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「……ッ、うっ」
鷹夜様に頭を抱き抱えられ、逃げられない。
今までされたことがない深い口付けに、触れた唇と唇がこのまま一つになってしまうのかと、思った|刹那《せつな》に唇は離れた。
唇に熱の余韻が冷めない前にがしっと鷹夜様に、両手で頬を掴まれた。鷹夜様の真剣な眼差しが私の心を貫く。
「環、何度でも言う。俺は絶対に環を離さない。環の前世が何者でも、俺の気持ちは変わらない」
「──!」
鷹夜様の言葉に驚く暇もなく、また涙があふれ出し。
ずんっ──と地中奥深くから揺れるような地震が来た!
私が驚くと鷹夜様はすぐさま私の頭を庇い、ぐっとその胸に私を引き寄せ、両腕で私の体ごと包み込んでくれた。
大地がグラグラと揺れて、近くで窓が震える。
遠くで驚きの声が上がり、木々が揺れてバサバサと鳥達が羽ばたく音がした。
大地の揺れはすぐに止まったが、胸がドキドキして痛いほどの不安感を覚えた。
直感が叫ぶ。
これは土蜘蛛だと!
けれども私の心と体の全ては、目の前の鷹夜様のことで埋め尽くされていた。
そのまま私の不安を打ち消すかのように、鷹夜様の優しい声が|耳朶《じだ》を打った。
「嫌な地震だったな。環、大丈夫か?」
こくこくと頷くと私の体から鷹夜様の腕がゆっくりと、離れて行った。
鷹夜様は深く呼吸したあと微笑した。
「俺は環の告白は信じる。そうか、だから環は最初に『殺さないで』と俺に言ったのか。そして帝も……」
鷹夜様が小さくふっと、苦笑する声がした。
帝とは一体なんのことだろうと思った。けど、それよりも今、鷹夜様の前世のことも言ってしまおうかと思った。
しかし──それは余計なことだろうと口を閉じた。
鷹夜様の顔はどこかスッキリしていた。
それからまだ何も言えないでいる私の手を取って、爪が割れた指先に白いハンカチをきゅっと巻いてくれた。
「環の秘密を教えてくれてありがとう。俺は環の前世がなんでもいい。九尾が前世。それがどうした。俺が好きになったのは今の環だ」
「──……!」
「悩ましい思いをしていたのは理解した。それでも、どこにも行くことは許さない。俺が絶対に許さない」
優しく微笑み、そっと立ち上がる鷹夜様。
そのまま私の手も引いて立ち上がらせてくれた。
「っ、……うぅ」
「俺は環の前世ごと、全てが愛しい」
その言葉に全身全霊で縋りたくなった。
でも、足元から感じる強烈な土蜘蛛の存在に、体が強張る。涙が止まらなかった。
「私も、鷹夜様が好きです。大好き。だから、私は行かなくちゃ。土蜘蛛が──動き出したからっ」
「土蜘蛛が?」
鷹夜様の眉がぴくりと動いた。
「私、なんとなくですが土蜘蛛の動きがわかるのです。さっきの地震は土蜘蛛が蠢く音。きっともうすぐ、帝都に来てしまう!」
「分かった。その言葉も信じよう。では、すぐに環は|皇宮《こうきゅう》に避難をするんだ」
鷹夜様の手が私へと伸びる。
再び手首を掴まれそうになる前に、さっと身を引いた。そして両腕を胸の前へと重ねる。
「だめっ。私は守られていい存在じゃない。私は……土蜘蛛と行きます。実は前に土蜘蛛は私に『いこう』って言われていて……っ」
私の告白に鷹夜様もさすがに、驚きの顔を見せて今度は動きが止まった。
「黙っていて、本当にごめんなさい! そのかわりに今から私は土蜘蛛のところに向かい──誰も傷付けないで欲しいと、お願いをします」
「!」
鷹夜様の瞳がかっと見開いた瞬間に「杜若様っ! 土蜘蛛が出現しましたっ!」と言う声があたりに響き渡った。
その声と内容に驚き、私も鷹夜様も声がした方を見ると石蕗様と葵様がいた。