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「愛することによって失うものは何もない。
しかし、愛することを怖がっていたら、何も得られない。」
-バーバラ・デ・アンジェリス
高校3年生になってから2ヶ月が経った。始業式が始まってやることと言ったら、進路、勉強、部活。同じ作業をずっと繰り返す。けれどそんなある日、いつもの日常の中でただ何となく見た友の泣き顔を見た瞬間、世界が変わった気がした。気のせいだったとしてもそんなの今になってはどうでもいい。その気持ちを仮に例えるなら、透明で何もなかった水に鮮やかで見ていて魅了される色彩の物体が投下されたような気持ちだった。
「クソ暑い」
「湿気で髪がうねる〜…」
6月中旬。雨天の割合が増え、日光が照っていないにもかかわらず湿気による熱の逃がし難い天気に見舞われ、ほとんどの学生の気分が右肩下がりになっているだろう。癖っ毛である莞爾はこの時期ばかりは常に出るニコニコとした笑顔も不発に終わることが多い。
「汗で根本から髪型が崩れるのが最悪だ!梅雨死ねっ!」
「やぁめなって、怒ると余計酷くなるぞ」
「お前はどうせその櫛しか通してないような頭でうねったってしょーがねぇんだよ、問題はこの1時間以上かけた俺のスタイリングがぶっ壊されることに問題があんだよ!」
「別に俺は今の京蔵の髪型でもす…」
…いつも褒めの言葉として使っていた「好き」が言えない
likeの方ってことは言わずとも伝わってるとわかってても、意識してるだけでここまでドキドキするのか…?仮に行ったとしても俺だけがどきまぎするだけで京蔵は髪型に意識持ってかれてて、俺の発言全く気に留めてないから言ってもいいのでは?あと普通に好きって言ってみたいかも
「はあぁ〜ぁ…しばらく編み込みやめて高めに結ぶか。」
…考えすぎた、今になってその髪型でも好きだよとか言えないな…
高く結んでる京蔵も見てみたい、絶対に似合うだろうなぁ。
「はぁ⁈雨降んのかよっザッけんな!」
スマホを見ている京蔵が嘆く。
「……そこまで怒り限界突破しなくてもいいだろ?な、」
「あぁーったく傘持ってきてねぇよ…んどくせぇ。」
「…傘ないの?」
授業終わりの枯れ果てた脳が一気に覚める。好きな人と同じ傘で帰る、小さい頃に何度も耳にした世の女児が憧れる典型的な行為。自分の中でもおとぎ話くらいにしか思わなかったことに、俺の今後を委ねるときが来るとは思わなかった。
さっきは逃した近づく機会、これだけは逃してはならないっ。
「お……俺の傘…入る?」
「………男同士の相合傘なんて見れたもんじゃねぇが、今日に限ってはこれ以上髪崩したらたまったもんじゃねぇからな。…入るよ」
脈拍が高まっていく。嬉しい、嬉しい。ただ自分がこれ以上なく喜んでいることがよくわかる。…京蔵は嫌そうだけど、今は俺の幸せな気持ちの方が頭をずっと巡り続けている。ぎくしゃくとした流れの中2人は校門へとゆっくり足を運び始めた。