テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第24話 〚見えてはいけない未来〛(澪視点)
最初は、
ただの違和感だった。
◇
胸が、
少しだけ、
重い。
◇
心臓が、
ゆっくり、
でも確かに強く打っている。
◇
(……来る)
◇
澪は、
廊下の窓際で立ち止まった。
◇
頭は、
痛くない。
◇
それなのに。
◇
胸の奥が、
ぎゅっと掴まれる。
◇
(予知……)
◇
◇
――視界が、揺れた。
◇
音が、
遠のく。
◇
代わりに。
◇
映像が、
流れ込んでくる。
◇
◇
夜。
◇
暗い道。
◇
人影は、
二つ。
◇
一つは――
◇
(……私)
◇
もう一つ。
◇
マスク。
◇
見覚えのある、
目。
◇
(……恒一)
◇
澪の心臓が、
強く、
跳ねる。
◇
◇
その未来の中で。
◇
澪は、
立ち尽くしている。
◇
声が、
出ない。
◇
足が、
動かない。
◇
助けを呼ぼうとしても、
音にならない。
◇
(やだ……)
◇
でも。
◇
その未来には、
“来ない”。
◇
海翔が、
いない。
◇
玲央も。
えまも。
しおりも。
みさとも。
◇
誰も。
◇
――いない。
◇
(違う)
◇
(こんなの、見たくない)
◇
胸が、
締めつけられる。
◇
心臓が、
悲鳴を上げる。
◇
◇
――映像が、途切れた。
◇
「……っ」
◇
澪は、
壁に手をついた。
◇
息が、
浅い。
◇
(今のは……)
◇
予知。
◇
でも。
◇
今までと、
違う。
◇
(未来が、確定してない)
◇
見えたのは、
“可能性”。
◇
選ばれたら、
そうなる未来。
◇
(……変えられる)
◇
そう思った瞬間。
◇
心臓が、
また、
強く鳴る。
◇
◇
(私は……)
◇
怖い。
◇
見えてしまうのが、
怖い。
◇
でも。
◇
見ないまま、
失うのは――
◇
もっと、
怖い。
◇
◇
その時。
◇
「澪?」
◇
聞き慣れた声。
◇
振り向くと、
海翔が立っていた。
◇
澪は、
反射的に、
一歩近づいてしまう。
◇
「どうした?」
◇
心配そうな目。
◇
その顔を見た瞬間。
◇
さっきの未来が、
胸に刺さる。
◇
(この人が、いない未来)
◇
澪は、
小さく首を振った。
「……なんでもない」
◇
嘘。
◇
でも。
◇
今は、
全部を言えない。
◇
海翔は、
澪の様子をじっと見て、
それ以上聞かなかった。
◇
その代わり。
◇
「無理すんなよ」
◇
その一言が、
胸に沁みる。
◇
◇
澪は、
心臓に手を当てる。
◇
鼓動は、
まだ早い。
◇
(見えてはいけない未来だった)
◇
でも。
◇
(見えてしまった)
◇
なら。
◇
――私は、
選ばなきゃいけない。
◇
この未来を、
“なかったこと”にするために。
◇
澪は、
静かに、
決意した。
◇
もう。
◇
見えるだけの存在では、
いない。
◇
未来を、
変える側に立つ。
◇
その覚悟が、
胸の奥で、
確かに形を持ち始めていた。