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半ば諦めていると、やっと、家に着いた。
車から降りると、津炎が薄っすらと目を開ける。
「ん?おはよう」
俺の腕の中で眠っていた津炎に声を掛けると、津炎の顔はみるみると青ざめた。そりゃまぁ、目の前に敵国のドールがいるならそうなるのも当然。だと思う。だが、正直ちょっと悲しい気がする。
「おはようございます。申し訳、ございません」
青ざめた顔のまま津炎が挨拶を返してくれたと思えば、なぜか謝られた。
正直理由は分からないが、これは深掘りしない方が良い。と俺の本能が言った。
俺は津炎に何も言わなかったし、何もしなかった。
ただ黙って、津炎を捕虜の部屋になった空き部屋に連れて行くしかなかった。俺には、兄さんみたいに誰かを元気付ける事は苦手だから。
空き部屋に向かっている時、津炎は何も言わなかった。俺も、何も言わなかった。何か言おうとも思わなかった。
相変わらずこの家には冷たい空気が流れている。
兄さんの居た時は、これほどまでには寒くなかった。
炎露の能力のせいでもあるんだろうが、あの頃のような笑顔も、活気も何もないから。それが原因のはずだ。炎露が全面的に悪い事は絶対に無いだろうから。
家の廊下を歩いていると、津炎が恐る恐るといったように、ある部屋を指さして不思議そうに、俺に問うてきた。
「あの部屋のドア…、何があったんですか……?」
その言葉の端々から、不安や疑問、そして少しばかりの躊躇が伺える。