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『余命』
私の人生には
膨大な時間だけが
命だけが残されている
私は罪を犯した
私は私というものを知らなかった
私自身に対して無知であるということは
私自身の傲慢さや
醜悪さ
愚劣さ
その他の汚らしい面においても無知であったということだ
私は失敗を選び続けた
私の前には多くの道があった
私は選ぶことができた
それなのに私は失敗を選び続けた
私は努力をしなかったからだ
私は何もしなかったからだ
できなかったのではない、しなかったのだ
私は正常だ
私はまともだ
だから私には狂える理由が無いのだ
誰が味覚から得られる情報の種類に「味」なんて名前をつけようと言ったのだ
誰が視覚から得られる情報の種類に「色」なんて名前をつけようと言ったのだ
誰が私と世界とを分断しようなどと企んでいるのだ
ああ違う、誰もそんなことは企んでいない
私が水に馴染めないだけなのだ
私は囚われている
私の人生には
命だけが残されている
(了)
コメント
1件
読了しました……重かったです。 「私の人生には命だけが残されている」の反復が、生きてることそのものが罰みたいで胸が締め付けられました。 「できなかったのではない、しなかったのだ」っていう自己責め、めちゃくちゃ刺さります。 短いのに濃密な苦しみが詰まってて、何度も反芻したくなるお話でした。 素敵な作品をありがとうございます。