テラーノベル
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陽雅さんは俺の頭から手を離し、目を見る。
「パンツとズボン履いたら机の前座ってくれる?」
「分かりました」
陽雅さんは立ち上がると、どこかへ歩いていく。
俺はパンツとズボンを履いた後、机の前に座った。
そんな俺の元へ陽雅さんが来て、紙とペンを渡してくる。
「これ、書いて」
紙とペンを受け取ると、その紙には”契約書”と書かれており、氏名や住所を書く欄があった。
「契約書ですか?」
「うん。これからもあお…きょうやくんがここに来るなら、これを書いて欲しい」
契約書。こんな物を書くのか。
これを書いたら、もう後戻りは出来ない。
契約書を持つ手が少し震える。
でも、俺はもう答えが決まっていた。
「分かりました。書きます」
「じゃあ、書けたらまた教えて」
陽雅さんはニコッと笑った後、俺の向かいに座る。
契約書を書き始め、氏名と生年月日、住所を書く。
その下には、”支払い方法”と書かれており、”現金・体・両方”の三つの選択肢があった。
両方ってなんだろう。
俺は向かいでスマホをいじっている陽雅さんに問う。
「陽雅さん。この両方ってなんですか?」
「その時によって現金か体か選べるの。迷うならそれにしたらいいかもね」
なるほど。そういう事か。じゃあ、これにしとこうかな。
俺は”両方”に丸をつける。
そして最後には文章が書いてある。
“支払いは当日にする事。現金を選択した上で現金で支払えなかった場合は体で払ってもらいます。上記の内容を理解したら右下に拇印をお願いします”
「拇印…」
そう呟くと、陽雅さんは立ち上がり、棚の引き出しから何かを持ってくる。
「はい。朱肉。押せたらこれで指拭きな」
陽雅さんは朱肉と1枚のウェットティッシュを差し出す。
「ありがとうございます」
俺はその二つを受け取り、拇印を押した。
そして、インクの付いた親指をウェットティッシュで拭う。
「出来ました」
契約書を渡すと、陽雅さんは受け取り、目を通す。
「蒼井恭也…もしかして”あお”って”蒼井”から取ったの?」
「はい。そうです」
「へぇ〜。可愛い事するね」
「か、かわ…?」
何が可愛いんだ。別に何も可愛くないのに。
「恭也くん、二十歳なんだ。若いね」
「陽雅さんはお幾つなんですか?」
「俺は二十六。歳上過ぎ?」
「いや。そんな事ないです」
だって正直、歳とかどうでもいいくらいかっこいいから。
「よかった」
陽雅さんは俺に微笑んだ後、再び契約書に視線を戻す。
「支払い方法、両方にしたんだね。てっきり現金一択だと思ってた」
「いや、お金はあんまりなくて。なので今日もその…体…で払います」
自分の口で言うのはなんだか恥ずかしく、体がボワッと熱くなる。
「体で…」
陽雅さんはそこで口を噤み、立ち上がって俺に寄る。
そして、しゃがんで俺と目を合わせた。
「じゃあ、早速払ってもらおうかな」
「えっと…俺は何をすればいいですかね?」
「裸になってベットに寝転がってくれればいいよ。後は俺に抱かれるだけ」
抱かれる…か。まぁ、そうなるよね。
覚悟は出来てるつもりだったけど、やっぱり少し怖い。
「…分かりました」
.✴︎ 凛緒@ペア画中
50
ちぃ✩.*˚
303
陽雅さんが立ち上がり、服を脱ぎ始める。そんな陽雅さんを見て、俺も立ち上がり、服を脱ぎ始めた。
陽雅さんの体は、爽やかな見た目に反してガタイが良く、今からこの身体で抱かれると思うと、少し怖いと思ってしまった。
ズボンに掛けていた手がピタリと止まる。
これから自分のする事が怖くて、体が動かない。
そんな俺に気付いたのか、スボンを脱いでいた陽雅さんが心配そうに言う。
「恭也くん、大丈夫?」
「すみません。ちょっと怖くて…」
俯く俺に陽雅さんは近寄り、耳元で言う。
《大丈夫。何も怖くないよ》
その言葉を聞いた瞬間、さっきまであった恐怖心がスっと消える。
あれ。怖くない。大丈夫だ。何も怖くない。
「…俺、大丈夫みたいです」
「そう。よかった」
陽雅さんがパンツを下ろし、陽雅さんのものが顕になる。
俺のより全然大きいな…。
そう思いながらもズボンを脱ぐ。そして、パンツを脱ぐと、ベットの上に座っていた陽雅さんが言う。
「こっちおいで」
陽雅さんの方へ行き、陽雅さんの前に座る。
「恭也くんってほんと素直だよね」
「別に…呼ばれたから来ただけですけど」
俺のその言葉に陽雅さんはフフッと笑う。
「そうだね」
陽雅さんは俺の胸に手を当てて押す。
その反動で体が後ろに倒れる。
そんな俺の上に陽雅さんが跨った。
そして、陽雅さんの唇が俺の唇に触れる。
俺の初キス。恋人でも、好きな人でもない人にされてしまった。でもなんだか不思議と、嫌な気はしなかった。
何度か唇が触れた後、陽雅さんの舌が口の中に侵入する。
「んっ…」
何だこれ。なんか、凄く気持ちいい。
「んっ…」
ディープキスって、こんなに気持ちいいのか。
息が上手くできない。それなのに、頭がふわふわしてなんだか気持ちいい。
しばらく続けた後、俺の口から陽雅さんの口が離れる。
陽雅さんは俺の顔を見て、ニヤッと笑う。
「恭也くん、すごい目とろけてる。俺のキス、そんなに良かった?」
「わかんないです…けど…なんか、気持ち良くて…」
「恭也くん、もしかしてこういうキス初めて?」
「はい。ていうかその…キスも初めてで…」
陽雅さんは驚いた顔をして言う。
「ウソ。じゃあ俺が初めてなんだ」
「まぁ…はい」
「セックスも俺が初めてって事だよね。恭也くんの初めては全部俺が貰えるんだね」
陽雅さんはニコッと笑い、俺を見つめる。
何故だろう。全然嫌な気がしない。
むしろ、嬉しい…気がする。
(なんで嬉しいんだ…?)
俺はただ、陽雅さんを見つめていた。
そんな俺に、陽雅さんが言う。
「ごめんね。こんな事言って。嫌だよね」
「いや…別に…嫌じゃない…です」
陽雅さんは俺を見つめたまま、何も言わない。
そんなに見られると、さすがに恥ずかしい。
そう思っていると、陽雅さんの目が鋭く変わる。
「…ごめん。恭也くん。俺、恭也くんの事気にいっちゃったかも」
コメント
1件
うわ、第4話読み終わりました…!陽雅さんの「気にいっちゃったかも」からの流れ、すごく心に残りました。恭也くんが「嫌じゃない」って素直に言えたの、彼のなかで確かに何かが変わってきてるんだなって感じさせますね。契約書の「両方」に丸をつけたのも、もう後戻りできない場所に行く覚悟を自分で選んだみたいで、読んでるこっちまでドキドキしました。次がすごく気になります…!