私はそのまま早退した。弁当は中身を全部トイレに流した。弁当箱は適当に袋に詰め直して鞄にぶち込んだ。私はこれから不登校になるのだろう。嫌だけど、本当はなりたくないけど、学校生活を送り続けることにもう限界を感じた。机の中の荷物とか教科書とか、持って帰れるものを全部持って家に向かった。
家に帰ってまずすることは弁当をキッチンに出すことだ。私は洗い物とかよく分からないし下手くそだからこういうのは出してさえいればお兄がしてくれる。そのまま鞄もリビングに置いて、スマホと筆箱だけ持って部屋に入った。
私の部屋は自分で言うのもあれだが結構散らかっている。部活に入ってない分暇な放課後は、ずっと絵を描いている。その失敗作とか絵の具とかペンが床に散らばってるから、絵を描かないときは唯一寝れるベットでくつろぐ。
でも今日は違う。絵を描く余裕もないし寝れる気もしない。スマホも触る気力がない。やってしまったと思う。私はまだ高1だ。頭の良くない私は中3で必死に勉強してやっとの思いで受かった高校だった。でもそれを一瞬で無駄にしてしまった。悔しくてまた泣いてしまう。今はひたすらに体が思い。何も考えたくない。ずっと目を閉じていたい。そんなことを思いつつそのまま寝てしまった。
コンコンッ
「えみー、入っていい?」
その声とノックの音で私は起きた。お兄だ。今は8時ぐらい。多分部活が終わって帰ってきてすぐってところだろう。
「んー。いいよ。」
お兄がぷっつんプリンと持ち手がネコ型のスプーンを持って入ってくる。プリンは私の好物だ。それを受け取ってゆっくり食べる。
「今日、なんかあった?」
お兄が床にしゃがみ込んでからベットに座っている私に聞く。普段こう言うこと聞いてこないからなんでこのタイミングで、と思う。
「さっきお弁当洗ってて。いつもは綺麗に食べてくれるのに今日はご飯粒たくさんあった。」
続けてお兄は言う。…そんなことで?そんなちっぽけなことで私が落ち込んでることがわかったの?なんか、大事にされてるなって思えて胸が熱くなる。
「…お兄、あの、私ね。」
「うん。」
「…、もう、学校行きたくないや。」
「…そっか。わかった。その…理由とか…教えてくれない?」
言いたい。私が入学してからずっとクラスメイトの嫌がらせに耐えてたこと。今日自分の悪口を初めて生で聞いて震えが止まらなくなってしまったこと。全部言って慰めてほしい。辛かったねって言って優しくしてほしい。でも、心配はして欲しくない。きっとすぐ学校に通えるようになれるはずだから。わざわざ心配して欲しくない。
「なんでもないけど…ちょっと、ちょっとだけね?クラスにいるのが辛くなっちゃった。」
「そっか。んじゃ、僕ちょっとご飯作ってくるから。お風呂入ってきー。なにも心配しなくていいからね。」
そう言って私の頭を少し撫でて部屋から出て行こうとした。
「あ、あと。」
ドアにかけた手を離してこっちを向く。
「よく頑張ったね。」
お兄が見たことないくらいの優しい顔で私を見て言った。その言葉で今持ってたモヤモヤした気持ちとか、そういうのが全部なくなった気がする。やっぱお兄はすごい。たった一言で焦って苦しかった気持ちを一瞬で無くしてしまう。
そのあと私は言われた通りお風呂に入って、お兄が作ってくれたクリームシチューを食べた。何気に2人で一緒にゆっくりこういうご飯を食べるのは久々で、少し楽しかった。
寝る時、一緒にリビングで寝ないかと言われてそうすることにした。お兄も私もお笑いが大好きなので年末に録画したおもしろ家を見ながらソファーで寝た。明日はもう学校に行かなくていい。そう思うと気が楽になって気持ちよく寝れた。
昨日こんなことがあったから、いつもは起こしてくれるお兄も今日は何も言わずに学校に行ったみたい。前にあるテーブルに朝ごはんとメモが置いてある。いざ学校を休むとなると意外とすることがない。特に趣味がある訳じゃないし。とりあえずテレビをつけてヒルザマスを見る。そのまま時間はダラダラと過ぎていく。
気がつけば5時。インスタとかのリールを見てたりすると時間ってあっという間だ。今日ぐらいなにかご飯を作ってみようかな。何がいいんだろ。
お兄の好物はイカ。特にアタリメ。イカが入った晩御飯ってなんだよ。イカリングぐらいしか出てこないって。あ、イカとタコって食感似てるよね。…あれ作ってみようかな。
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