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藤澤 涼架 (女) 高校2
・身長低い、涙もろい
・上手く断れない性格で、いじめっ子たちにパシリにされてしまう。
・コンプレックスをいじられても、笑って受け流すことで自分を守っている。
若井 滉斗 (男) 高校2
・軽音部に所属するギタリスト
・学校では明るく社交的で人気者だが、実は人一倍、他人の痛みに敏感で周りの空気を読もうと無理をしている
[偶然の出会いと偽りの笑顔]
涼架side
春風が心地よい、放課の校舎。
私は今日も、クラスの女子グループから逃れるように一人、購買部へと急いだ。
私は、身長が低いことを笑い飛ばされても、ドジな失敗をからかわれてもいつも
「あはは!私って本当おっちょこちょいだから!」
と明るく笑って受け流して来た。
それが、私が自分を守るための、唯一の術だった。
「ねぇ、涼架今日、新作のジュースが出たんだって。全部買って来てよ。売り切れる前に」
グループの一人が、まるで当たり前のように私に命令する
私は心の中で重い溜息をつきながらも、満面の笑みで応じた
「分かった!任せて!」
その笑顔が完璧すぎて、誰にも彼女の痛みを気づかせなかった
重い買い物袋を抱え、急いで教室に戻るため
私は人通りの少ない裏口の廊下を走った
その角を曲がった瞬間、勢いよく駆け出して来た誰かと激しくぶつかってしまった
「うわっ!」
私が持っていた買い物袋が裂けて、ジュースが
廊下に散乱した
ぶつかった相手の白いシャツにも、ジュースのシミが広がる
:「ごめん!大丈夫?」
慌てて顔を上げると、そこに立っていたのは
軽音部のギタリストとして有名な若井君だった
私は、ただただ謝罪の言葉を繰り返した
「すいません!私の不注意で…!」
彼はいつもの明るい笑顔を消して、心配そうに私を見つめている
私は、その目に引き込まれそうになった
その時、廊下の向こうからいじめっ子の一人が私を呼ぶ声が響いて、 一瞬で現実に引き戻された
「ねぇ、何やってんの?早く戻って来てよ!
チビ!」
若井君の目が一瞬、鋭くなる
私は、反射的にその言葉に反応し、いつもの愛想笑いを浮かべた
「はは、お待たせ!すぐ行くね!」
そう言って、私はそそくさとその場を立ち去ってしまった。
彼は、涼架が去り際にちらりと見せた、一瞬の悲しげな表情とその目に浮かぶ涙を見逃さなかった。
彼は、その完璧な笑顔の裏に隠された、涼架の本当の心を知りたいと強く願うのだった
放課後、私は教室を戻る途中で、さっきぶつかってしまった若井君のことがずっと気になっていた
彼の心配そうな顔、そして自分の不注意で汚してしまった白いシャツ。
そして何より、慌てて逃げるように立ち去ってしまった自分の姿が、胸の中でずっとチクチク刺さっていた。
「ちゃんとお礼と謝罪しなきゃ…」
そう決意した私は、いじめっ子たちから渡された課題を片付けた後、意を消して軽音部の部室へ向かった
部室からは、若井君の弾くギターの音が鳴り響いて来た。
恐る恐る部室の部屋のドアをノックすると
中から**「はーい!」**という若井君の優しい声が聞こえてきた
ドアを開けると、彼はギターを膝に置いて座り、目を丸くして私を見ていた。
「さっきは、本当にごめんなさい!」
私は、頭を下げながらそう言った。
「急いでて、ちゃんと謝れてなくて…それに、
シャツまで汚しちゃって。本当ごめんなさい。
クリーニング、ちゃんとしてきますから…!」
私は、ポケットから取り出したクリーニング店のリボンを若井君の前に差し出した
しかし、若井君はそれを受け取ろうとしなかった
「大丈夫だよ、気にしないで。 俺も不注意だったし。それより、怪我なかった?」
若井君の優しい言葉に、私の心臓がどきりと跳ねた
私は、いじめっ子から『チビ!』といじられた時もいつも愛想笑いでやり過ごしてきた
誰も私の心の傷に気づくことはなかった…
でも若井君は、私の体に傷がないか、本当に心配そうに尋ねてくれた。
「あの…」
私が何か言おうとすると、若井君が立ち上がって、ギターを背負った
「今日はもう帰るから。じゃあね!」
「気をつけて帰ってね」
そう言って、彼は部室から出て行ってしまった
私は若井君の後ろ姿をぼんやりと見つめながら、彼の優しい声が自分の心を温めてるのを感じた
「若井君って、本当に優しい人だな…」
そう呟きながら、私はまだ手の中に握りしめているクリーニング店のリボンをじっと見つめていた。
次回予告
[笑顔の裏に隠された真実]
コメント
4件
今日中に続き出せませんか?出来ればお願いします(_ _)
涼ちゃんが優しすぎる😭 続きが楽しみです☺️💕