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オイル 近道 保志
四角い箱のような配電塔へと、俺は徹くんをおんぶしながら大量の汗を流しながら到着した。
「う……。おお!」
仕事仲間の話をよく聞いたお蔭だ。機器のメーターは全て振り切れているようだが、ブレーカーをきっと入りにすればいいんだな。一旦、徹くんを背中から降ろしてしまってから、色々な取っ手を開けて中を除いて回る。電線に気をつけながらひたすらサーキットブレーカーを探した。徹くん! また少しの辛抱だ!
よし、これだな……?!
「おじさん!!」
徹くんは、いきなり俺を横へと押し出した。俺も脇へと逃げの態勢だった。何かが俺の脇の服を切り裂いた。襲ってきたのは、あのガソリン男だった。両手にはのこぎりを持っている。
「の、ヤロ――!!」
俺は、叫び声を上げてガソリン男に向かって工具箱を投げつけた。
ガンっと鈍い音がした。
ガソリン男は、工具箱がぶつかった肩をおさえてよろけながら、のこぎりを捨てて一目散に逃げて行く。
「徹くん! 無事か!」
「うん!」
お互い怪我しなくて良かった。電気床に蹲るような姿勢だった徹くんは、何かに気が付き立ち上がった。ガソリン男が逃げた場所を指差していた。
「あ! エレベーターがあるんだ! ほら、おじさん! あっちだよ! あれで、上へ行けるよ!」
「おお!! こ……ここはこのままでも良いや! エレベーターへ行こう! 素人が何かするのはやっぱりいけないや!」
俺は喜んで、走った!
一瞬、グラリとした。俺って、今まで汗が限界まで流れているんじゃないかな……。
水分と塩分がないと……。
配電塔の奥にそれはあった。
徹くんと駆け出して、奥行きのありそうなエレベーターに辿り着くと、ガソリン男はすでにエレベーターで上へ行った後だった。どう見ても、このエレベーターは工業用機械を降ろしたりしていたのだろう。
俺は汗を掻き過ぎながら、黄色い警告テープが貼りまくられたエレベーターの上のボタンを押しまくった。
途端によろける。
「おじさん! 少し座ってて! ぼくが押しておくよ!」
徹くんがエレベーターのボタンを押す役割を変わってくれた。 ブゥーンッと、不気味な音がしてエレベーターが駆動音と共に降りて来た。レベル3へエレベーターが着くと扉がゆっくりと開いた。中は奥行きのある灰色の空間が広がっていた。
「徹くん! さあ、上がるぞ!」
広いエレベーター内は、電力の上がり過ぎたレベル3とは違い寒かった。きっと、冷たい空気が通るダクトの近くなのだろう。さあて、地上は何階だろうか?
「あれ?」
エレベーターのボタンは1階から地下4階までなかった……。2階から地下6階までしかない!
地下6階?
なんだこのエレベーター! 1階がないじゃないか?!
「?? 仕方ない……二階を押そう……多分、これで地上へ戻れるはずだ」
「おじさん! あのガソリン男がいたら?」
「大丈夫だ! また工具箱を投げ……?」
何故か徹くんは真っ青だ。俺も真っ青な顔だろう。工具箱は持っていなかった……。
さて、どうする?
素手で殴るかするか?
気が縮こまる感じだが、エレベーターは無情にゆっくりと上昇していく。
3階……?
2階……。
どうやら、俺たちは今まで地下4階にいたようだ。
一階ずつ。
一つずれているんだ。
2階にエレベーターの箱が着くと、扉が開いて来た。
「ひっ……。徹くん! 伏せて!」
ガソリン男が肩を抑えて拳銃でこちらを狙っていた。パパンンッ! と、発砲音が数回した。
俺はそこで気を失った……。
どこかからオイルの臭いがする……?