テラーノベル
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SKINZ幼稚園には、個性豊かな7人のちびっこたちがいる。
元気いっぱいのフィン。
クールなイラン。
ツンデレで極度の甘えん坊なドビン。
ちょっぴり人見知りなジェオン。
いつもニコニコのダエル。
いたずら好きなテオ。
そして、おやつが大好きなユル。
そんな7人が過ごす幼稚園は、今日も朝から大騒ぎ!
……なのだが。
実はこの幼稚園には、みんなに知られているようで、本人だけは絶対に認めない秘密があった。
それは――
ドビンは、幼稚園でいちばんの甘えん坊だということ。
ただし、本人にそれを言うと、ものすごく怒る。
……怒るだけで、先生のそばからは離れないのだけれど。
1.『朝の登園! ドビンはまだ来ない?』
「せんせぇぇぇーーー!! おはよぉぉぉ!!」
朝8時30分。
幼稚園の玄関に、真っ赤な髪を揺らしながらフィンが飛び込んできた。
「フィンくん、おはよう! 走らないでね!」
「えへへ! せんせー、ぎゅー!!」
ぎゅむっ!!
先生に抱きついたフィンは、満足そうににこにこ。
「きょうね! ぼく、いちばんのり!?」
「そうだね、フィンくんがいちばんだよ」
「やったぁぁぁ!!」
その後ろから、白髪のイランがのんびり歩いてきた。
「……朝から元気すぎ」
「イランもぎゅーする!?」
「しない」
「えぇー!?」
イランはそう言いながら、先生の反対側にぴたりと立った。
「……おはよう」
「イランくんもおはよう!」
「……ん」
ほんの少しだけ、先生の服の裾をつまむ。
それを見て、フィンがにやにやした。
「イランもぎゅーしたいんでしょー!」
「してない」
「してるじゃーん!」
「……うるさい」
そんなやり取りをしていると、玄関の向こうから、小さな足音が聞こえてきた。
とことことこ。
黒髪の男の子、ドビンがやってきた。
腕には、お気に入りのぬいぐるみ。
表情はいつもどおりクール。
「……おはよ」
先生が笑顔で手を振った。
「ドビンくん、おはよう! おいで!」
するとドビンは、一瞬だけ先生の顔を見た。
そして。
「……べつに」
ぷいっ。
先生の横を通り過ぎようとする。
……が。
きゅっ。
先生のエプロンの裾をつかんだ。
「……?」
先生が振り返る。
「ドビンくん?」
「……なに」
「こっちに来たかったの?」
「ち、違うし! たまたまここにいただけだし!」
「そっかぁ」
先生がにこにこしながら手を差し出すと、ドビンはその手をじっと見つめた。
3秒。
5秒。
10秒。
そして、小さな声で。
「……手、つなぐだけなら」
「うん、もちろん!」
ぎゅっ。
ドビンは先生の手を握った。
その耳が、ほんのり赤くなっていることに、先生は気づかないふりをしてあげた。
……ただし。
フィンは見逃さなかった。
「ドビン、せんせーと手つないでるぅぅぅ!!」
「うるさい!!」
朝から、ドビンのツンデレが炸裂した。
2.『先生、フィンを抱っこする』
午前9時。
みんなでお絵描きをする時間。
先生がフィンを膝に乗せて、クレヨンの箱を開けていた。
「せんせー! みてみて! ぼく、せんせーのえ、かいた!」
「わあ、上手だね!」
「えへへ! だいすきだから!」
フィンは先生にぎゅーっと抱きついた。
その様子を、少し離れた席から見つめる小さな影がひとつ。
ドビンである。
ドビンは黙々と黒いクレヨンを動かしていた。
……が。
ぎゅっ。
クレヨンを握る手に、力が入る。
ちらっ。
先生を見る。
ちらっ。
フィンを見る。
ちらっ。
もう一度、先生を見る。
「……」
そして、ぼそり。
「……べつに」
隣にいたテオが顔を上げた。
「ん? 何が?」
「なんでもない」
「ドビン、絵ぜんぜん進んでないぞ?」
「進んでる!」
「真っ黒だけど?」
「これは……夜の絵!!」
「へえー!」
テオは素直に感心した。
「かっこいいじゃん!」
「……ふん」
ドビンは再び先生の方を見た。
すると、先生と目が合った。
「ドビンくん、何を描いているの?」
「……べつに」
「先生にも見せて?」
「……やだ」
「そっか。できたら見せてね!」
先生がフィンの方に向き直る。
その瞬間。
「……せんせ」
小さな声。
「ん? どうしたの?」
「……これ」
ドビンが、紙を差し出した。
そこに描かれていたのは、黒いクレヨンで描かれた、ちょっぴり不格好な人の絵。
その隣には、小さな黒い丸がふたつ。
「わあ! これ、先生?」
「……そう」
「こっちはドビンくんかな?」
「……ちがう」
「えっ、違うの?」
「……ぼくじゃない。……先生のとなりにいるだけ」
先生は思わず笑顔になった。
「そっか。先生の隣にいてくれるんだね」
「……うん」
ドビンは少しだけ先生に近づいた。
「……フィンばっかり、ずるい」
「え?」
「……なんでもない!!」
ドビンは顔を真っ赤にして、先生の膝にぽすんと座った。
「ド、ドビンくん!?」
「……ここ、空いてたから」
「ふふ、そうなの?」
「……そう」
先生が頭をなでる。
なで、なで。
ドビンの肩から、ふっと力が抜けた。
「……ん」
気持ちよさそうに目を細める。
そして、先生の服をきゅっとつかんだ。
「……もうちょっと」
「うん?」
「……なでて」
「もちろん!」
その光景を見ていたフィンが、目をきらきらさせた。
「ぼくもー!!」
「ぼくも、なでてほしい……」
ジェオンも小さな声で手を挙げる。
「ぼくも!」
ダエルがにこにこ笑う。
「……みんな、先生大好きだね」
イランがぽつり。
「……ドビンがいちばんだけど」
「イラン!!」
ドビンが勢いよく顔を上げた。
「ち、ちがうし!!」
しかし、先生の膝からは降りなかった。
3.『お昼寝の時間、ドビンの本音』
お昼ごはんを食べ終えたあと。
幼稚園には、静かなお昼寝の時間がやってきた。
みんながそれぞれのお布団に入る。
フィンは、キツネのぬいぐるみを抱いてすぐに夢の中。
ダエルもクマのぬいぐるみを抱えて、すやすや。
ユルはお昼ごはんをおかわりしたせいか、お腹をぽんぽんしながら眠っていた。
テオは寝る直前まで積み木の話をしていたが、いつの間にか寝息を立てている。
ジェオンはうさちゃんを抱きしめ、イランは静かに目を閉じていた。
そして、ドビン。
「……」
お布団の中で、目をぱっちり開けていた。
眠れない。
なぜなら。
先生が、少し離れたところにいるから。
ドビンは横を向いた。
先生を見る。
また横を向く。
もう一度、先生を見る。
「……」
むすっ。
(……べつに、先生がいなくても寝られるし)
ごろん。
(……いつも、ひとりで寝てるし)
ごろん。
(……先生なんか、いなくても……)
ちらっ。
先生が、フィンのお布団を直している。
そのあと、ジェオンの頭を優しくなでた。
ドビンの胸が、きゅっとなった。
(……ぼくのところ、来ない)
いつもなら絶対に口にしない言葉。
でも、本当は。
先生に頭をなでてほしい。
背中をとんとんしてほしい。
「おやすみ」って言ってほしい。
できれば、手も握っていてほしい。
……でも。
「……あまえるの、かっこわるい」
ドビンは布団をぎゅっと握った。
そのとき。
「ドビンくん、眠れないの?」
先生が、そっと隣に座った。
「……ねむれる」
「そっか。でも、目がぱっちりだね」
「……たまたま」
先生は微笑んで、ドビンの布団を肩までかけ直した。
「先生、ここにいるからね」
ドビンは黙った。
先生が立ち上がろうとする。
その瞬間。
きゅっ。
小さな手が、先生の指をつかんだ。
「……」
先生が振り返る。
「どうしたの?」
ドビンは顔を布団に半分隠したまま、小さくつぶやいた。
「……まだ、いて」
「うん。もう少しここにいるね」
「……ずっと?」
「ドビンくんが眠るまで、そばにいるよ」
「……ん」
先生が隣に座り直す。
そして、ドビンの背中をゆっくり、とん、とん、とん。
ドビンのまぶたが、少しずつ重くなっていく。
「……せんせ」
「なあに?」
「……あしたも、きて」
「もちろん。明日も来るよ」
「……ぜったい?」
「うん、約束」
ドビンは安心したように目を閉じた。
しばらくして。
「……せんせ」
「うん?」
「……すき」
先生の手が止まった。
でも、ドビンはもう眠りかけていて、自分が何を言ったのか覚えていないようだった。
先生は優しく微笑んだ。
「先生も、ドビンくんのこと大好きだよ」
その言葉を聞いたドビンは、眠ったまま先生の指をぎゅっと握った。
そして、ほんの少しだけ笑った。
4.『お昼寝から目覚めたドビン、記憶がないふりをする』
午後2時。
「んん……」
ドビンが目を覚ました。
目の前には、先生の顔。
「おはよう、ドビンくん。よく眠れたね」
「……ん」
ドビンはぼんやりと先生を見つめた。
そして、自分の手に気づいた。
先生の指を、しっかり握っている。
「…………」
ぱっ!!
慌てて手を離した。
「ち、ちがう!!」
先生はきょとん。
「何が?」
「こ、これは……! その……!」
「うん?」
「……寝ぼけてただけ!!」
「ふふ、そうなの?」
「そう!!」
ドビンは顔を真っ赤にして、お布団に潜り込んだ。
そこへ、ちょうど起きたフィンがやってきた。
「ドビン、なにしてるのー?」
「なんでもない!!」
「せんせーと手つないでたの!?」
「ちがう!!」
「えー! いいなぁ! ぼくもつなぐ!」
フィンは先生の手を握った。
「せんせー、ぼくとも手つないで!」
「いいよ!」
その瞬間。
布団の中から、小さな声が聞こえた。
「……ぼくも」
先生が振り返る。
「ん?」
「……なんでもない」
「ドビンくんも手をつなぎたいの?」
「……ちがう」
「そっかぁ」
先生がフィンと手をつないだままでいると。
「…………」
布団が、もぞもぞ。
もぞもぞもぞ。
そして。
きゅっ。
ドビンの手が、先生の反対側の手を握った。
「……これは、べつ」
先生は笑いをこらえながら、両手でフィンとドビンの手を握った。
「はいはい。ふたりとも、仲良しだね」
「ぼく、なかよしー!!」
フィンは大喜び。
ドビンは真っ赤な顔で、ぼそっと言った。
「……フィン、うるさい」
でも。
先生の手は、絶対に離さなかった。
5.『お迎えの時間、帰りたくないのは誰?』
夕方。
お迎えの時間がやってきた。
フィンは先生に何度も手を振る。
「せんせー! またあしたね!! だいすきー!!」
「はい、また明日ね!」
ユルは最後までおやつのことを聞いていた。
「……せんせ。あしたも、おやつある?」
「あるよ」
「……やった」
ダエルは先生にぎゅっと抱きつき、ジェオンは小さく手を振った。
テオは明日の積み木の計画を話し続け、イランは「……また明日」と静かに帰っていった。
そして最後。
ドビンだけが、玄関で立ち止まっていた。
「ドビンくん、お迎えが来たよ?」
「……ん」
でも、動かない。
先生がしゃがんで目線を合わせる。
「どうしたの?」
「……なんでもない」
「おうちに帰りたくないの?」
「……べつに」
ドビンは先生のエプロンをつまんだ。
きゅっ。
「……あしたも、いる?」
「先生? うん、いるよ」
「……ぼくが来ても?」
「もちろん!」
「……ほかの子ばっかり、ぎゅーしない?」
先生は少し驚いて、それから優しく笑った。
「みんなに優しくするけど、ドビンくんのことも、ちゃんと大好きだよ」
「…………」
ドビンは俯いた。
それから、ほんの少しだけ両手を広げた。
「……じゃあ」
「うん?」
「……さいごに、ぎゅー」
先生はそっとドビンを抱きしめた。
ぎゅっ。
ドビンは先生の肩に顔を埋めた。
「……ん」
小さな手が、先生の服をぎゅっと握る。
「……あと、ちょっと」
「うん、いいよ」
「……もうちょっと」
「うん」
「……あと、100秒」
「100秒ね」
そのまま100秒。
……さらに100秒。
「ドビンくーん、お迎えの人、待ってるよー!」
フィンが帰り際に顔をのぞかせた。
「……フィン、帰れ!!」
「えへへ! ドビン、せんせーだいすきだもんね!」
「ちがうっっ!!」
ドビンは先生の肩から顔を上げた。
真っ赤な顔。
涙目になりそうな目。
そして、ぷくっと膨らんだほっぺ。
「……もう、あしたから、ぎゅーしない」
先生は首をかしげた。
「そうなの?」
「……しない」
「そっか。じゃあ明日は、ドビンくんから来てくれるのを待ってるね」
「…………」
ドビンは黙った。
そして、先生の手を握り直した。
「……あしたは」
「うん?」
「……ぼくから、する」
先生の顔がぱあっと明るくなった。
「本当? 楽しみにしてるね!」
「……でも、みんなにはないしょ」
「ふふ、わかった」
ドビンは少し安心したように笑った。
そして、お迎えの人のところへ歩き出す。
玄関を出る直前。
くるっと振り返って、ドビンは小さく叫んだ。
「……せんせ!!」
「なあに?」
「……あしたも、ぜったい、まってて!!」
「うん! 約束!」
ドビンは満足そうにうなずいた。
それから、誰にも聞こえないくらいの声で。
「……だいすき」
そうつぶやいて、帰っていった。
『おまけ♡ 翌朝のドビン』
翌朝。
先生が幼稚園の玄関で待っていると、ドビンがやってきた。
いつもどおりのクールな顔。
「……おはよ」
「ドビンくん、おはよう!」
先生が手を差し出す。
ドビンはその手を見つめた。
昨日の約束。
自分から、ぎゅーする。
「…………」
「……」
「…………」
そして。
とことことこ。
ぎゅむっ。
ドビンは先生に抱きついた。
先生は驚いたあと、嬉しそうに抱きしめ返した。
「わあ! ドビンくんから来てくれた!」
「……うるさい」
「嬉しいなぁ!」
「……べつに」
ドビンは先生の服に顔を埋めた。
「……ちょっとだけだから」
「うん、ちょっとだけね」
「……あと、せんせ」
「なあに?」
「……きょうも、いっぱい、なでて」
先生はドビンの頭を優しくなでた。
なで、なで。
ドビンは幸せそうに目を細める。
そこへフィンがやってきた。
「うわぁぁぁ!! ドビンがせんせーにぎゅーしてるぅぅぅ!!」
「フィン!! 見るなぁぁぁ!!」
ドビンは真っ赤になって叫んだ。
けれど、先生から離れようとはしなかった。
むしろ。
ぎゅうううっ。
さっきより、強く抱きついた。
先生は笑った。
フィンも笑った。
イランは呆れたようにため息をついた。
「……ほんと、素直じゃない」
「……イランも、ぎゅーしてほしいんだろ!!」
「……別に」
「うそだぁー!!」
今日もSKINZ幼稚園は、にぎやかだ。
そしてドビンは、今日もまた。
「……べつに、甘えん坊じゃないし」
そう言いながら、先生のお膝をちゃっかり確保するのだった。
――第1話・おしまい♡
コメント
1件
ああ、もう!ドビンくんのツンデレが炸裂してて、心臓がきゅんきゅんしました…! 「べつに」って言いながら先生の裾をぎゅっと掴んだり、寝言で「すき」って言っちゃったり、最後に自分からぎゅーしにいくところとか、もう全部可愛くてにやにやが止まりませんでした。 7人それぞれの個性も鮮やかで、フィンの元気さやイランのクールな優しさとの対比がドビンくんの甘えん坊な魅力をより引き立ててるなあと。読んでて思わず「はい、先生はドビンくんのことめちゃくちゃ大好きだよ!!」って画面にツッコミ入れてました(笑) 続きが本当に楽しみです!💕