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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第23話 〚交わらない計算〛(恒一視点)
計算は、
ずっと得意だった。
◇
人の表情。
視線。
距離。
◇
どう動けば、
どう思われるか。
◇
全部、
分かっている。
◇
だから――
失敗するはずがなかった。
◇
◇
白雪澪は、
孤独になるはずだった。
◇
橘海翔は、
奪われる側になる。
◇
姫野りあは、
利用できる。
◇
そのための配置。
そのための言葉。
そのためのタイミング。
◇
完璧だった。
◇
……はずなのに。
◇
(おかしい)
◇
恒一は、
廊下の壁にもたれながら、
視線を伏せた。
◇
澪は、
孤立していない。
◇
むしろ。
◇
守られている。
◇
海翔。
玲央。
あの三人の女子。
◇
大人まで、
動き始めている。
◇
(早すぎる)
◇
こんなはずじゃない。
◇
◇
りあの顔を、
思い出す。
◇
笑顔。
高い声。
分かりやすい欲。
◇
――利用価値はある。
◇
でも。
◇
最近、
反応が遅い。
◇
笑顔の“質”が、
変わった。
◇
(迷ってる)
◇
それは、
想定外だった。
◇
◇
「……」
◇
恒一は、
指先でマスクの端を押さえる。
◇
澪を見ると、
胸がざわつく。
◇
それは、
苛立ち。
◇
でも。
◇
それだけじゃない。
◇
(なぜ、怯えない)
◇
前なら。
◇
視線だけで、
距離だけで、
揺れたはずなのに。
◇
澪は、
一歩下がりながらも、
折れていない。
◇
それどころか。
◇
“気づいている”。
◇
(……予知)
◇
あの力。
◇
最初は、
偶然だと思っていた。
◇
でも今は、
違う。
◇
(見られてる)
◇
未来じゃない。
◇
“俺”を。
◇
恒一は、
唇を噛む。
◇
計算は、
常に上にあるべきだ。
◇
予測不能なものは、
排除する。
◇
◇
――それなのに。
◇
澪の視線が、
胸に残る。
◇
怯えでも、
拒絶でもない。
◇
“警戒”。
◇
(……面白くない)
◇
思考が、
少しだけ、
乱れる。
◇
恒一は、
それを認めない。
◇
(まだだ)
◇
(俺は、負けてない)
◇
りあは、
まだ使える。
◇
澪は、
まだ奪える。
◇
◇
そう、
頭では分かっている。
◇
でも。
◇
胸の奥で、
小さな音がする。
◇
計算が、
ズレ始めている音。
◇
恒一は、
目を細めた。
◇
(……交わらなくてもいい)
◇
(壊せばいい)
◇
その結論に、
一瞬の躊躇もなかった。
◇
だから彼は、
まだ気づかない。
◇
“計算が通用しない相手”が、
もう、
彼の前に立っていることを。
◇
そして。
◇
その相手が、
未来を“変える側”だということを。