カメラがゆっくりと洞窟から引き、深い森を映し出す。そして画面に大きく「第十二話:メタ発言」と表示される。
「いやいや、ちょっと待て!」フィンが飛び出してくる。
「メタ発言ってタイトルだけど、これどういう意味だ?なんか俺らが壁を壊すような話になるんじゃねぇか?」
「もう壊れてるわよ、その壁。」ローザリンドが槍を肩に担ぎながら冷たく答える。
「それより、さっきの魔王討伐がただの茶番だったことに、怒りが向いてると思うんだけど。」
「怒り?」フィンが首をかしげる。
「いや、これ見てる人って、どんな気持ちで俺たちを追いかけてんだろうな?『また無駄かよ!』とか言ってるんじゃねぇか?」
「まぁ、仕方ないわね。予算の都合で話が進まないこともあるのよ。」ローザリンドが苦笑する。
「それに、あの魔王を倒したのは、スポンサー向けの“最強能力アピール”だから。」
「えぇぇ!?」フィンが叫ぶ。
「おい、俺たちの冒険、スポンサーのために演出されてんのかよ!?」
「そんなこと言ったら、私のこのリボンもそうだし。」ローザリンドが髪を指差す。
「なんと、リボンのメーカー名がエンドロールに出る仕組みになってるのよ。」
「地味な宣伝…」フィンが呆れる。
一方、後方で静かに立つドーベンも突然言い出す。
「私は分かっています。」
「え?何を?」ローザリンドが振り返る。
「視聴者の期待が、私の必中能力にかかっていることを。」ドーベンが無表情で語る。
「しかし、同時にこうも思うのです。“それ、チートすぎてつまらなくね?”と。」
「ドーベン、自己分析しすぎよ。」ローザリンドがため息をつく。
「では、こう提案します。」ドーベンが鋭い目をする。
「次回以降、必中能力に“冷却期間”を設定しましょう。5話に1回しか使えない、という形で。」
「自分で自分を弱体化させるな!」フィンが慌てる。
「それ、ただの視聴率対策じゃねぇか!?」
「視聴率対策…必要です。」ドーベンが小さくうなずく。
「次のギャンブル回が不発なら、私たちの冒険、2クール目はないかもしれません。」
「えぇぇえええええ!?!」
一行が歩きながら議論を続けていると、画面の外から誰かの声が入ってくる。
「カット、カット!今のセリフ、もう少し感情込めて!」
「ちょっと待って、何よこの声。」ローザリンドが振り返る。
すると、画面の端にディレクターらしき人物が顔を出す。
「あのさ、さっきの“視聴率対策”ってセリフ、もうちょっと面白く言えないかな?」
「私たち、冒険してるんだけど!」ローザリンドが槍を突きつける。
「あんた、ストーリーの中に入ってくるんじゃないわよ!」
「まぁまぁ、メタ回だからこれくらいアリでしょ?」ディレクターが手を振る。
「どこが“アリ”なのよ!」
突如、画面が暗転し、文字が表示される。
「ここまでのエピソードで、あなたが一番好きなシーンはどれですか?」
A: フィンのツッコミ
B: ローザリンドのリボン宣伝
C: ドーベンの冷却期間提案
D: ディレクターの乱入
文字が消えると、ローザリンドがカメラ目線で語り始める。
「というわけで、この冒険も視聴者のみなさんの応援で成り立っています!」
「媚びるな!」フィンが即座にツッコむ。
「俺たち、真剣に世界救う感じ出そうぜ!」
「それ、脚本家に言いなさい。」ローザリンドが肩をすくめる。
画面には次回のタイトルが映し出される。
「次回:これ以上予算を削るな!」
フィンの声が続く。
「おい、それもう完全にスタッフの愚痴だろ!」
「大丈夫、次回も盛り上がるわよ。きっと。」ローザリンドが微笑む。
To Be Continued…
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!