テラーノベル
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※空白シリーズプロトタイプの続き
“設定”
・すまない先生・・・ヤマタノオロチを倒したが、その代償として、不老不死の呪いを受ける。生徒を、何度も拾って看取ってを繰り返している。見た目は青年の姿のまま
・ブラック(幼少)・・・虐待といじめを受けていた。それをすまない先生に助けられた。いつも見る夢がある。
・仮面さん・・・ブラックの夢に毎回出てくる謎の人物。黒いローブに、白い仮面をつけている謎の人。けど、ブラックは何故か怖いとも思わないし、懐かしいと感じている
✵✵✵✵✵
夢を見た。
すまない先生が、もう動かない彼の手を握って、泣いていた。すまない先生が握っている手は、骨と皮ばかりで、顔は老人のように皺がある。
(・・・誰なんだろ?)
ブラックは手を伸ばしても、その手が届くことは無かった。
ふと、隣に誰かが立っていた。幾分か自分より背が高く、顔は見えなかった。
いや、顔というより、白い仮面をつけていたその男性は、ブラックに気づくと、仮面越しの彼の目が優しく微笑む。そして、ゆっくりブラックの頭を撫でた。
『────────』
そう仮面の人は呟く。だが、なんて言っているのか、全く分からなかった。
✵✵✵✵✵
「・・・ぅえ?」
目が覚めると、知ってる天井が広がっていた。ブラックは体を起こし、辺りを見渡す。
辺りには、ミスターブルーやレッド、ミスター銀さん、マネー、バナナ、そして赤ちゃんが眠っていた。
「・・・ゆめ?」
ふと、自分の頬が濡れていることに気づく。
(・・・泣いてる・・・?)
何故か、ここへ来て、夢を見ることが増えた。しかも、その夢は決まってあの仮面の人と、すまない先生が出てくる夢。それだけのはずなのに、どうして涙が出るんだろう。
と、ブラックが考えていると、ふと、気づく。
「すまないせんせい?」
この学校。“すまないスクール”の先生。すまない先生が居ないことに気づく。
✵✵✵✵✵
すまない先生を探しに、すまないスクールをうろつく。
このすまないスクールはすまない先生が買った土地に立てた建物で、すまない先生が言うには、
『思い出のある建物』
と、答えた。
その建物の廊下を歩いていると、屋上に目当ての人がいた。
ブラックは声をかけようとした、が、
「・・・っ」
思わず踏みとどまった。
すまないの姿が違うのだ。
首には少し汚れてしまった鍵と錠のペンダント。頭には白く、足元まであるような長い紐をハチマキのようにまき、指先には金色のシンプルな指輪を数個、そして、黄緑色のマントを纏い、小さな熊のキーホルダーを腰のベルトに括り付けた。そして、顔は空の瞳ごと覆い隠すような白い仮面。
夢で見た彼と同じ仮面をつけていた。
すると、すまないはどこからか剣を取り出し、それを持ち、舞う。
月夜に照らされ、辺りはひかりが少ない為、その剣に月明かりが反射している光と、月明かりがその場を照らす。
ゆっくり、ゆっくり、剣を振り、舞う。
空気が、目線が、何もかもを忘れされるほど、美しい舞だ。
ブラックはただそれを見ていると、
ズリッ
「うわっ!?」
「!!」
すまない先生が自分に巻いているハチマキを踏んづけ、ズデンッと滑る。
「せんせい!!」
ブラックは慌ててすまない先生に駆け寄った。
「いたたた・・・」
「だ、大丈夫?」
「あれ?ブラック?見てた?」
そうすまない先生は仮面を外す。仮面からは空の色がキラリと見えた。ブラックはこくりと頷く。
「あはは。見られちゃったかぁ」
と、すまない先生は苦笑しながら、立ち上がった。近づいてよく見て気づいた。すまない先生が身につけている鍵と錠のペンダントも、白いハチマキも、金の指輪も、緑のマントも、小さな熊のキーホルダーも、手に持っている白い仮面も、大切にされているが、所々がほつれてたり、綺麗にしてももう取れない汚れも付いていた。
「・・・すまない先生、それって?」
そう聞くと、すまない先生は少し悲しげに微笑む。
たまに、すまない先生は悲しげに微笑むことがある。理由はよくはぐらかされる。すると、
「・・・昔の僕の生徒の物だよ」
と、言葉が帰ってきた。ブラックは思わず顔を上げた。すまない先生の瞳は悲しげで、月が鏡のように映り込んでいた。
「・・・生徒?」
「・・・うん、昔の僕の生徒・・・もう、随分昔のことだけどね」
そうすまない先生は笑う。その笑みは、“美しい”と思ったし、“痛々しい”とも思った。すると、
「あげる」
「え」
「僕が持ってるより、ブラックが持ってる方がいいしね」
と、ブラックにその白い仮面を手渡す。それを、ブラックは恐る恐る手にした。
──驚くほど手に馴染む。いや、この仮面、どうしてこんなに懐かしいんだろう。
すると、すまない先生はブラックの頭を撫でた。
「おやすみ、ブラック」
そう優しく笑いかけるすまない先生に、ブラックは無言で頷いた。
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