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「俺の言いつけを守って、毎日ちゃんと消毒して偉いね」
頭をふわりと撫でられて、私はご主人様に褒められた忠犬の気分でなおちゃんを見上げる。
「まだちょっと痛いかもしれないけど、毎日ポストを動かして消毒しなきゃダメだよ?」
あけてくれたピアスの穴の具合を確かめているからだろう。耳元で話すなおちゃんの吐息が耳を掠めて、私は思わず小さく吐息を漏らした。
「んっ」
「菜乃香は本当感じやすいよね」
途端くすくす笑われて、耳元の髪の毛を指先でくるくるともてあそばれる。
それがまたくすぐったくて……そこはかとなく気持ちいいの。
「菜乃香、可愛い。大好き。――ダメだって分かってても誰にも渡したくないって思う」
なおちゃんが熱に浮かされたような目をして私の身体を引き寄せると、あごを捕らえて貪るような口付けをくれる。
「んっ、ぁ、――なお、ちゃ……」
キスの合間を縫うように切なくなるぐらい愛しくてたまらない彼の名を呼べば、その言葉さえ逃したくないみたいに舌先で絡め取られた。
私たち、毎日のように会えば身体を重ねているけれど、全然足りなくて……もっともっとと思ってしまう。
それはきっと、なおちゃんが妻帯者で、どんなに肌を合わせても全部私のものにすることは敵わないという気持ちも手伝っての感情だと思う。
なおちゃんの方も、何だかんだ言っても家族を手放す覚悟までは出来ていないから。
刹那の逢瀬が心を焚き付けるんだろうな。
なおちゃんと一緒にいると、自分が動物になってしまったような気がして怖い時がある。
お互いに相手の身体を求めることしか見えなくなって、深く深くその行為に沈み込んで溺れてしまうような、そんな恐怖。
熱い抱擁と情事の後、なおちゃんがアパートを後にしてひとり部屋に取り残されてしまえば、途端喪失感で虚しくなるのは分かっているくせに。
一緒にいる時は麻薬のように、彼のにおいが、彼の息遣いが、彼の声が、彼の温もりが、彼と触れ合う肌の感触が……私の脳を麻痺させるの。
「菜乃香、もう少ししたら穴、安定すると思うし、そうしたら一緒にピアス、見に行こうね」
肌蹴られた胸にチュッと吸いつかれて、「んっ」と漏らした吐息が、なおちゃんの言葉への返答にも聞こえて。
「ねぇ、今の、『うん』って意味? それとも『気持ちいい』って吐息?」
クスッと笑って膨らみの頂、敏感な先端を舌先で転がすと、なおちゃんが意地悪くそう問いかけてくる。
私はなおちゃんの髪の毛を両手でグシャリと掻き乱しながら、「どっち、もっ」って答えた。
「素直で可愛い」
途端、チュッと音を立てて乳房から唇を離したなおちゃんが、下腹部へ手を伸ばしてきて――。
下着の中にもぐり込ませてきた手で、薄い茂みの先、ツンと鬱血して勃ち上がった秘芽を、指の腹で優しくこするの。
「やぁ、んっ、……それ、ダメっ」
強い刺激に身体を震わせながらギュッとなおちゃんの手を掴んでみるけれど、本気で止めさせたいわけじゃない。
なおちゃんもそれを知っているから、私の手が添えられたままの腕を、お構いなしに谷間に沿って滑らせてきた。
クチュッと濡れた音がして、閉ざされた隙間をなおちゃんの指先がそっと割り開くようにして進んでくる。
密に濡れた入口をやんわりこすって、今からここにこの指が挿入るのだとわざと私に意識させるのがなおちゃんのやり方。
私はほんの少し足を開くようにして、なおちゃんがそこに指を進めやすいようにした。
「今日も菜乃香のココは、熱くてトロトロだね」
意地悪くわざと音を立てるように亀裂に沿って指を何度も何度も動かすと、なおちゃんの手が私の愛液でヌルヌルに濡れていくのが分かる。
それを証明するみたいに、下腹部で動かされる指の移動が一往復ごとにどんどんスムーズになって。
「なおちゃん……お願い、もう……」
私はギュッとなおちゃんにすがり付いて、焦らすように秘部をこすり続けている指を中に埋めて欲しいと懇願した。
「菜乃香。欲しいのは俺の指? それとも――」
言いながらなおちゃんが、硬くなったものを押し当ててきて、私はキュン、と切なくなる。
「前、触ってもらいながら……がいい」
今みたいに、指先で敏感なところを擦られながら、後ろから彼のに貫かれたらどんなに気持ちいいだろう。
そう思ってしまって。
熱に浮かされたようにそうつぶやいたら、なおちゃんが嬉しそうにクスッと笑った。
「了解。ね、菜乃香、俺がキミの中に入れるよう、準備してもらえるかな?」
耳朶をやんわり食まれて、耳に直接そう吹き込まれた私はトロンとした頭のままなおちゃんから避妊具を受け取る。
そっと包みを破り捨てて、中から薄いラテックスの皮膜を取り出すと、なおちゃんの下着から固くなったモノを取り出した。
やんわりとゴムの先端の突起を押しつぶして空気を抜くようにしながらなおちゃんの昂りに当てると、所々に血管の浮いた屹立に沿ってゆっくりと丸められたゴムを下げおろしていく。
「菜乃香、ゴムつけるの上手になったね」
最初の頃はどう扱っていいのか分からなくて、なおちゃんに教えてもらいながらたどたどしく被せたのを思い出す。
「たくさん……した、から」
言って、自分が口にした言葉の意味ににわかに恥ずかしくなって視線を逸らしたら、「回数を重ねてもところどころにそういう恥じらいが残ってるの、たまらなくそそられる」ってなおちゃんがつぶやいて。
「菜乃香、今日は後ろからでいい?」
――そのほうが前をいじりながら挿入しやすいから。
甘く掠れた声音で耳元に付け加えられて、私は真っ赤になりながら小さくうなずいた。
薄い皮膜越し、なおちゃんのが何度か私の入口をこすってから、ゆっくりと膣に挿入ってくる。
今日は入口を指でほぐしてもらっていなかったから。
いつもより圧迫感を感じて小さく吐息を落としながら彼を受け入れた。
なおちゃんで私の中が隙間なく満たされる感じがたまらなく好き……。
全部収まったと同時、後ろから伸ばされたなおちゃんの腕が、赤く熟れた秘芽をキュッとこすって。
「は、ぁっ、……んっ」
ビリッと電気が走ったみたいに、快感が突き抜けた。
***
土曜日――。
なおちゃんは先の約束通り、私を県外のショッピングモール内の宝石店に連れて行ってくれた。
さすがに県内だと知り合いに出会うかもしれないからと、私たちのデートはもっぱら高速を使って1時間以上は走った先。
移動中の車内でなおちゃんとずっと手を繋いで、ふたりのお気に入りのアーティストの曲をかけながら移動するのも私、嫌いじゃなくて。
忍ばねばならない日陰の恋だと分かっていても、一緒にいる間だけは私、確かにすごく幸せだった。
その裏でなおちゃんのご家族がどんな気持ちで待っていらっしゃるかとか……本当は考えないといけないことが山積みのはずなのに、そういうのからわざと目をそらして。
まるで世界にはなおちゃんと私、ふたりきりみたいな気持ちで過ごすの。
罪深い女だと分かっていても、一度走り出した恋心は今となってはもう止めることなんて出来なくて。
いつか訪れるであろう別れの日を考えないで済むように、私はなおちゃんの大きな手をギュッと握りしめる。
「どれがいい?」
ひとまわり以上歳の離れた私たちが、周りからどう見えているのかも気にならないぐらい、私はなおちゃんが大好きで。
地元でくっつけないぶん、遠方に出ると一般的な恋人たちが普通に出来ることをこれ幸いと彼に求めた。
腕を組んだり手を繋いで歩いたり。
なおちゃんと人目を憚ることなくイチャイチャ出来るのが嬉しくてたまらなかったの。
「小さくて……ちょっとだけユラユラ揺れる感じのデザインがつけてみたいな?」
ショーケースの中をふたりで覗き込みながら、繋いだ手から伝わってくるなおちゃんの温もりに、言いようのない幸福感が込み上げる。
「だったらこれとかどう? 菜乃香の誕生石だよ」
小さな雫型に加工されたサファイアが、耳元で揺れるデザインのピアスを指差されて、私は「綺麗」ってつぶやいた。
店員さんがすぐにそれを取り出してくださって、透明なピアス試着棒の先に取り付けて鏡の前で耳に当ててくださる。
「あまり大きくないし、菜乃香にとても似合ってると思うな?」
なおちゃんがそう言ってくれたから、私は小さくうなずいた。
「これと、18金のボールピアスがあると便利だと思うよ」
なおちゃんがそう言って、小さな金の玉が軸の先についたシンプルなピアスを勧めてくれて。
「仕事とかするのにあまり目立つのはって時なんかこっちにするといい。それから――」
「ふ、ふたつで十分だよっ」
今選んでくれたのだけで既に万札が1枚飛んでいく金額なの、値札を見たから知ってる。
「俺からのプレゼントだから、菜乃香は値段なんて気にしなくていいんだよ?」
なおちゃんはそう言って私の髪をかき上げる様にして、ピアッサーに付属していた太い軸のピアス?にそっと触れると、
「ずっとこんな可愛くないので我慢してたんだ。今からはたくさん気に入ったのに付け替えて楽しむといい」
ってささやくの。
いつもより低められた声を耳元に吹き込まれた私は、つい条件反射で身体がブワッと熱くなって慌ててしまう。
こんなところで変な気持ちになるのは良くない。
一生懸命理性をかき集めてなおちゃんと繋いだ手をギュッと握ると「じゃあ、あとひとつだけ……自分で買う」ってつぶやいた。
途端なおちゃんにグイッと腰を引き寄せられて、「菜乃香にピアスを贈るのはね、俺のものってマーキングも兼ねてるから……自分で買うとか許さないよ?」って真顔で言われて。
私はその声にゾクリと背筋を撫でられた気がして、思わず「分かった」ってうなずいていた。
なおちゃんの独占欲。
たまに予期せぬ方向から責めてくるから――。
私、すごくすごく戸惑っちゃうんだよ?