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るしゅ
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#推理
橘靖竜
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夜はまだ明けていなかった。
霧が低く流れている。
川の音だけが、絶えず続いていた。
私は少し離れた場所にいた。
ホームズは、その隣で煙草を持ったまま動かなかった。
二人の姿が、霧の向こうに見える。
メレッドは座り込んだままだった。
顔を上げない。
ユアンは、その少し後ろに立っている。
長い間、誰も話さなかった。
風が草を揺らす。
川は変わらず流れている。
やがて、彼女が言った。
「……私だったの」
声は小さかった。
消えそうなほどに。
ユアンは答えなかった。
彼女は両手を見ていた。
暗がりの中でも、震えているのが分かる。
「思い出したく、なかった」
間が落ちる。
「違うって……思ってた」
風が吹いた。
霧がわずかに流れる。
「でも」
そこで言葉が止まる。
川の音だけが残る。
ユアンは、しばらく彼女を見ていた。
その目には、怒りはなかった。
あまりにも長く抱え続けたものは、
怒りの形を失っていた。
「違う」
彼が言った。
低い声だった。
彼女は顔を上げた。
ユアンは続けなかった。
それでも、その言葉だけで十分だった。
事故だったのか。
違うのか。
誰が悪かったのか。
もう、どれも同じように遠かった。
「……カースティは」
彼女の声が震えた。
そこで止まる。
ユアンは目を閉じた。
風が止む。
音が消える。
「笑っていた」
それだけだった。
彼はそれ以上、何も言わなかった。
彼女は声を失ったまま、俯いている。
泣いてはいなかった。
ただ、呼吸だけが乱れていた。
長い沈黙が落ちる。
やがてユアンは、静かに彼女から視線を外した。
川を見る。
水は暗く流れている。
終わりのない音だった。
彼はゆっくりと歩き出した。
彼女は動かなかった。
呼び止めもしない。
ホームズも、何も言わなかった。
私は、その背を見ていた。
霧の中へ向かっていく。
まるで最初から、そこへ帰るつもりだったように。