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終焉の館
遠く離れた山奥に、「終焉の館」と呼ばれる古びた屋敷がありました。この館には、かつて裕福な貴族が住んでいましたが、ある日を境に一家全員が忽然と姿を消し、それ以来誰も住むことはありませんでした。地元の人々は、その館に近づくことを避け、忌まわしい噂だけが語り継がれていました。
ある日、都市から来た若い歴史学者のケンジは、その館にまつわる謎を解明しようと訪れました。彼はこの館に隠された秘密を探り出すことで、自分の名を歴史に刻もうと考えていたのです。
館に足を踏み入れたケンジは、すぐに異様な雰囲気を感じました。空気は重く、どこからともなく冷たい風が吹き抜け、彼の背筋を凍らせました。しかし、彼の好奇心は恐怖を上回り、調査を続けることにしました。
館の中には古い家具や絵画がそのまま残されており、時間が止まったかのようでした。ケンジは一室ずつ丁寧に調べていきましたが、何も異常は見つかりませんでした。しかし、夜になると状況は一変しました。
深夜、ケンジは不気味な囁き声で目を覚ましました。その声は彼の名を呼び続け、彼を館の地下へと誘いました。半ば夢遊病者のように歩き出したケンジは、自分でも止められない衝動に駆られ、地下室への階段を下りていきました。
地下室には巨大な鏡があり、その前には古びた祭壇が設置されていました。鏡の中には、この世のものとは思えない異形の存在が映し出されており、その目はケンジをじっと見つめていました。恐怖で動けなくなったケンジは、その存在に飲み込まれるように鏡へと引き寄せられていきました。
翌朝、地元警察がケンジの行方不明報告を受けて館を訪れました。しかし、彼らが見つけたものは空っぽの館と、不気味なほど静まり返った空間だけでした。ケンジの姿も痕跡もどこにもなく、ただ一つ変わっていたのは鏡に新たな顔が映っていることでした。それは恐怖に歪んだケンジ自身の顔でした。
その後も幾人かの冒険者や研究者が「終焉の館」を訪れましたが、皆同じ運命を辿りました。彼らもまた鏡に囚われ、その存在自体が消えてしまうのでした。
やがて、「終焉の館」は完全に封印され、人々から忘れ去られることになりました。しかし、その鏡には今でも無数の魂が閉じ込められており、救われることなく永遠にさまよい続けています。