テラーノベル
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レンコン 煮付け
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人生でこれほど肝を冷やした瞬間なんてあっただろうか・・・宗一郎はそう思った
突然、竜馬に「会わせたい人がいる」と言って、この屋敷に連れてこられたのはつい1時間ほど前の事・・・・
信じられない!今実際に目の前にいるのは宗一郎が憧れていた「元犯罪者の黄金投資家ジャスティン・アレン」だ!彼の事ならなんでも知っている!宗一郎は彼の事が書かれているビジネス記事は全部読んでいた、そして来月発売のタイム誌付録の「ジャスティン・アレンの黄金の言葉集」も予約していた
今その彼は、宗一郎の目の前でクリーム色のシャツにブラックのスラックス・・・そして車いすに乗っている・・・体調が悪いのかな?そんなことは記事では何も書かれていなかったぞ・・・
それでも彼は痩せているが瞳の輝きは鋭く、一発で相手を下半身不随にするパンチを打てそうな雰囲気を醸し出している
「こ・・・こんな格好ですいません・・・」
竜馬の野郎・・・言ってくれればスーツをちゃんと着てきたのに・・・アイツはここに来るまで彼の名前を言わなかった、宗一郎は作業服の皺を両手で伸ばしながら、ジャスティンに申し訳なさそうに言った、頬が熱い・・・
「構わないよ、俺は八年間オレンジのジャンプスーツで、紐なしの運動靴を履かされていたんだ」
やっぱり・・・あの前科持ち投資家のジャスティン・アレンだ!
宗一郎はどういうことだ?と目を見開いて竜馬を見た、竜馬は申し訳なさそうに目をそらした
コイツ・・・あとで覚えとけよ!すべて吐かせてやる
彼は刑務所で投資を学び、後に出所後、タイムズ誌に載るほどの億万長者になった、宗一郎は自分が震えているのを感じた
「あ・・・あの・・・俺・・・タイムズ誌のコラムを読みました、ええ・・・あなたが掲載されている記事全部!本当に・・・すごい人だなって尊敬していて・・・その・・・」
ジャスティンがお世辞なんか聞き飽きたとばかりに、退屈そうに言った
「君も8年もあそこにいれば、投資の一つ二つぐらいは勉強できるよ、幸い俺が入った収容所の図書館は、投資の本が充実していたからね、一日一時間ならインターネットも使えた、最後は刑務官が値上がりがする株を俺に聞いてきた」
ごく軽い口調で冗談めかした言い方だったが、竜馬にはそこにジャスティンが辛かった時期を思い出している苦悩を感じ取った
「でも一番嫌だったのは、筋肉ムキムキの体にタトゥーを入れた男達二十人としかもギャングの一員と麻薬の売人ドラッグバイヤーが、ほとんどの奴らと団子になって、シャワーを浴びさせたれたらお前どうする?どんな気分になる?さらに俺と同じ独房にいたヤツはレイプ殺人の常習犯で、どのように巧妙にやるか毎晩自慢話を聞かされたんだ、あの時ほど銃が欲しいと思ったことはなかったよ、銃さえあればコイツを一発で黙らせるのに―それに――」
「ジ・・・ジャスティン・・お手柔らかに・・・」
ジャスティンが刑務所時代にトリップする前に、竜馬が彼の肩をギュっと握った、そこでジャスティンがハッと正気に戻った、宗一郎がおずおずと聞いた
「・・・少なくともシャワー用サンダルは貰えたんですかね?」
シーン・・・と部屋は静まり返った、宗一郎の質問にジャスティンは睨みで返した、宗一郎は降参とばかりに両手を挙げた
「OK!冗談です!すいませんでした!もう余計な口をはさみません、続けましょう!」
。 .:・.。. .。.:・
「あなたのインタビューやコラムは、すべて読ませていただきました 」
宗一郎は尊敬の目でジャスティンに言った
「あれの半分はうちの秘書が書いたものだけどね」
シーン・・・・とまた部屋は静まり返った、なんだか意地が悪いぞ ・・・嫌なヤツなのかな?勇気ある宗一郎の不思議な質問はさらに続いた
「一つ・・・・聞いてもいいですか?」
「なんでも訊いてくれ、ミスター・カウンセラー 」
「その金髪は本物ですか?」
「訊きたいことはそれなのか?」
「もっと重要な質問を、今頭の中でまとめているんです 」
「生まれてこの方染めたことはない、何なら下の毛も見せようか?」
コホン・・・と仕切り直しの咳をして、ワクワクしている宗一郎が、再びジャスティンに質問する
「今回の件は、間違いなく本当なのですか? とてもじゃないけど信じられないです、ざっと車の中で「竜馬」に話を聞いたのですが・・・ 」
ジャスティンがしげしげと見つめてから、青い目が黒目に光った、無言で腕を組んで睨まれビクッと宗一郎がする
「し・・・失礼しました・・・その・・・「竜馬さん」から・・・・」
「いつも通り竜馬でいいよ・・・ 宗一郎・・・ 」
竜馬が口を挟んだおかげで、さらにジャスティンに睨まれる、(言えるわけねーだろうよ!竜馬のタコ! 見ろよ!今俺はライオンにかみ殺される勢いで睨まれているのに! )宗一郎は用心深い面持ちで、ジャスティンを見つめた
「すべてのあなたの権限を彼に譲ると?」
ジャスティンはフンッと鼻息を漏らした
「やっと本題に入れるな 」
。 .:・.。. .。.:・
二時間後、ジャスティンは宗一郎に、自分の部下の副社長の「ロレックス・シャンペーン」と、彼の会社の総合顧問弁護士の「ジャック・サブ・マリーナ」の名前を挙げて、明日彼らの事務所を訪問するように指示した
今にも鼻血を出す勢いで、興奮している宗一郎が言った
「あ・・・あの・・・正直に聞いていいですか?さっきから思っていたのですが、これは面接なのですか? 」
「面接じゃないよ宗一郎、決定事項だ、そして今日、俺はここにいて、俺が出所した時と同じチャンスを君に与えようとしている、もしかしたら君にとってはチャンスといえないかもしれない ・・・だが個人的な経験から言えば、人生試してみないことには何もわからないものだ 」
「ふ・・・二人はどこで知り合ったんですか?」
「昨日かな?本屋で1冊しかない経済学の本を取り合ったんだ 」
「嘘だよ!本気にするなよ宗一郎! 」
竜馬があわてて言った
「「メガロス・アレン・エンタープライティス」 経営の話は? 」
宗一郎が眉をしかめた、すべての話が冗談だったといわれたら、すぐにでも暴れだす勢いだ
「それは本気だよ・・・ あとでちゃんと話すよ・・・」
。 .:・.。. .。.:・
「ジャスティン・・・あんまり宗一郎をいじめないでよ・・・ 」
宗一郎が帰ってから二時間後、竜馬が洗い立てのジャスティンの髪をドライヤーで乾かしながら言った
「なんの話か見当もつかないな、 俺はただ、アイツに金玉があるのかどうか試しているだけだ 」
ここでいう「金玉」は マフィア語で言う「度胸」という意味だが 竜馬は笑った
「そういうことなら、宗一郎アイツはスイカ並みの玉があると思うよ、それに野心もね 」
綺麗に乾いたジャスティンの髪をとかして竜馬は言った
。 .:・.。. .。.:・
ジャスティンの家から帰る途中、事務所の明かりがまだついているのを竜馬は確認した、宗一郎がまだいるのだ・・・やっぱりいきなりジャスティンに会わせてよかったのかどうか竜馬は悩んでいた、そして今日のジャスティンの態度もあまりよくなかった・・・竜馬は宗一郎のいる事務所に入っていった
「宗一郎・・・・あの・・・・さっきはずっと黙っててごめんね・・・でも・・・僕・・・・ 」
宗一郎はPCの画面に張り付いたまま、竜馬に言った
「明日からこの会社の下請けのスケージュールを大幅に書き換えたよ、俺が顧問弁護士の所でレクチャーを受けている時間帯は、マミーが来てくれることになった」
「う・・・うん・・・ 」
ジャスティンのことは自分のプライベートの事だからと・・・今まで彼には話さなかったし、自分も宗一郎のプライベートの人間関係を知ろうとは思っていなかったので、宗一郎に隠れてコソコソとジャスティンに取り入っていたと思われるのも嫌だった
竜馬は、一から全部宗一郎に話そうと思っていた、それはもう18年前にピッドブルに襲われた時から・・・・
「決して君に隠そうと思ったことはなくて、その・・・僕もずっと彼とは音信不通で・・・そもそも最初に出会ったのは、君と出会ったよりずっと前で・・僕は話さなかったのは―― 」
宗一郎がくるりと椅子を向けて竜馬の方を見た
「なにをごちゃごちゃ言ってるんだ!明日から忙しくなるぞ!竜馬!ジャスティンは自分に万一のことがあった場合、お前を代表として正式に任命している、つまり私的な面でも、ビジネスの面でも、お前が全責任を負うということだ、あの天下の「メガロス・アレン・エンタープライティス」―会社の経営も含めて!! 」
「う・・・うん・・・ 」
「いいか!竜馬!俺はお前の力になりたい!お前も知っている通りジャスティンは帝国を築いた、今、誰かがそれを動かしていかなければならない、でないと色々な事を言う人が出てくるだろう、実はここ数週間・・・ずっと追ってたんだがアイツの会社の株価が下がっているのが、どうしてか不思議に思ってたんだ」
竜馬はうなずいたと同時に驚いた、宗一郎が言わんとしていることはハッキリと竜馬にも理解できた、現にジャスティンの会社の株価は落ちている
実際にジャスティンがそれに心を痛めて、電話で怒鳴っているのを目のあたりにしている、宗一郎は竜馬に言った
「俺は誰にもジャスティンを、病でボケ切った無能呼ばわりはさせなくない 」
「宗一郎・・・」
竜馬は宗一郎がこれほどジャスティンをリスペクトしてくれているのにも感動した
「ほら!今ジャスティンからメールで、会社の状況報告書が送られてきた 」
宗一郎が瞳を輝かせて言った
「俺なら出来る!この状況をなんとかしてやれる!ジャスティンはそれを知っているんだ!何もかもお見通しなんだよっっ!」
「そ・・・それじゃぁ・・・ 」
「ああ!引き受けよう竜馬!大丈夫だ、二人ならやれる!俺は明日顧問弁護士達に会って来る、さっきジャスティンの家から帰ってきてから、今のこの現状打開策案を俺は3パターン作った、そしてジャスティンにそれを送ったんだ、そしたらたった今!見ろよ!」
宗一郎が携帯の画面を見せた、二分ほど前にジャスティンから返信メールが来ていた
―明日午前10時、本社4階第二会議室で行われる重役会議に出席せよ、ぶちかましてこい ―
宗一郎は竜馬の肩を両手でガシッと握って言った
「とりあえず逆立ちさせてくれ !!」
コメント
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第200話、一気に読んじゃいました!宗一郎とジャスティンの初対面の空気感、めちゃくちゃ伝わってきました。特に「シャワー用サンダル」の質問から始まる絶妙な空気の読み合いと、最後の「ぶちかましてこい」からの逆立ち宣言、最高にテンション上がりました!竜馬と宗一郎の信頼関係も良いですね。次が待ち遠しいです!