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涼ちゃんが去っていった後も、若井は楽屋の前でしばらく立ち尽くしていた。
胸の奥がざわざわして落ち着かない。
あんな表情の涼ちゃん、今まで一度も見たことがない。
「……元貴に言わないと」
若井は走るようにスタジオの別室へ向かった。
元貴はスタッフと次の撮影の打ち合わせをしていて、
若井の顔を見るなり「どしたん?」と目を丸くした。
若井は呼吸を整える間もなく切り出した。
「元貴、ちょっと来て。涼ちゃんのこと。」
元貴の表情が一瞬で真剣になる。
2人で廊下に出たところで、若井は低い声で続けた。
「さっき、楽屋で……涼ちゃんが出ていったんだけど、なんか変だったんだよ。」
「変って?」
「目が全然笑ってなくて……“大丈夫”って言ったのに、めっちゃ冷たかった。
しかも、口から血出てたし。」
元貴は一瞬固まった。
「……え?涼ちゃんが?」
若井はうなずく。
「うん。俺、初めてだよ。あんな、心閉じてるみたいな顔…。」
元貴はすぐに動こうとしたが、若井がユニフォームの袖をつかんだ。
「たぶん、なんかされた。
誰かに――スタッフか知らんけど、絶対なんかあった。」
元貴は奥歯を噛みしめて、怒ったような、焦ったような顔になる。
「………探そう。」
2人は同時に歩き出した。