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3
放課後の教室。
数学の小テストが返却され、
クラスメイトたちはそれぞれ結果に一喜一憂していた。
「ひなちゃん、また高得点じゃん!」
桔梗ちゃんが机に身を乗り出して笑う。
「えへへ……桔梗ちゃんに教えてもらったところが出たから」
「それはひなちゃんが頑張ったからだよ!」
そんな二人の会話に、
少し離れた席から軽井沢が口を挟んだ。
「ほんと、天白さんって努力家だよね」
以前なら「天白さん」と呼ばれるたびに少し緊張していたひなも、
今では軽井沢さんの気さくな話し方に自然と笑えるようになっていた。
その日の放課後。
軽井沢さんに誘われて、
ひなは二人で けやきモール を歩いていた。
「桔梗ちゃんと話すのも楽しいけど、今日は天白さんと二人で話したかったんだ」
その言葉に、ひなの胸が温かくなる。
最初はクラスの中心にいる華やかな存在だと思っていた軽井沢さん。
けれど実際には、気遣いができて、仲間思いで、とてもまっすぐな女の子だった。
カフェで向かい合って座ると、
軽井沢はストローをくるくる回しながら言った。
「天白さんってさ、初めて会った時からなんか放っておけなかった」
「私が?」
「うん。すごく可愛いのに、ちょっと不安そうで」
ひなは思わず目を伏せる。
「……実は、人の視線ってまだ少し苦手で」
「知ってる」
軽井沢は迷いなく答えた。
「でも、それでもちゃんと頑張ってるところ、ほんと尊敬してる」
その言葉に、
ひなの目にじんわりと涙が滲んだ。
「軽井沢さん….」
軽井沢さんは優しく微笑む。
「ねえ、ひな」
「うん?」
「もう“軽井沢さん”ってやめない?」
ひなの心臓が大きく跳ねた。
「クラスメイトっていうより、もっと仲良くなりたい」
軽井沢の瞳は真剣だった。
「ひなは、あたしにとって大切な友達だから」
そのまっすぐな言葉に、
ひなの胸が熱くなる。
中学時代、人との距離に悩み、
自分の居場所を見失ったこともあった。
でも今は違う。
自分を必要としてくれる人がいる。
ひなは小さく息を吸い、
少し照れながら口を開いた。
「……恵ちゃん」
一瞬の沈黙。
そして次の瞬間――
「っっもう、可愛すぎる!!」
恵は立ち上がり、そのままあたしをぎゅっと抱きしめた。
「ずっとそう呼んでほしかったんだから!」
「えへへ……恵ちゃん」
もう一度呼ぶと、
恵の笑顔はさらに輝いた。
帰り道。
二人は手を繋ぎながら学生寮へ戻った。
「今度、服見に行こうよ!」
「うん! 恋バナもしたいな」
「もちろん! 綾小路のこと、いっぱい聞かせてもらうからね!」
その言葉に、ひなの頬は真っ赤になった。
けれど、不思議と恥ずかしさよりも嬉しさの方が大きかった。
友情には、恋とは違う温かさがある。
名前で呼び合うだけで、
こんなにも距離が縮まる。
「軽井沢さん」から「恵ちゃん」へ。
その小さな変化は、
ひなの世界をまたひとつ優しく広げてくれたのだった。
コメント
1件
いや~このエピソード良すぎたわ…!「軽井沢さん」から「恵ちゃん」になる瞬間のドキドキ感がたまらんかった。軽井沢があそこまで真剣に「友達になりたい」って言ってくれるの、ひなちゃんの努力がちゃんと伝わってる証拠だよね。抱きしめるシーンはマジで胸熱だった🔥 呼び方ひとつでこんなに距離が縮まるって素敵だな~!