「眠れなかった、」
結局、昨日去り際に二子さんが言っていた祓い屋達との顔合わせという言葉が頭を離れずろくに眠る事が出来なかった。
うぅ、目がしょぼしょぼする。
俺は目を擦りながら体を起こす。障子の隙間から朝日が差し込んで、畳を照らしている。
障子を開けると、其処には目を張るほどの素晴らしい庭園が広がっていた。
「綺麗…、」
庭園には、水を模した要素や石、灯篭などが置かれていた。
窓際に立って庭園を見つめていると、縁側に下駄が置かれていた。まるで俺が庭園に行くのを分かっていたかの様に。
俺は下駄を拝借すると、庭園に俺は足を踏み入れた。
形の整った石の上を歩く度に見る風景が移り変わっていく。
途中、歩いている道に炎を具現化した様な猫がじっと此方を見つめていた。
俺はしゃがみ込みその猫の目線に合わせ、問いかける。
「迷子か?飼い主さんは?」
猫は俺の質問に対してまるで言葉が分かっているかの様に鼻先で庭園の奥を指した。
「向こうの居るって言いたいのか?…俺が連れてってやろうか?
此処からあそこまでは少し距離があるし」
俺が再び問いかけると猫は了承したのか俺の胸に向かって飛び込んで来た。顔に当たる柔らかい毛先が少しくすぐったい。顎を撫でるとごろごろと喉を鳴らす。人懐っこい猫だな、可愛い。
猫を抱き抱えると俺は再び歩みを進めた。
暫く歩くと、池の間にかかった赤い橋が見えてきた。
「あれ?あそこに誰か居る!」
よく見ると其処にはオレンジ色の髪にガタイの良い体をしたいかにも好青年といった感じの人が立っていた。見ている俺に気付いたのかその人は此方に視線を向ける。
「お前、その猫…」
青年は俺の腕の中にいる猫を見て驚いた様に目を見開いた。
この人、この猫知ってるみたいだし飼い主さんかな。
「もしかして、この猫の飼い主さんですか?」
俺が目を見て質問すると青年は慌てた様に首を横にふった。
「俺じゃなくて友人の猫なんだ」
誤解させてすまない、とばつが悪そうな顔をする青年を見てこの人見た目通りの好青年だななんて俺はのんきに考える。
「いえいえ、勘違いした俺が悪いので気にしないで下さい!」
頭を下げる青年の顔を上げさせ、俺は良ければ少しお話ししませんか言いと近くの縁側に座る様に促す。
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「そうか、そんな事が…」
「はい、。しかも今日急に顔合わせがあるって言われて、そのせいで緊張して眠る所じゃなくて、」
気付けば俺は青年曰く國神さんにここにいたった経緯を全て話してしてしまっていた。
見ず知らずの俺の話を面倒くさがらず親身に聞いてくれる國神さんの優しさに俺は何だが泣きそうになった。
「って事は二子が言ってたのはお前だったのか」
「二子さん?」
國神さんは俺の話を聞き終えた後、俺の事を知っている様に二子さんの名前を出した。
「昨日の夜にな、俺を含めた祓い屋達に二子から明日七不思議に遭遇したという少年と顔合わせをして欲しいと言われてな」
そう言われて初めて國神さんが二子さんと同じ祓い屋という事に気が付いた。確かに言われてみれば、祓い屋らしい斎服の様なものを着ていた。動きやすい様に現代風にアレンジされていた為、全然気が付かなかった。
「國神さんは何で祓い屋をやってるんですか?」
俺は話を聞いてからずっと気になっていた事を問いかける。
すると、國神さんは俺の言葉に暫く考え込んだ後真っすぐと前を見据えた。
「どんなピンチにも最後には必ず助けに来てくれる。そんな皆を守るスーパーヒーローになりたいからだ。…少し子供じみた夢かもしれないなけどな」
笑ってくれて構わないぞ、と國神さんはそう言うと渇いた笑いを浮かべた。俺はそんな國神さんを見て口を開く。
「笑いませんよ。カッコ良いじゃないですかスーパーヒーロー。
俺は少なくとも夢を追いかける人を笑う様な事はしませんよ」
國神さんは俺の言葉に目を見開くと嬉しそうに笑った。
「そうか、ありがとな潔」
そう言うと國神さんは俺の前に拳を突き出す。俺はそれに応えるように軽く拳を突き返した。
その時だった。
「潔くんー?何処にいるんですかー?」
遠くから俺を探すニ子さんの声が聞こえて来た。
やばい、話し込んでて時間の事全然考えて無かった。
「俺もう行かなきゃ。國神さんまた後で!」
「おう、潔また後でな」
俺は國神さんに手をふると膝に乗せていた猫を抱え、小走りでその場を後にした。
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「潔くん!一体何処に行ってたんですか!?心配したんですよ!朝、部屋に幾ら呼びかけても返事がないものだから部屋に入ってみたらもぬけの殻で…はぁ、ともかく今は顔合わせの為の準備をすぐすませましょう」
どうやら俺が部屋を抜け出してから2時間程の時がたっていたらしく、部屋に連れ戻されたと思ったらご飯もまずまずに現在進行形で正装の着付けをされながらこっぴどく叱られています。
というか、正装って何??俺、祓い屋でもなんでもない一般人なんですけど。
気付けば寝てる時には浴衣着てて、今は正装の服着させられてるって…俺の制服は一体何処にいったんだか。
そうこう考えている内に着付けをしてくれていた二子さんが手を止めた。
「…よし、これで着付けは終わりましたね。じゃあ、今から皆さんが待っている居間に行きましょう」
ニ子さんは俺の全体を見渡し満足気に息を吐くと、襖を開ける。
俺は急いで後に続く様に二子さんの背中を追う。長い廊下を歩く中、様々な部屋が目に入る。この家どんだけ広いんだ。
俺がそんな事を考えていると突如として二子さんがとある部屋の前で足を止め此方を振り向いた。
「良いですか?この部屋に居る人達は全員個性的な人ばかりです。
なので、精神的に限界を感じたら話の最中だろうと僕に言って下さい。話を中断してでも、部屋に戻りますから」
「でも、今日は顔合わせの為に来たんじゃ…」
「確かに、今日は顔合わせをする事が1番大事です。ですが、慣れている筈の僕でさえ頭痛がするあの個性集団の中に君を入れて、気絶させる程僕は鬼になったつもりはありません」
心配そうにする俺の肩を掴むと二子さんは念を押す様に目を見据えそう言った。
二子さんに此処まで言わせる個性集団って相当ヤバくないか。
俺は引き攣る顔を抑えると二子さんの声がけと共に部屋に足を踏み入れた。
コメント
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あのもしかしてpixivにも同じのを投稿していますか? もししてたらファンです! pixivではログインが出来なくっていいねやフォローができなかったけどテラーで同じものが見れたのがめっちゃくちゃ嬉しいです! もし違ったらすみません(´・ω・`) 続き楽しみにしています!- ̗̀( ˶^ᵕ'˶)b
ここまで一気読みさせていただきました・・!! 書き方凄く好みです、!🥹✨ 設定もすごく好き・・、國潔少ないので助かります・・‼️ 続き楽しみにしています・・✨
今回もめちゃ最高だった、、!続きも無理しない程度に頑張れ ~ ッ、!!📣✊🏻