テラーノベル
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窓の外は、しとしとと降り続く長雨が街の色を奪っていた。薄暗いリビング、照明もつけずにソファに並んで座る阿部亮平と目黒蓮。
テレビの音もなく、ただ雨だれの音だけが、二人の間の沈黙を優しく埋めている。
「……あべちゃん」
目黒が、隣に座る阿部の肩にこてんと頭を預けた。
大きな体が少し縮こまるようにして、阿部の二の腕に自分の腕を絡める。
「ん? どうしたの、めめ。眠くなっちゃった?」
阿部が読みかけの本を閉じ、空いた手で目黒の柔らかな前髪を払う。
指先が額に触れると、目黒は気持ちよさそうに目を細めた。その無防備な表情は、カメラの前で見せる鋭い視線とは正反対で、阿部だけが知っている「甘えたな蓮」の顔だ。
「……眠くない。ただ、こうしてたいだけ。あべちゃんの匂い、落ち着くんだよね」
目黒は阿部の首筋に顔を埋め、深く息を吸い込む。
柔軟剤の香りと、阿部自身の清潔な体温が混ざり合った匂い。それが目黒にとっては、どんな高級なアロマよりも心を解きほぐす薬だった。
「めめ、くすぐったいよ」
阿部は苦笑しながらも、避けるどころか目黒の腰をぐっと引き寄せた。
密着した体から、ドクドクと力強い鼓動が伝わってくる。どちらのものか分からないほど重なり合ったリズムが、静かな部屋に心地よく響く。
阿部の指が、目黒の耳の後ろから項へとゆっくり滑り降りる。
繊細な指先に愛おしさを込めてなぞると、目黒の体がびくんと小さく跳ねた。
「……っ、あべちゃん。……そこ、弱いって知ってるでしょ」
目黒が顔を上げると、その瞳はすでに熱を帯び、潤んでいた。
わずかに開いた唇から漏れる、熱い吐息。
阿部は逃がさないように目黒の後頭部を支え、そのままゆっくりと唇を重ねた。
最初は、羽が触れるような優しいキス。
けれど、目黒が切なそうに「ん……」と鼻を鳴らして阿部の服を掴むと、それはすぐに深くて濃いものへと変わっていった。
「ふ、……あ、べちゃん……っ……」
何度も角度を変えて、互いの存在を確かめ合うように貪り合う。
目黒の喉から溢れる甘い声が、阿部の理性を少しずつ、確実に溶かしていく。
阿部の手が目黒のシャツの裾から忍び込み、熱を持った背中を這い上がると、目黒は耐えきれないように阿部の肩に顔を伏せた。
「……めめ、顔見せて」
阿部が低く、少し強引な声で促すと、目黒は真っ赤な顔をして、縋るような視線を向けた。
普段の「かっこいい目黒蓮」が、自分の指先ひとつでこんなにも乱れ、蕩けている。
その事実に、阿部の中の独占欲が静かに、けれど激しく燃え上がる。
「……全部、俺に預けて。ね?」
阿部の囁きに、目黒は力なく頷き、彼の首に腕を回した。
雨音に紛れて、二人の吐息はさらに熱く、重なり合っていく。
外の世界がどれほど冷たくても、この部屋の中だけは、二人だけの濃密な熱に満たされていた。
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