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「双子ですね」
(——!?)
青天の霹靂だった
予想だにしていなかった
あまりの衝撃に
頭も
口も
固まり
思考が回らず声にならない
「……うん、ですね。間違いなく双胎です」
「前の所では言われませんでしたか?」
双子だからといって
妊娠には変わりない
しかし
予想だにしていなかった
妊娠でさえ一大事なのに
初めての妊娠で
二人を出産する
初めての出産で
二人の子の面倒を見る事になる
ただでさえ
自分一人の面倒さえままならない私が
二人の子の親になる——
途端に不安とネガティブな思考が押し寄せる
私は
大丈夫だろうか
私は
どうなってしまうのだろうか
私は
本当に親として務まるのだろうか
「——さん、水川さん!」
「……え?」
自分の殻に閉じこもり
ボーっとしてしまっていた
「大丈夫ですか?」
「少し驚かれてしまいましたかね」
「心配ありませんよ、双胎でもさして変わりはありませんから」
「観察頻度と評価項目が多少増えますが……」
「それと……リスクはどうしても高まるので、十分気遣いながら労わっていきましょう」
——双子
そのあまりの衝撃に
先生との問診も話半分だった
現状の状態
今後の話
体調の変化
初期症状
生活習慣
食生活
などなど……
たぶん
そんな話をされた気がする
多岐にわたり
長時間にわたって
正直
時間の感覚が曖昧で
よく覚えていない
何はともあれ
検査と問診を終え
DNA検査も申し込んだ
リュカ宛にDNAサンプル採取キットを送付してもらい
リュカから専門機関へ郵送して貰う
私は未だDNA検査に適した
十分な妊娠週に至っておらず
しばし時間をおいての検査となった
加えて
双方の遺伝情報が出揃った後
検査に要する期間が更に一週間から十日前後
子の父親がどちらなのか
リュカなのか
純也なのか
その結果が出るまでに
相応の時間を要する事になった
それは
しばし現実に直面せずに済む猶予でもあり
しばしの安息期間という安心でありつつも
その間
悶々とした永遠の時間を過ごす事になる
地獄の様な不安定期間の確定でもあった
***
「ぉ……おぇぇ……」
「ハァハァハァ……」
気持ちが悪い
慣れない一日を過ごしたからだろうか
精神的な困憊からだろうか
いや
恐らく妊娠による体調の不良だろう
医師に説明を受けたからだろうか
味覚にも変化がある様な気がする
注文したレモンティーの
レモンを紅茶に入れずに口に含む
病欠した事は夫に告げていない
病院へ行った事など知られる訳にはいかない
病院へ行った後も
喫茶店でしばし時間を潰す
病欠する予定ではなかった今日
社用パソコンも持って帰っておらず
仕事も出来ず
ひたすら自分の事に時間を充てる
十分に文章を練り
リュカへ事の報告をした
リュカからはすぐに了承の返信が届いた
リュカは対応が早く
私を不安にさせない
そんなリュカを
私は不安にさせてはいけない
可能な限り誠実な対応に務め
後は
ひたすら妊娠と双子の検索に時間を充てた
普段の帰宅時間帯まで時間を調整し
喫茶店を出て自宅へ向かう
会社からの帰路とは違う
いつものルートとは異なる
病院から自宅への帰路
ほぼ会社と自宅の往復だった私
慣れない環境に
少し戸惑いながら
違和感を感じながら
いつもと異なるルートで自宅を目指す
(——?!)
ふと
目に飛び込んで来た
帰宅時のごった返す人混みの中
乗り換えの人が行き交う駅で
普段使わない駅の片隅で
一人佇み
スマホを触る
鈴木さんの姿が
目に飛び込んで来た
これだけの人混みにも拘らず
浮かび上がるように
鈴木さんの姿が目に付いた
私の中の
直感にも似た
勘の様な何かが
激しく反応する
急に鼓動が激しくなり
血液が逆流するのを感じる
途端に私は
動けなくなり
目が離せなくなり
人混みに紛れ
柱の影に隠れ
電車待ちをする普通のOLの素振りで
これから起こる気がする
お告げの様な自分の予感に怯える
まるで
リュカの言う直感の様な
自分の直感に怯えながらも
目が離せない
そして
やがて
スマホを凝視していた鈴木さんが
何かに反応する様に顔を上げ
微笑む
その先には——