意外なことにどぬくさん提案のカップルのふりして京都観光作戦は功を奏していた。チラチラと我々を、と言うかどぬくさんを見る輩はどこにでもいたけど固く繋いだ手を見ると皆諦めた様に視線を外していった。恋人繋ぎすごーい。稀に俺たち2人の写真を所望される女性たちはいたけど、やんわりと断るとすんなり諦めてくれる。どぬちゃん、カップル作戦心の中でひっそり馬鹿にしてごめん。
海外の人とのやり取りも別に苦痛では無かったし勉強になったけど、やっぱりゆっくり観光できるのは嬉しい。俺の今回の旅行大本命であった千手観音坐像は本当に大きく力強くて美しく圧巻だった。感動してつらつらと蘊蓄を語る俺をにこにこしながら見るどぬくさんも可愛かったし。
『…ん?可愛かった??』
「もふくんもふくん、このお守り良くない?お揃いで買おうよ」
「え、ああ、うん」
「もー、ボケーっとしてたでしょ。さっきの像にまだ心奪われてんじゃないの?」
「いや、……あー、そうかも。お守りどれ?」
「これー、もふくんと俺のカラーあるよ」
どぬくさんの声で意識を呼び戻されて今さっきまで考えていた事を忘れてしまったけど、それで良かった気もする。にこにこと笑いながら彼が見せてくれたそれぞれのカラーのお守りには開運招福の文字と花が艶やかな糸で刺繍されてあり他のお守りと違って豪奢で一際目を引いた。どぬくさんの手からそれを取り巫女さんへこれくださいと声をかけ会計を済ませてからお守りを一つ渡すととどぬくさんが焦ったように言った。
「ちが、俺もふくんに奢って欲しくて言ったんじゃなくて、」
「分かってるって、今は彼氏なんだからこれぐらいはさせてくださーい」
「………その理屈でいくと俺も今はもふくんの彼氏なんですけど………」
「…そっか、そりゃそうだ」
何なんだよもー、と言いながらも俺の彼氏さん(仮)は渡されたお守りを袋からとり出してしばらく見つめてからえへへ、と嬉しそうに笑った。
コメント
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もふくん(やっと)気付き始めちゃった(*´꒳`*)♡ えげつないセクハラナンパからあんなにかっこよく助けてくれたのに、無自覚だったなんて、罪すぎて、どぬちゃんも大変ですね(๑˃̵ᴗ˂̵)