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小さなポシェットをぶら下げているだけの直美さんと、大荷物の中西さん。
重い保冷バッグを持つ私と、飲み物とカメラを持ち、足取りの軽い夫。
4人で小学校のグランドに着くと
「こっちに場所取ってあるから」
と夫が先頭に立った。
「えっ?場所取り?」
驚く直美さんと、眉間にシワを寄せた中西さんに
「一度ここまで来て、いい場所取ってあるんで。競技を見るには座ってなんかいられないけど、ここ、ここ。ここが体育館で陰が出来るから、荷物を置いておくのも、お弁当を食べるのもいいんですよ」
朝シートを広げた場所へ、夫は私たちを案内した。
「知りませんでした……一緒にいいんですか?」
「どうぞ。亜優ちゃんも、みんなで座れるくらいのシートにしてあるから。中西さん、荷物を降ろして」
「……ありがとうございます」
中西さんはゆっくりと重そうな荷物をシートに降ろすと
「直美、何か飲むか?」
直美さんを見上げる。
「ううん、大丈夫。ありがと」
「さあ、全校生徒が一斉に準備体操するところからだね。千愛も亜優ちゃんも1組で赤組だから、あっちに並ぶ。行こう」
準備体操から撮る気満々の夫は、大きなカメラを手に小走りに移動を始める。
「すごい……そんな場所、亜優に聞いてなかった……」
「一年生はそんなものよね。少し移動しましょう」
「はい!」
さすがにグランドでは日傘を使わないのだろう。
直美さんが荷物と一緒に、畳んだ日傘を置いていたのだけれど、移動を始めた中西さんの手には日傘があった。
そして、日の当たる場所から
「あ、来た、来た。みんな並ぶと一年生……ちっさ」
「5年後にはあんなに大きいってことよね」
「ほんと。まだ5月だから余計に幼稚園感があって、小さく見える。あ、千愛ちゃん」
直美さんと一緒に生徒の入場を見ていると、スッと陰が出来た。
何……?
上を見ると、そこには後ろから日傘が差し出されている。
中西さん……直美さんのマネージャーみたいだわ。
……徹底的に尽くすタイプなのね……
そう思いながら、きょろきょろっとすると……グランドに膝をついて、カメラを構える夫を見つけた。