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「あの部屋のドア…、何があったんですか……?」
その言葉の端々から、不安や疑問、そして少しばかりの躊躇が伺える。
そのドアは、炎露の部屋のドアだった。
炎露がどんなに無視しようが、俺が毎食朝昼晩、食事を持って向かっているドア。
酷く冷たい氷に覆われ、触る事も難しい程だ。
ドアの上辺りには氷柱ができている。まるで、炎露が俺の事を、周りの人全員を遠ざけて、警戒して、恐れている。そんなふうに感じれる物だ。
だが、そんな事情を津炎に説明できる訳もなく、俺はしばらく黙った後に「気にするな」と、できるだけ、俺にできる精一杯の優しい笑顔で津炎に言うしか無かった。
津炎も、それ以上は何も聞かなかった。
炎露の部屋のドアを覆う酷く冷たい氷が、いつか溶け出して、炎露を解放してくれればいいんだがな。
誰か、炎露の心の氷を溶かしてくれる者は居ないものか……。
俺が、何を言ったってきっと、炎露の心は動かない。
現状、俺は毎日炎露に話しかけているが、返事が返ってくる事は無い。
俺の言葉は、炎露の氷を溶かしてはくれない。溶かせない。だから、誰か、第三者が、炎露の氷を溶かしてくれる灯火のようなやつ必要なんだ…。
そんな事を思考していると、捕虜の部屋に着いた。
何か企まれては危険だ。という事で、津炎とナチスは別室だ。
「この部屋に居てくれ」
津炎が部屋に入ったのを目視すると、俺はそう一言言って、鍵を閉めた。
主に津炎を部屋に連れて行った事を報告した後、俺は日課になった炎露への食事を運ぶ。
炎露、朝食は食べてくれなかったから、昼飯ぐらいは食ってくれるだろうか…。
そんな少しばかりの不安を抱えつつも、きっと炎露なら立ち直ってくれる。そう信じて、また俺は炎露の部屋の前に行く。