心や信頼が混ざっている。
会話は、まだたくさん生まれるわけじゃない。
𓏸𓏸が季節の話や、静かな昨日の出来事などをぽつぽつ話すと、
涼ちゃんも時々、
「や……そうだね」と、本当に小さな声で応えてくれる。
普通の人が聞き逃してしまいそうなほど小さいその声も、
𓏸𓏸にはちゃんと届いていて、心はぽかぽかとあたたかかった。
ふたりで窓の外を眺めたり、静かに熱いお茶を飲んだり――
そんな他愛もない時間の中で、
涼ちゃん自身も「うん」や「そうだね」を返せる自分が、
ほんの少しだけ誇らしく思えた。
𓏸𓏸は、涼ちゃんの答えを聞くたびにやさしい目をして、
「ありがとう」「嬉しいよ」と、何度も微笑んでくれる。