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元貴の声が、
胸の奥に落ちてくる。
一言一言が、
重くて、
逃げ場がなくて。
「一緒にだ」
その言葉を聞いた瞬間、
心のどこかで
必死に保っていたものが
静かに崩れた。
――そんなの、
ずるい。
涼ちゃんは、
元貴の方を見られないまま、
指先を強く握りしめる。
(引っ張る側にいる、なんて)
そんな簡単な顔で
言わないでほしかった。
自分がどれだけ
軽くなっているか、
分かっている。
言葉も、
感情も、
存在感も。
ここに立っているのに、
少しずつ
透明になっていく感覚。
それを悟られないように、
ただ「普通」を装っていただけなのに。
「……元貴は」
声を出した瞬間、
喉が詰まる。
思ったより
自分は脆かった。
「元貴は、
強いから」
やっと、それだけ言う。
「前に進めるし、
ちゃんと音を鳴らせるし」
「でも、
俺は……」
言葉が続かない。
情けなくて、
悔しくて、
でも事実だった。
「ここにいるとさ」
涼ちゃんは、
視線を落としたまま続ける。
「ちゃんとしなきゃって思うんだ」
「期待されてるのも、
大事にされてるのも、
分かってる」
「だからこそ、
崩れたらダメだって」
自分で自分を
縛っていた。
弱音を吐く前に、
距離を取った。
壊れる前に、
閉じた。
「……でも」
小さく、
震える声。
「もう、
余裕なくて」
涙が、
止まらない。
泣くつもりなんて
なかったのに。
「何か言ったら、
全部出ちゃいそうで」
「そしたら、
元貴に
引っ張らせちゃうって思って」
それが、
一番怖かった。
大事な人に
負担になること。
元貴の足を
止める存在になること。
「だから……」
涼ちゃんは、
唇を噛みしめる。
「離れた方が、
いいって思った」
言い切った瞬間、
胸が痛んだ。
本当は、
離れたくなんてなかった。
誰よりも近くにいたかった。
でも――
自分が自分でいることが、
怖くなっただけ。
静寂の中で、
元貴の気配が近づく。
触れられるんじゃないかと
身構えた、その時。
「勝手に決めるなよ」
低く、
でも怒りじゃない声。
「お前が重いなら、
俺も重くなる」
「それでいいだろ」
涼ちゃんの胸が、
ぎゅっと締め付けられる。
そんな覚悟、
聞いてない。
でも同時に、
救われてしまった。
「……ずるい」
絞り出すように言うと、
元貴は小さく息を吐いた。
「今さらだろ」
その一言に、
思わず笑いそうになる。
涙まみれで。
涼ちゃんは、
震える手で
元貴の袖を掴んだ。
引っ張る力なんて、
ほとんどない。
それでも――
離れなかった。
初めて、
ちゃんと
手を伸ばした。
閉じていた内側に、
少しだけ
風が入った気がした。