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誰も知らない、高嶺の花の裏側3
第80話 〚消灯時間、眠れない夜〛
― 澪視点 ―
消灯の合図がして、
部屋の電気が落ちた。
真っ暗、のはずなのに、
目は冴えたままだった。
(眠れない……)
今日一日、
楽しかったはずなのに。
お風呂も、ごはんも、
みんなとの時間も。
なのに、
胸の奥がざわざわして、
目を閉じても落ち着かない。
私は、
眠っているフリをした。
目を閉じて、
呼吸を整えて。
——その時だった。
毛布が、
わずかに揺れた。
(……?)
音を立てないように、
誰かが動いている気配。
心臓が、
一気に早くなる。
(やだ……)
目は閉じたまま。
でも、
分かってしまった。
真壁くんだ。
さっき、
先生に叱られていたのに。
反省なんて、
していない。
「寝てる」と
思われているのが、
はっきり分かった。
気配が、
近づく。
(来ないで……)
心の中で、
必死に叫ぶ。
その瞬間。
別の毛布が、
静かに動いた。
「……やめろ」
低くて、
抑えた声。
海翔だった。
寝ているフリを
していたんだって、
すぐ分かった。
真壁くんの動きが止まる。
一瞬の沈黙。
——それだけで、
私は救われた。
真壁くんは、
何も言わずに引いた。
たぶん、
また先生に叱られるのが
怖かっただけ。
しばらくして、
寝息が聞こえ始める。
海翔も、
えまも、
真壁くんも。
(……助かった)
でも、
安心した途端、
今度は不安が押し寄せた。
もし、
気付いてもらえなかったら。
もし、
一人だったら。
胸が苦しくなって、
じっとしていられなくなる。
私は、
静かに起き上がって——
海翔の布団に、
そっと入った。
何も言わずに。
でも、
すぐに分かった。
海翔は、
起きていた。
「……澪?」
小さな声。
私は、
何も答えられなくて、
ただ布団の中で
動かなかった。
海翔は、
それ以上何も聞かなかった。
布団の中は、
静かで、
温かかった。
怖さが、
少しずつ溶けていく。
「……もう大丈夫」
そう言われた気がして、
やっと息ができた。
そのまま、
私たちは何も話さず、
同じ布団で眠った。
守られているって、
こういうことなんだと。
初めて、
分かった夜だった。