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「罪を……告白だと?」
伊藤が引きつった笑いを浮かべ、閉ざされた扉を拳で叩いた。
「ふざけるな! 誰の仕業だ? ドッキリか何かかよ! おい、開けろ!」
しかし、返ってくるのは冷たい金属音だけ。
エレベーター内の照明がチカチカと点滅し、足元からじわじわと冷気が這い上がってくる。
「……ねえ、これ、本当に出られないの?」
鈴木が震える手で壁にしがみつく。
彼女の顔からは血の気が引き、陶器の人形のように真っ白だ。
スピーカーから、再びあのノイズ混じりの声が響く。
『制限時間は、一人につき五分。時間を過ぎれば、この階の住人が迎えに行く』
「住人……?」
僕が呟いた瞬間、廊下の暗闇の奥から
「ギィ……ギィ……」と、錆びた車椅子が軋むような音が聞こえてきた。
明滅する蛍光灯の光の中に、一瞬だけ、異常に細長い人影が映った気がした。
「おい……誰か、何か言えよ! 何でもいい、適当な罪を言えば出してくれるんだろ!?」
高橋が声を荒らげる。
だが、誰も口を開かない。
沈黙。
それは「自分には隠さなければならない罪がある」と
互いに認め合っているような、残酷な沈黙だった。
僕たちは同じチームで働く同僚だ。
愚痴を言い合い、飲みに行き
それなりに信頼し合っていると思っていた。
でも、今この狭い箱の中で、お互いの視線が「お前から先に言え」と刺し合っている。
『残り、三分』
「……っ、わかったよ! 僕が……僕が先に行く」
沈黙を破ったのは、いつもチームの調整役として温厚だった高橋だった。
彼は床を見つめ、握りしめた拳を震わせている。
「去年の秋、全社プロジェクトの予算が合わなかっただろ? 備品購入のミスで片付けられたけど……本当は違うんだ」
高橋の声が、湿り気を帯びて重くなる。
「僕、競馬で首が回らなくなって……会社の口座から一千万、抜いたんだ。領収書を偽造して、上のハンコも勝手に……」
「一千万!? お前、あの時あんなに一緒に犯人探しを……!」
伊藤が詰め寄るが、高橋はそれを遮るように叫んだ。
「仕方なかったんだ! そうしないと殺されるところだったんだよ! ……これが僕の罪だ。これで満足か!」
その瞬間、沈黙を守っていたエレベーターの扉が、音もなくスゥ……と開いた。
『───審判を開始する。高橋正志、前へ』
扉の向こう、廃病院の廊下には、いつの間にか一脚の古い椅子が置かれていた。
「……助かった。これで帰れるんだな?」
高橋は縋り付くような目で僕たちを振り返り、ふらふらと廊下へ踏み出した。
だが、僕は見てしまった。
高橋がエレベーターの外に出た瞬間
天井の明かりが完全に消え、彼の背後に「何か」が音もなく降りてきたのを。
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