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#独占欲
#ダークファンタジー
その日
私は病欠した
再度詳しく検診を受ける為に
そして
DNA検査の申込みをする為に
勿論
夫へは何も告げずに
会社と伊藤さんへのみ連絡を入れた
昨日の体調不良と早退もあり
伊藤さんは私を気遣い
快く私の不在を受け入れてくれた
昨日までの業務状況の確認を行い
本日以降の最低限の指示を出す
夫へは言えない
自宅でこんなやり取りを出来るわけもなく
駅近くのカフェからの連絡だった
予約時間までの間
妊娠に関してあれこれ調べる
多少なりとも自身の体を気遣い
申し訳程度にデカフェを飲みながら
これまで
妊娠など他人事
ましてや
夫婦仲は冷え切っていて営みも無かった
女性でありながら
たいして調べた事も無く
たいした知識も持ち合わせていなかった
昨日予約したのは
妊娠検査を行った先日の病院とは異なる総合病院
遺伝専門機関と提携している病院
DNA検査を行う必要がある為
民間の小さな産婦人科では難しかった
私にとって
全てが初めての事
何も知らない
何も経験がない
多種多様な項目と
多種多様な条件に戸惑いながら
昨日やっとの事で選定した病院
煩雑な手続きを何とか済ませ
予約までかこつけた
だが
調べる限り
煩雑な手続きとは裏腹に
DNA検査自体はシンプルだった
母体の血液採取と
相手の核DNA源が揃えば検査出来る
多忙なリュカを鑑みて
同行は頼まずに
代替サンプル郵送での手続きを選んだ
口腔内粘膜や唾液の採取キットを
リュカへ郵送してもらい
リュカの同意確認と共に
リュカにDNAサンプルを郵送で提出して貰う運びになる
リュカは
心配そうな声色で私を気遣いながらも
私の依頼を快諾してくれた
妊娠は
分からない事だらけだった
分からない事だらけが故に
妊娠の事で頭が一杯になる
他にも大事な事が沢山あったはず
でも
そんな事は全て二の次
妊娠の事で頭が一杯になる
自身の体に起こる
差し迫った
時限装置付きの
重大な変化
自身だけの問題でもない
相手も
周りも
多くを巻き込み
全てが
自身の体に宿る
新しい生命のために優先される
駅近くのカフェで
時間調整を行い
時間を見計らって
予約した病院へと向かった
***
病院内には多くの人
まるで
デパートの様に人が溢れている
こんな規模の病院に来たのは初めてだ
初回検診の私には
煩雑な手続きが求められた
持参した必要書類を提示し
初回登録をようやく終え
案内された先にある産婦人科
その周辺の長椅子には
妊婦の姿が目立った
自然とその姿に目が行く
そして
その光景を
自分に重ね合わせ
様々な感情が
沸き上がり渦巻いた
(私もこうやって生まれてきたんだ……)
(母親にもこんな時期があったんだろうか……)
(……想像がつかない)
(母は私を身籠った時、どんな想いだったのだろう)
体調がすぐれなそうな表情だが
皆一様にどこか幸せで
まるで光に満ちた様な
清々しく
はつらつとした表情に見えた
そこに
病院に付きまとうネガティブなイメージは無く
新たな生命が芽吹く
希望に満ち溢れている様に感じた
妊婦に囲まれた初めての環境は
今まで経験のない
今まで考えもしなかった
天使に囲まれた天界の様だった
私も
そちら側になれるのだろうか
私は
そちら側に行けるのだろうか
ボーっと付近の妊婦を眺めながら
物思いに耽る
「水川さん、水川瑠奈さんいらっしゃいますか?」
看護婦さんに名前を呼ばれ
ハッと我に返る
「は、はい」
慌てて立ち上がり
看護婦さんについて診察室へ向かう
実質的に初回検診
妊娠の確認を行った前の病院よりも
多くの検査項目をこなした
それは
思った以上に時間を要した
多くの検査項目に疲弊し
病院特有の丸椅子に座り
検診結果を待つ
やがて医師の先生が戻り
対面での問診が始まった
「えーっと……別の所で一度検査されたんですよね?」
「はい。その時は妊娠の確認が目的でした」
「DNA検査も行いたいので、今後はこちらでお世話になる事にしました」
「なるほど……分かりました」
検査結果を見ながら
私の状態を見極めているのだろうか
先生の目が
視線の先の紙面上を左右に行き来し
先生は
しばし食い入るように紙面を見つめ
ようやく目線を私に向け
口を開く
「双胎、双子ですね」
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