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 普段誰かと同じベッドで眠る事のない私、だけど昨夜は違っていた。キングサイズのベッドで手を繋いで眠ったのよ、それも異性と。

 しかもその相手は契約結婚したばかりの夫なわけで……朝を迎えると、隣で寝息を立てている聖壱さんを起こさないように私はベッドから抜け出した。

 聖壱さんは本当に一晩中手を繋いだままで、私は手がしびれてつらかった。

 お手洗いを済ませてリビングのカーテンの隙間から外の景色を見る。目の前には屋上にへリポート付きのオフィスビル。となりはセレブ御用達の総合病院。


「今日はテナントを見に連れて行ってくれるとか言っていたわね……」


 聖壱さんの話だとテナントの中には高級な和菓子店や呉服店、それに寿司レストランなんかもあるらしいわ。

 聖壱さんは何かお目当ての品があるみたいだけれど……


 コーヒーを淹れてソファーに座る。今まで実家ではこういう事は家政婦にお願いしてきたのだけど……

 ここでのこれからの生活の事を、聖壱さんはどう考えているかしらね? あの人が料理や家事を出来るようには見えないし。

私の下手な料理を食べさせるのも嫌だし、やはり誰かを雇うのが無難でしょうね。


 そんな事を考えてハウスキーパーさんのホームページを覗いてみたり。コロンとソファーに横になってスマホを見ているうちに瞼が重くなったいった。


 揺らめく世界の中で、私は妹とその想い人を仲違いさせようと悪だくみしていた。

 もしかしてこれは夢? いいえ、これは間違いなく私が妹たちにしてしまったこと。

 私が欲しいと思ったものを「何にも興味ないです」という顔をして、奪っていく妹をとても憎らしく思った。その人はもともと私の見合い相手だったはず、取り返してやろうと思ったのよ。


 だけど、結果私は二人の想い合う姿を、嫌というほど見せつけられただけで……


 再会できた時の二人、すごく嬉しそうだった。奥手な妹が相手に泣きながら抱きついて……私は自分だけの我が儘で、妹たちにとても酷い事をしたのだと気付いたの。


「……ごめんなさい」


 あの時はちゃんと謝る事が出来なかったけれど、ずっと二人に謝りたかったの。


「何を謝っているんだ?」


 誰の声だろう? 柔らかな世界に聞きなれない優しい声。


「酷い事をしたの。私は自分のことしか考えず優しい人たちをひどく傷つけたの」


 誰だか分からないから、本音を話す事が出来る。無駄に高いばかりのプライドを脱ぎ捨てて、本当の香津美として。


「そうか……」


 優しい声の主は、それだけで私を責めもせずただ優しく頭を撫でてくれた。大きくて暖かい……とても優しい手のひら。もしかして私を慰めてくれているのかしら?


「まさか、こんな可愛らしい性格だったとは……な」


 その言葉にぼんやりとしていた頭の中に警報が鳴り響き、現実に引き戻されていく。……優しかったこの手の主は、いまなんて言ったの?


 ゆっくりと瞼を開けると、目の前に見覚えのあるパジャマの柄と普段はあまり至近距離で見ることのない喉仏が……

 しかも私はソファーの上で転寝したはずなのに、身体に触れているのは少し硬くて暖かい……どう考えてみても、それは男性の身体でしかなくて。


「目が覚めたのか、香津美」

「きっ……きゃあああああっ!」


 状況を理解し急いで聖壱さんから離れようとするけれど、腰に回された腕が力強くて私を自由にしてくれない。


「は、離して! 誰の許可を得て私の身体に触れているのよ!」


 普段男性とほとんど関わることが無かった私。もちろんこんな事は生まれて初めての経験なわけで……

 もう頭の中は大混乱、冷静な自分なんてどこかに吹っ飛んで行ってしまった。


「妻の身体に夫の俺が触れて何が悪い? 眠ってるときは頬を摺り寄せ甘えて来たくせに」


 そんなの何かの間違いよ、私だ誰かに甘えるなんて……絶対にありえないわ!

 聖壱さんと密着した状態に耐えられず、私は腕に力を入れて彼から離れようとするけれど余計に力を入れて抱きしめられるだけ。


「そういう捻くれた態度を取られると、余計に逃がしたくなくなる。香津美は俺をその気にさせるのが上手いな」


 聖壱さんは何を言っているのよ、私はそんなこと頼んでないでしょう? 物事を何でも自分の良いように変えてしまう聖壱さんに私は唖然とするしかなかった。


「その気になるのは他の女性だけにして! 私を揶揄っているのなら許さないわよ!」


 必死で睨んでも、聖壱さんはそんな私を見て「クククッ……」と笑ってるだけ。許せない、を揶揄って遊ぶなんて!

 このままじゃ、私が聖壱さんに負けているみたいじゃない。貴方なんて、どんな手を使ってでも……私は恥ずかしさを我慢して、自ら聖壱さんの身体に触れる。


「お、どうし……あ、こら! 擽った……はっ、はは、くははは!」


 私は聖壱さんの脇腹を両手で擽ったの。何度もしつこく擽られ我慢出来なかったのか、聖壱さんの腕の拘束が解けたのでわたしは急いで彼から離れた。


「今度、勝手に私の身体に触れたら、こんなのじゃ済まさないからね!」


 とどめとばかりに近くに置いてあったクッションを聖壱さんに投げつける。ここまで乱暴な妻になるつもりはなかったけれど、これは聖壱さんが悪いと思うの。


「香津美は本当に面白い女だな。結婚相手なんてつまらないただのお嬢様だと思っていたのに、見合いの相手がお前で本当に良かった」


 聖壱さんはそう言って笑っていたけれど、彼の私を見る眼つきは獲物を狙う肉食獣のようだった。


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