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イーバーンVSライナー。
アンダージャスティスの親衛隊ともよべる一級戦闘員と光の帝国の一般兵ともいえる聖兵との対決。
その裏で、動いている勢力があった。
巨大な魔法陣と共に、魔力が突然練れなくなったのだ。
魔力の流れを何かが阻害しているような感覚。強引にこじ開けるか、さらに細くすれば練れるかもしれないが負担がかかる。
突然の自体に、ライナーを含め魔力を扱う者達は動揺した。その隙をつき、イーバーンは全力砲撃を放ってライナーを校舎まで吹き飛ばした。
「どうした、テロリスト。顔色が悪いようたが、まさか魔力が練れていないじゃないか。手加減をしようか?」
「結構だ」
突然、ライナーが飛んできた教室は騒然としており、また魔力が練れないことでパニック状態になっていた。
更に何かが教室に近づいてくる。
「知らん霊圧だ……」
その瞬間。
突然、凄まじい爆音が轟いた。
教室の扉が吹き飛び、クラスは騒然とする。
直後、抜剣した黒ずくめの男たちが乗り込んできた。
「全員動くな! 我らはアンダージャスティス、この学園を占拠するッ!」
彼らはそう叫んで、出口を固める。
「おやおや、君のお友達か。魔力を封じて学校を占拠するとは、悪知恵は働くようだ」
「あんなチンパンジーと一緒にされては困るな」
「ふん、所詮は霊子を扱えぬ劣等種の分際で」
二人の会話は周囲のどよめきにかき消された。
動ける生徒はいなかった。
これが訓練なのか、いたずらなのか、それともまさか……本気なのか。
魔剣士学園が襲撃されるという現実を、ほとんどの生徒が正しく把握できないでいたのだ。
ただ二人だけがこの現実を完全に把握していた。
彼らが本気だということも、魔力が阻害されているということも、他のクラスで同じことが起こっているであろうことも。
「凄いな」
「なに?」
ライナーの口から自然と感嘆の言葉が零れた。
「こいつら、やりやがった。 マジでやりやがったのだ。 世界中の少年が夢見た『アレ』を。 オタクが青春妄想の一ページを飾った『アレ』を。 学園がテロリストに襲撃される『アレ』を本当にやりやがった」
ライナーは感動に震えた。
ライナーはいったい何度この状況を妄想しただろう。
数百、数千……数億。 数え切れないほどのパターンを妄想し、夢見た瞬間がついに訪れたのだ。
「そのまま席を立つな、全員手を上げろ! そのお前ら二人もだ!!」
黒ずくめの男たちは、少しずつ気づき始めた生徒たちを剣で威圧する。 ライナーは玄人好みだと思った。彼らはテロリスト側を選択したのだ。しかし、やはり定番は生徒側である。
どうする?
どう動く?
ライナーの前に無限の可能性が広がっていた。
「ここがどういう場所かわかっていないようですね」
その時、凛とした声が響き渡った。
一人の少女が腰の細剣に手をかけ、黒ずくめの男と対峙していた。
「魔剣士学園を占拠する? 正気の沙汰とは思えません」
たった一人、ベアトリクスが彼らに立ち向かっていた。
「武器を捨てろと言ったはずだぞ、小娘」
「お断りします」
ベアトリクスはそう言って細剣を抜く。
「ふん、見せしめにはちょうどいいか」
黒ずくめの男も剣を構える。
まずい。
彼女はこの空間で魔力が使えないことに気づいていない。
「魔力封じがあるのにもきかつかないとは、愚かな」
「くっ……!」
「……ッ、いったい何が」
イーバーンは嘲笑し、ライナーは焦りを浮かべる。
細剣を構えたベアトリクスの顔に動揺の色が浮かぶ。
「ようやく気付いたようだな」
黒ずくめの男が仮面の奥で笑った。
「まずい、まずい、このままだと」
「だがもう遅い」
黒ずくめの剣が、ベアトリクスに振り下ろされる。
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魔力の込められたその剣を、魔力を封じられた彼女に防ぐすべはない。
ライナーはイーバーンを蹴飛ばし駆けた。
「……ッ!」
やめろ、それは違う。
脳の処理能力が加速し、世界の動きが緩やかになる。
その瞬間、ライナーの心にあったのは果てしない焦燥と怒りだった。
「……ぁぁぁぁッ!」
このままだと、彼女がテロリストに殺される犠牲者一号になる。
あってはならないことだ。
それは絶対に許せないことなのだ。
「ぁぁぁぁぁあああああああああああッ!!」
テロリストにクラスで最初に殺されるのはいつだって。
「やめろおおおお!!」
魂の咆哮と共に、ライナーは二人の間に割り込んだ。
迫りくる白刃を見据えながら、ベアトリクスは己の死を予感した。
魔力の練れないひ弱な肉体では、防ぐことも避けることも敵わない。
少しでも傷を浅くしようと上体を反らせるが、その動きすら緩慢でもどかしい。
間に合わない。
ただ現実として、死がそこにあった。
直後、横から来た何かにベアトリクスは突き飛ばされた。
「きゃッ……!」
咄嗟に受け身をとって床を転がる。
そして起き上がったベアトリクスの視線の先に、衝撃の光景が広がっていた。
「そんなッ……」
そこに……血塗れの黒尽くめの男が帯びただしい血を吹き出しながら立っていた。
床に流れ出した血は、その染みをみるみる広げていく。
致命傷だった。
『キャアアアアァァァァァァァァ!!』
誰かの悲鳴がクラスに響いた。
ベアトリクスは血で汚れるのも構わず、ライナーの身体を支えた。
「ライナー……貴方はテロリストの筈」
ベアトリクスの呟きに、ライナーは薄っすらと瞳を開けた。
「バカ。なぜ私をかばったりしたの……?」
命を懸けてまで助けられる理由なんてないはずだった。
ライナーは口を開き何かを言おうとし、
「ゲホッ、ゴホッ!」
大量の血を吐いた。
「ライナーッ!」
ベアトリクスの白い頬に少年の吐血がかかる。
シャドウは血濡れの顔で微笑み、そのまま窓の方へ歩く。
「我らアンダージャスティスは無辜の民を傷つけたりはしない。我らが狙うのは悪だけだ」
そう言ってライナーは窓から飛び降りて姿を消した。
ローズの頬に一筋の涙が流れた。
「ありがとう……」
彼の犠牲は絶対に無駄にしないと誓った。
「いい見せしめになったな、貴様も死ぬか? 光の帝国の尖兵よ」
「お前達程度に私がやられるとでも……舐めるなよ。っと、撤退? 私一人でも殲滅っ、わかりました。従います」
イーバーンは霊子兵装を消す。
「運が良かったな」
そう言ってイーバーンは飛廉脚で姿を消した。
黒ずくめの男がベアトリクスの前に立った。
「……ッ!」
ローズは唇を噛んで男を睨み上げた。
「まだ歯向かう気か?」
「くッ……従います」
ベアトリクスは顔を伏せた。彼の想いを無駄にしないと誓ったのだ。
今はまだ、その時じゃない。
「ふん。今から大講堂に移動する!」
黒ずくめの男たちが動き出す。
彼らは生徒を立たせ、結束具で後ろ手に拘束し、続々と連れ出していく。
反抗する者はもう誰もいなかった。