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レンコン 煮付け
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竜馬は毎日仕事が終わるとジャスティンの家に通った、そして午前0時を回る頃に自宅へ帰る生活を繰り返した
まるで竜馬が初めてカルロスの家にホームスティをした頃みたいだとジャスティンは笑った、彼を介護するのはウェンディや24時間体制の看護師が屋敷に住み込みでいるので、竜馬が特別な事をする必要はなかった
ただ、竜馬はジャスティンの傍にずっといた、そしてグランド邸で初めて彼と会った時に見かけた黒髪のブラックスーツの男性も、平日は毎日ジャスティンの家の一階の秘書事務室にいた
「初めてお会いした時に、どうしてアレン社長が私を個人秘書としてお雇いになられたか、疑問が一気に解けました」
ジャスティンが眠っている間に秘書室で一緒に紅茶を飲みながら、竜馬は彼の話を聞いていた、彼の名前は「パク・ソジュン」竜馬が最初日本人だと思っていた彼は韓国人だった
「アレン社長との出会いは、三年前のNYの証券取引所でした、私は株式上場企業の書類翻訳係で務めていたのですが、そこにいらしていたアレン社長が、私をこの会社にヘッドハンティングされたのです」
ソジュンの話し方は教養があり、そして少し韓国なまりのある英語だった
「君は・・・・その・・・」
竜馬は紅茶を飲みながらそこで言うのをやめて耳を赤らめた、ああ・・・とソジュンは察したみたいで、ニッコリ笑って言った
「いいえ・・・「ステディ」な関係ではございません」
ソジュンも紅茶を一口飲んだ
「アレン社長の心はあなたがかっさらっていますしね・・・それは十分ご承知でしょう・・・竜馬」
竜馬は真っ赤になって言った
「あ・・・い・・・いや!その、僕達だって・・・そんな関係じゃなくて・・・その・・・」
「肉体関係があるか無いかは大した問題ではございません、要はどれほど相手を大切に思っているかですよ」
ソジュンがため息をついて言った
「アレン社長は働きすぎです・・・実際、彼は病気をしても療養する暇がない」
「臨時で彼の代表の代わりを務められる人はいないのかな?」
「副社長がいらっしゃいますが、アレン社長ほど、この世界でやっていくために必要な能力をすべて備えている人はいません」
ソジュンはウエンディが用意してくれたチョコレートの包み紙をほどき、一つ口の中に入れた
「組織の規模が大きすぎるんです、以前に二つの組織に分裂させて経営させる計画が進んでおりましたが、結局任せる適任が見つからず、今でもアレン社長が独断で経営されています」
「僕の方からも、なんとかジャスティンが療養できるように考えてみるよ」
ソジュンはしばらくじっと竜馬を見つめ・・・考え込むようなしぐさを見せたが、やがて竜馬に向かって優しく微笑んだ
「ぜひお願いします」
。 .:・.。. .。.:・
今日も今日とてジャスティンは相変わらず電話で指示を飛ばして怒っていた、竜馬が仕事を終えてジャスティンの家に行くと怒鳴り声が聞こえた、今日怒鳴っている場所は、彼の事務所からだった、一階にある事務所と言えど、昔からの舞踏室を改装して作ったその部屋は、モーターショーが開けるぐらい広く、人の背ほどもある高さのフェイクの暖炉型ファンヒーターから暖かすぎる風が吹いていた
この頃のジャスティンは病のせいで体温調整が難しく、常に家の中は24時間常夏ぐらいの温かさがあり、今さっき外から入って来た竜馬は、暑くて半袖Tシャツになっていた、そしてジャスティンを心から心配していた、あんなに会社の事で精神を煩わされていたら療養など難しい
「数年前は、確実に俺の組織は肥満状態にあったんだ」
ジャスティンは竜馬に少しづつ昔のことを語った、彼は刑務所にいた頃にずっと、図書館で投資を勉強していたそうだ、幸い本を読む囚人なんて周りにはいなかったので勉強はとてもはかどったらしい
一日一時間、投資勉学のために監視の元、インターネットも使わせてもらえる環境にいた、今思えば犯罪者がこれほど見事に社会復帰できたのは、本当に幸運だったと彼は言った
大抵の連中は、出所しても同じムジナでまた刑務所に戻ってくる、やってみれば投資はジャスティンの性格と相性が良かったらしい、とことん分析して、どこにエネルギーを費やせばいいか、ジャスティンには手に取るように分かった
ある日、彼は母親に手紙を送って、竜馬が届けた金の一部を使ってジェシカに彼の指示する会社の株を購入させた、そして利益が出たらまた新たな会社の銘柄の株を買うように、母のジェシカに指示の手紙を送り続けた
今は亡きジェシカが、ジャスティンのお金を残しておいて、動いてくれたおかげで、月日は流れてジャスティンが出所する頃には、アレン家はひと財産あったそうだ
ジャスティンは、投資こそが自分の天性と才能を見出し、それを武器に人生の再出発をした、時の経過につれてジャスティンのファンド会社は子会社も含め、大きな帝国になっていった
顧問弁護士を沢山雇い、ファンドマネージャーやジャスティン直属の部下も大幅に増やしていった、しかし物事は必ず落とし穴がある、やがて会社は拡大するにつれ、組織全体が肥満状態を呈してきた
ろくに働きもせず、経営の甘い汁を吸う社員がどうしても生まれ、経費にやたら金がかかる放漫経営になったそうだ 、そしてついにジャスティンは、組織の制度化に手をつける事にした
彼の下に部下をつけて幹部団を作り、人員削減チームに運営を任せると共に、雇用削減を徹底した
「恨まれることもあったよ・・・それは沢山ね、でもこの思い切った行動が新しい事業を立ち上げるきっかけになったんだ」
ジャスティンはそう語った 、こういった組織の腐敗によって悩まされている企業はジャスティンの会社だけではなかった、そこでジャスティンはファンド会社ともう一つ、客観的なプロのリストラ集団を育成して、企業のリストラを斡旋するコンサルタント会社 「メガロス・アレン・エンタープライティス」 を設立した
驚いたことに、このコンサル会社はファンド会社よりも大きく成長した、それだけ表向きは雇用削減リストラという、誰もが聞こえの悪い事に悩まされている経営者達に需要があったのだ
ジャスティンは放漫経営にメスを入れ、雇用削減に対してきちんとマニュアルを作り、解雇者が会社に対して悪い印象を持たないように、解雇手当や再就職支援プログラムなどもに力を入れるようになった そして・・・
「そして・・・すべての事が順調だと思っていた時・・・発病したんだ・・・ 」
数秒彼の沈黙があり、竜馬は車椅子に座るジャスティンを背後から無言で抱きしめた
「まさか自分が引退するために、自分の会社をこれから分解しないといけないなんて、思わなかったよ・・・・ 」
先ほどウェンディから夕食が出来たと呼び出しがあってから、もう30分は経つ・・・エレベーターの前で竜馬は言った
「遅ればせながら・・・規模は違えど、同じ社長の立場としてアドバイスをしてあげる、ちゃんと後継者を見つけてから引退してあげないと、君の会社の社員が可哀想じゃないか」
「あてはあるんだ」
「へぇ・・それは誰?」
竜馬は意外だというようにジャスティンに聞いた、そしてエレベーターの全身を移す鏡越しに、ハッキリとジャスティンと目が合った
ジャスティンはじっと竜馬を見つめて黙っている・・・竜馬は目をパチクリとした、二人は暫く無言で見つめあった、やがてぞくりと竜馬の背筋に冷や汗が走った
ここへきてジャスティンが何を企んでいるかようやくわかった、恐らく彼が竜馬の前に姿を現した本当の理由も・・・
なんてことだ
竜馬は心の中でつぶやいた
「む・・・無理だよ・・・何を考えているか知らないけど、そんな君の会社を僕が経営するなんて」
竜馬は面食らって言った
「お前は本当に外壁制作に人生を捧げたいと思ってるのか?」
さらっとジャスティンが言う
「それは・・・思ってないけど・・・」
「本当ならファンド会社が軌道に乗って一息したら、お前を呼び寄せるつもりだったんだ、でも癌の治療に思ったより時間がかかった」
ジャスティンが、車椅子を押す竜馬の手を握った
「外部の人間を雇って後任にするという話もあるんだ、もしそれならいっそのこと全部潰して、何もかもなくしてしまった方がいいと思うんだ、ウェンディにも十分な資産を与えた、ウェンディとフランクで今の顧客を抱えて個人ファンドを経営していくそうだ、彼らに大企業は手に余る、不幸の元だ、それ以外に俺は資産を分ける身内はいない 」
その言葉を聞いた竜馬は途端に罪悪感に襲われた・・・彼は本気だ、竜馬が断れば会社を潰すと言ってるのだ
「すべてを譲りたいと思う人物は・・・俺にはお前しかいない 」
竜馬は真剣に考え込んだ・・・ジャスティンの骨張った手から暖かいぬくもりが伝わってくる
「ジャスティン・・・どういうつもり? 」
「お前に罪悪感を押し付けて、断れないようにするつもり」
まんまと罠にはまってしまったようだ
「も・・・もし・・・僕が「ノー」と言ったら?」
「それでも俺達の愛は変わらない、しかもこの申し出はずっと有効だ」
彼は小さく肩をすくめ、車椅子を軽く叩いた
「ご覧の通り、俺はどこへも行けないからな」
「ぼ・・・僕・・・ 」
竜馬は俯いて言った
「少し考えさせて・・・・」
竜馬はその時宗一郎の顔が浮かんだ「JBOYカンパニー」のビジネスの大半を仕切っているのは竜馬だが、財務を握っているのは宗一郎だ
「好きなだけ時間をかけるといい」
ジャスティンは優しい微笑みを浮かべた
「考えている間、浜田宗一郎を一度ここへ呼んだらどうかな?」
竜馬はジャスティンが宗一郎のことを知ってるのにも驚いた、でもすぐに納得した、彼のことだ、竜馬のことはきっと自分以上に知りつくしているに違いない
「え?い・・・いつ?」
「俺が今夜の夕食に正式に招待すると言って連れてきてくれ 」
大変なことになった!!
コメント
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ジャスティンの過去が少しずつ見えてきて、刑務所で投資を学んで財を成した話は「なるほど、そういう成り上がり方だったのか」とグッと来ました。そして会社継承の話…「罪悪感を押し付けて断れないようにするつもり」と平然と言うジャスティン、ずるいけど愛を感じます。まんまと罠にかかった竜馬と宗一郎を巻き込む展開、続きが気になりすぎます!