「…ちゃん、りょうちゃん!」
…誰かが僕を揺すってる。なんだろ…。
「んあ?」
あれ、僕、寝てた?
「もーすぐ寝ちゃうんだから。」
目を開けたら、目の前に腰に手を当てたもときが立ってた。
起こして、くれたのかな?
「ありがと、もとき。」
ソファからのそのそ起き上がる。
なんだろ、最近眠くて眠くて。
僕のそばで丸くなってたフェルも起き上がる。
「おはよ、なんでこんなに眠いんだろ。」
『変わり時なんであろう。季節も、運命も。』
「え、運命も?」
『何かが変わる時には、力がいる。その力を蓄えているんであろうよ。』
「そっか、充電期間みたいなモノか。」
伸びを一つして、隣に座ったフェルを撫でる。
「りょうちゃん、誰と喋ってるの?」
ヤバっ、やっちゃった。
「独り言!」
「ふーん。」
疑わしい目でこっちを見てる、もときとわかいの視線が痛い。
「いつものだ。」
「いつもだよね。」
まぁ、たまにやらかしてますもんね。
「気のせい!さ、始めようよ。」
今日の練習。
『当分ここにいるな。我は出かけて来る。』
視界の端で、フェルが身体を震わせてから消えて行く。
いってらっしゃい。
声には出さずに、送り出す。
僕がやたらと眠くなるのと同じくらいに、フェルは出かけるようになった。
二人といると、特に。
「で、涼ちゃんは何の夢を見てたの。」
ソファの上でグダグダしてたら、わかいにそんな事を聞かれた。
手にはもうギターを持ってる。気が早い。
「えー、なんで?」
「やたらなんか寝言言ってたから。気になるじゃないですか!寝言の第一人者としては!」
そんな第一人者、やだ。
「若井、それ自慢することじゃないと思う。」
「もときの言う通りだと思う。」
でも、何言ってたんだろ、記憶にないなぁ。
「夢の記憶もないなぁ。なんだったんだろ。」
懐かしい、夢だった気がする。
もときが手を差し出してきてくれたから、ぎゅっと握って立ち上がる。
「さ、始めますわよ。おりょうさん。」
「そうですわね。もときさん。」
僕らのやり取りに、わかいが噴き出したのは言うまでもない。
フェルは、練習が終わるまで帰って来なかった。
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