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ゆゆゆゆ
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ゆゆゆゆ
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#見捨てられた
リコりす@現在熱38℃☆
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#Telamon
ありきたりな雑炊
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「──もう、人間の血など必要ない。」
静かな囁きが、闇そのものへ溶けていく。
「君は今日、この瞬間から生まれ変わる。」
スペクターはゆっくりと右手を持ち上げた。
白い手袋を外す。
長い指先。
その一本へ、自らの鋭い爪を静かに滑らせた。
ぷつり。
皮膚が裂ける音は、驚くほど小さい。
けれど次の瞬間。
傷口から溢れ出した赤は、この世の血液とは明らかに異なる輝きを宿していた。
濃く。
深く。
宝石を溶かしたような赤。
その一滴一滴が鼓動を持つように脈打ち、淡い光を放ちながら夜を染めていく。
生命だった。
死を統べる存在でありながら、生命そのものを掌握する神だけが持つ、禁断の血。
世界を書き換えるための原初の雫。
スペクターはそれを静かに見つめ、小さく微笑んだ。
「受け取りなさい。」
赤い瞳が細くなる。
「これが君の、新しい命だ。」
濡れた指先が、そっとアズールの唇へ触れる。
冷たい。
そう思ったのは、一瞬だけだった。
指先が唇を割り、喉の奥へ触れた瞬間。
熱。
灼熱。
身体の奥底へ、燃える命が流れ込む。
「あ……っ……!」
息が止まる。
心臓が暴れる。
血液が悲鳴を上げる。
神の血は、容赦なく全身を駆け巡った。
骨の髄まで。
神経の一本一本まで。
壊れた魂の欠片さえ逃さず、そのすべてを書き換えていく。
「あ……あぁ……!」
こんな感覚は知らない。
胸を刺された痛みとも違う。
儀式で刻まれた傷とも違う。
もっと深く。
もっと甘く。
もっと抗えない。
自分という存在の内側へ、圧倒的な何かが満ちていく。
(あなた様が……。)
涙が零れる。
(あなた様が、私の中に……。)
もう悲しくなかった。
もう苦しくなかった。
裏切られた記憶さえ、霞んでいく。
代わりに心を埋め尽くしたのは、圧倒的な安心だった。
主人の命が。
主人の力が。
主人の存在そのものが、自分を満たしている。
それだけで十分だった。
「……ありがとうございます……。」
震える声。
アズールはその手を、まるで祈るように両手で包む。
神へ捧げる祈りのように。
そして、自らその指先へ唇を重ねた。
主人から与えられた命を、一滴も失いたくないと願うように。
その瞬間だった。
世界が軋んだ。
「──ぁ……!」
骨が鳴る。
ばき。
ごきり。
嫌な音が身体の奥から響き始める。
熱は止まらない。
いや。
熱ではない。
これは、生まれ変わる痛みだった。
「あ……あああああぁぁっ!」
白かった肌へ黒が滲む。
まるで夜そのものが皮膚の内側から染み出すように。
指先。
腕。
首筋。
頬。
全身がゆっくりと漆黒へ塗り替えられていく。
背中が大きく反る。
服が裂ける。
肉が盛り上がる。
骨格そのものが、人間ではない形へ歪み始める。
やがて。
背中を突き破るように黒い触手が姿を現した。
一本。
二本。
三本。
次々と闇が肉体から生え、獣の尾のように空中を這い回る。
生きている。
飢えている。
獲物を求めている。
それらは周囲の闇と溶け合いながら、不気味な歓喜を上げるように蠢いた。
かつて植物を慈しんでいた青年は、もうそこにはいない。
繊細だった指先は、命を育てるためではなく。
命を狩るためのものへ変わっていた。
苦痛の中で。
歓喜の中で。
アズールはゆっくりと顔を上げる。
帽子の影から見えた瞳は、もう人間のものではなかった。
深い赤を映し込みながら、ただ一人だけを見つめている。
スペクター。
神。
主人。
救い。
世界。
そのすべて。
「あぁ……。」
壊れた声で笑う。
「私は……あなた様のものです……。」
スペクターは静かに指を引き抜いた。
赤い血はもう流れていない。
その役目は終わった。
代わりに彼は、新しく生まれた怪物の顎へそっと手を添える。
慈しむように。
誇らしげに。
完成した芸術品を眺める芸術家のように。
赤い瞳が細く笑う。
そこにあったのは愛情ではない。
憐れみでもない。
ただ一つ。
完璧な作品が、この世にまた一つ生まれたことへの、静かで冷たい満足だけだった。